細菌の王
投稿遅れました。すみません。
ほとんど説明回になってしまいましたが、必要な設定なので書きました。
今回で、べリアルVSデルミアは終わるつもりでしたが、もう1話お付き合いください。
Gaaaaaaaaa―――
耳が割れそうな程の雄叫びを上げながら、迫る毒竜を華麗に回避しながら、べリアルは、デルミアへの攻撃手段を考えていた。
(私が得意とする空間系能力は転移以外は効果がないようだね―――)
べリアルの攻撃手段は、宝具以外は空間系の魔術のみである。
その攻撃の原理は、音と接触である。
前者の音は、指を鳴らす、手を叩く、など音をトリガーに発動する魔術である。対象の存在する特定の空間を強制的に膨張させ、崩壊させる。その結果、指定した空間にあるものは破裂という結果が発生し、爆発という現象が発生するのだ。ただし、効果範囲は狭く、空間としては、30cmの正方形程のサイズしか指定出来ない。おまけに、Aランククラスのような魔力の高いものには魔力抵抗の関係で使えないし、感知される事が多い為、魔力抵抗力の低いものしか使えないのだ。
これが指を鳴らしたり、手を叩くだけで敵の頭部を爆散させる能力の正体である。
そして後者は、対象に触れ、直接空間に干渉して操作することで魔力抵抗力を無視して破壊可能で、相手の強さに関係なく効果範囲も込めた魔力により変わるため、その気になれば地図を書き換える程の攻撃も可能である。ただし、あくまで対象に触れなければ発動はしないため、地形を変形させるほど威力は高くても、それは対象に接触した時の波状攻撃と扱いになる。
現に帝都で戦った元Aランク冒険者のデベルやオルメナは、この方法で殺している。あれは、力で潰しているわけではなく、接触による頭部が存在する空間を破壊しているため、実際は軽く触れているだけである。
(セルジアもそうだが、同化体には本当に厄介だねぇ・・・)
同化体とは、一つの魔術を数十年から数百年単位で限界まで使い続けることにより極希に肉体が魔術と融合し、魔術そのものと化した人間を含む生物の総称である。あらゆる魔術及び、物理攻撃を無効化し、無詠唱で、大陸を滅ぼせる程の力をノーリスクで使えるのだ。分かりやすく言うとワン○ースのロ○ア能力者みたいなものである。
その為、べリアルがいくら接触による大規模空間破壊を行っても、空間内の物質の全てを破壊はできても、消失させる事は出来ないため、僅か少しでも身体の一部が残ってしまうと、たちまち再生するため、数秒の足止めする程度の効果しか無いのである。
それほど力を個人で有していることから、同化体は〝準魔王〟もしくは〝推定魔王〟と呼ばれ、魔王の次に強い存在として、世界中からその同行を監視されている。
そして、同化体化は魔王に至る為の最低条件とも言われている。それは現にセルジアを含む全ての魔王が同化体であるからだ。
Gaaaaaaaaa―――
べリアルは雄叫びを上げながら迫りくる無数の毒竜を魔力を込めて、軽く触れるとドゴォォォッッッと大地を揺らすような轟音と共に迫っていた無数の毒竜が吹き飛びその射線上にいたデルミアが爆発四散して、数百メートルの巨大な縦穴が出来た。
「うーん・・・毒竜では、君を仕留めるには足りないみたいだねぇ・・・」
縦穴を毒で満たし、爆発四散した肉体を再生させながら、デルミアは渋い顔で上空のべリアルを見上げる。
「心外だねぇ。逆に私をこの程度で殺せると思われていたとは、舐められたものだ。」
が、その声は、上ではなくデルミアの後ろから、聞こえた。
べリアルは、先程よりも更に魔力を込めた手が後頭部に迫る。
しかし、今度はデルミアは見向きもしなかった。
「そっか~。でも―――」
瞬間、何かをとてつもなく大きな力で空の彼方に打ち上げられた。
「何―――?!」
一瞬何が起こったか分からず、勢いを殺そうと翼を展開するも、殺しきれず、砲弾の如き速度で森に激突し、土煙と砕けた樹木が宙を舞い、地面を5回バウンドし、それでも止まらず樹木を薙ぎ倒しながら地面を抉りながら滑っていき、火山の麓に激突し停止した。
「それなら、本気が出せるってもんだよぉ。」
口元を醜く歪めて、心底楽しそうな狂気的な笑みを浮かべていた。
「なるほどこれは・・・強烈だねぇ・・・」
瓦礫を吹き飛ばし、体を起こしたべリアルは、仮面の口元の流れた血を手の甲で拭いながら、自分を吹き飛ばしたものを遠目で確認した。
それは、空にそびえ立つ黒く巨大な塔だった。
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「まずい!!デルミア様がアレをする気だ。今すぐここから逃げるぞ!!」
ガルドは遠視魔術で、黒い塔を確認すると顔面蒼白になり、仲間に逃げるように促す。
「えっ、ちょっ、なんで逃げるんですか~?」
「そうだぜ、俺らはデルミア様の言い付け通り、10km以上離れてんだぜ。逃る必要ないだろ。」
リーンリットとグリッドは疑問を口にした。
「お前らはまだ、デルミア様に仕えて日が浅い知らないのも無理はない。デルミア様がアレを使ったことは、今まで2度しかないからな。」
「ガルド・・・やはりお前さんもアレだと思うか?」
白髪に長い髭を生やした、老人のグラレスも眉間に皺を寄せガルドの意見を求めた。
「まず間違いないでしょう。あれは、王の手だ。」
「そうか・・・では、逃げよう。」
グラレスとガルドは、山に向かって走り始め、それに続き他のメンバーも移動を開始した。
「おい!!結局あれってなんなんだよ。」
理由を話さないまま逃げ始めたガルドに向かって、グリッドは激を飛ばした。
「そんなことはあとでいくらでも説明してやるから、とりあえず今は、逃げる事だけを考えろ!!」
「・・・わかったよ。」
しぶしぶガルドの指示に従い、グリッドもガルドの後を追い、走り出した。
「こりゃ、地図が変わりそうだな・・・」
ガルドは小さく呟いた。
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「これは・・・黒い塔・・・いや、これは―――」
べリアルは翼をはためかせ、空に舞い上がると、軽く5000mはある黒い塔、は下の部分がゆっくりと曲がり、巨大な五本尖塔がまるで隕石のように地面に叩きつけ、凄まじい轟音と衝撃波が地面を波のように揺らし、草原を、森を蹂躙した。
「巨大な腕か!!」
「そうだよぉ~。これが私の力ッッッ!!!」
デルミアの足元から黒い液体が沸き上がった。それは黒く巨大な頭部だった。まるで毒の沼から這い出るかのように体が現れ、もう片方の手が出現し、大地を地震の如く揺らしながら、体を支えゆっくりと立ち上がる。その姿は雲を突き抜け、太陽を遮り、瞬く間に、辺りが暗がりに包まれた。4つ赤く鋭い目を光らせ、黒い巨人は咆哮する。
「Guaaaaaaaaaaaaaaaaaa―――!!!」
その凄まじい咆哮は、空気を震わせ、ハリケーンのような暴風を生み、辺り一面大地が捲れ上がり、大地を掻き乱した。
「ハハハ。咆哮だけでこれほどとは、凄まじいね・・・」
最早原型すらないほどに撹拌された大地を見下ろしながら、乾いた笑いを浮かべて呟いたその声に余裕はなかった。
「太陽を覆い、生命を滅ぼす、最悪の毒にして細菌の王―――」
全長10000m以上はある巨人の頭の上で、大袈裟に両手を広げ、べリアルを見下ろしながら、その名を叫ぶ。
「黒死の王ッッッ!!!」
「Guaaaaaaaaaaaaaaaaaa―――!!!」
黒き巨人、黒死の王はべリアルを見据えて、再び咆哮した。
「さぁ。私の全身全霊を持って、君を殺そうッッッ!!!」
「参ったね・・・これは、少々不味いな。」
べリアルは今、この世界に来てセルジア戦以降二度目の敗北の予感がしていた。
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