救出作戦
「んっ・・・ここは・・・」
目を開けるとそこは前にも見た白い天井だった。
「救護室の天井・・・」
リーシェは体を起こした。
「あれ?包帯。」
右手には包帯が巻かれていた。まだ少し
「ええと、確か・・・」
行方不明になったマリーの情報を集めていて、マリーと同じ回復魔術科の女子生徒に何か知っている事が無いか訊ねて、部活仲間のサリルと言う兎人族の子が最後にマリーと一緒にいた可能性が高いって事が分かり、とりあえず依頼したミリーに報告とサリルについて聞こうと学園に戻るために、近道をしようとして、そこで黒いローブの男に襲われて、交戦するも一方的にボコボコにされて、連れていかれそうになったときに、誰かに助けられて・・・
「でも、誰に助けられたっけ・・・」
抱きと抱えられて、何かを言われた気がするが、意識が朦朧としていたリーシェは何を言われたのか思い出せなかった。
当然、顔も覚えていない。
「女の子の声だったような気がするなぁ・・・」
女の子の声だったことは何故か記憶にあった。
「すぅ・・・すぅ・・・」
ベットの脇を見るとそこには、アルティか突っ伏して寝息をたてていた。
「アルティ・・・」
どうやら自分が寝ていた間ずっとそばに居てくれたのだろう。
疲れて寝てしまったようだった。
「いつも、ありがとうね。アルティ。」
左手でアルティの艶やかな金色の髪優しく撫でる。
「一人じゃ何も出来ない私と一緒に居てくれてありがとう。」
この学園では、成績最底辺で何も出来ない自分と一緒に居てくれるアルティの存在がとても嬉しくて、いとおしいくて、リーシェはこんな素敵な親友を持てたことを幸せを感じていた。
「んぅ・・・んッ・・・」
「ふふ。可愛い。」
髪を撫でると僅かに反応するアルティを可愛らしいと思いながら、髪を這わすようにゆっくりと撫でながら今度は頬を触った。
「あっ。ぷにぷにだぁ。」
左手でアルティのシミひとつない白くてスベスベのほっぺたを優しく摘まむように、むにむにと触る。
「んっ・・・むぅ・・・リー・・・シェ?」
さすがにほっぺたむにむには、起きてしまったようだ。
「あっ。起きた。」
「リーシェ・・・リーシェッッッ!!!」
バッと体を起こしたアルティはリーシェの名前を呼びながら強く抱き締めた。
「ごめんね。また、心配かけちゃったね。」
「うんん。いいの。リーシェが無事ならそれでいいの・・・それ以外なんて要らないの・・・」
アルティは更に強く抱き締める。
「そっか。ありがとう。」
リーシェはアルティの背中に手を回し、優しく撫でる。
「もう、大丈夫なの?」
体に痛みはないし、包帯をした右手を握ったり開いたりして特に違和感は無かった。
「うん。もう、大丈夫かな。」
「そっか。よかった。」
ゆっくりとアルティはリーシェから離れた。
「うん、ありがとう。もう大丈夫。帰ろっか。」
布団から出て、床に置かれた靴を履く。
アルティに支えられながら、立ち上がる。
「うん。行こう。」
カーテンを開けて、ベッドが並ぶ通路を通り、入り口の近くにあるデスクで書類を整理していた保険医の先生に挨拶をして救護室を後にした。
「どれぐらい寝てた?」
「多分5時間ぐらいかな。」
廊下の窓からみえる景色は街灯が灯り、辺りはすっかり暗くなっていた。
「結構寝てたんだね。」
「いや、リーシェ結構な重症だったんだよ。上位回復魔術があったからこそこれぐらいで済んでるけど、普通なら全治3ヶ月ぐらい余裕で掛かるよ。」
「そんなに酷かったの?」
「保険医の先生に聞いたんでけど、全身打撲に、肋が3本と右手の甲は粉砕骨折してたらしいんだよ。で、その包帯は―――」
アルティが言い終わるのを待たずに、リーシェは右手の包帯をほどいた。
「あっ。待って―――」
包帯がほどかれた右手の甲には、斜めに大きな傷を後が残っていた。
「そっか・・・残っちゃったか。」
手の傷を見ながら、感慨深く呟いた。
「そんな・・・こんなに大きな傷が・・・」
アルティは手の甲を撫でながら、泣きそうな声で呟いた。
「ごめんなさい。リーシェ手に一生消えない傷が・・・」
「なんでアルティが謝るの?アルティは悪くないでしょう。それにこれは、私が弱かったからだよ。だから、アルティせいじゃないよ。全部私のせいだから。だから、アルティは何も気にしないで。」
「気にしない分けないよ!!!その手の傷は一生残るんだよ!!!」
「うん。そうだね。」
「そうだねって・・・」
「分かってるよ。でもね、私ね。今回のことがあって、私は強くなりたいって、思ったんだ。」
アルティの顔を真っ直ぐ見つめながら、優しく答えた。
「私は普通の魔術が使えないからさ、そのかわり、近接格闘術で強くなろうと思ってるの。一からだからそりゃ大変だろうけど、何時までも守ってもらう立場じゃ嫌だもの。」
「リーシェ・・・わかったよ。そこまで言うなら、応援しない訳にはいかないじゃないの。」
「うん。アルティ、ありがとう。」
「何言ってるのよ。友達でしょ。そんな事気にしないでいいの。」
それから、他愛のない会話をしながら、寮に向かう帰路に付いた。
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寮の部屋に入ると明かりが点いて、べリアルが既に帰ってきていた。
「べリアル、帰ってたんだね。」
「ああ。さて、帰ってきたばかりだが、良い話と悪い話の二つがある。どちらから聞きたい?」
「じゃあ、いいほうからで。」
「君を襲撃した男が捕まったよ。それから、その男の背後関係も分かったようでね。行方不明になった者達の居場所を複数突き止めたそうだ。そして、学園側は今晩より、十二将と騎士団総出で救出と敵の掃討を行うようだ。」
「そうなんだ。私が寝ていた間にそんな事があったんだ・・・これは私が何かしなくても、解決しそうだね。」
「問題の、もうひとつの話はね。君のクラスメイトのリアス・アスキードが誘拐された。今日の放課後にね。」
部屋に入ろうとしたリーシェは思わず静止してふりかえった。
「え?リアスさんが・・・誘拐・・・された?」
「ああ。しかも、彼女を誘拐したのは、今回の事件の犯人とは別の組織の犯行のようでね。」
「別の組織って何なの?」
「私の予想だが、恐らく〝真なる神〟だねぇ。」
「どうして、そんな事がわかるの?」
「調べたんだよ。居場所も既に掴んでいる。」
「学園に知らせた方がいいんじゃ・・・」
「いや。学園側は、今そこに戦力を回す余裕はないだろう。それに、〝真なる神〟が相手となると、また別の問題が浮上してしまう。そうすれば、現場が混乱するだろねぇ。かといって他の生徒を動かす訳にはもいかないねぇ。」
「つまり、動けるのは私とべリアルだけってことね。」
「そうだ。秘密裏に、騒ぎにならないように、救出する必要があるからねぇ。」
「・・・わかった。やろう。私達しかいないなら。」
リーシェのその言葉を聞いて、べリアルは内心ほくそえんでいた。
(やはりねぇ。こう言えば君は必ず乗ってくれる思っていたよ。)
「それじゃあ。作戦を伝えよう。」
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