根を広げるもの
カルディニア帝国の郊外にある、アスリラ領は領土の半分が森に覆われた土地で今だに未開の大森林が広がっていた。
べリアルは以前に帝都で購入した森林に囲まれた豪邸に訪れていた。
「べリアル様、今日はどのようなご用向きで・・・」
豪邸の一室の書斎に転移してきたべリアルに、書斎の整理をしていた白髪の初老の執事が手を止めて出迎える。
「少し様子を見にきたのだよ。首尾は順調かね?」
「はい。皆、訓練に勤しんでおります。男女を含め、人族が75人と亜人が167人と魔獣が15匹でございます。特に亜人の子供は皆、呑み込みが早く戦闘に参加しても申し分もなく使える子もおります。」
「そうか、なら次回の作戦時には何人か選んで連れて行こう。」
長い廊下を移動しながら、ふと、窓から見える連れてきたの奴隷たちの訓練の様子を見下ろしながら呟いた。
「了解いたしました。兵士長にその旨をお伝えしておきましょう。」
「ふむ。では、地下都市の方は?」
「まだ、住めるようになるまではもう少し準備に時間が掛かるかと。」
とある部屋の前で止まりドアを開けるとそこは、背の高い本棚が立ち並ぶ図書室だった。
「工場の方はどうかね。」
「現在、極一部ではすでに稼働中とのことですが、機械の調整で大多数は今しばらく掛かるかと思われます。」
壁際にの本棚の6段目の表紙が赤色の本と7段目にある青色の本と5段目の黄色の本を順番に押すと、ガコッという音と共に本棚が左にスライドして開き、鉄柵のような鉄色の蛇腹式の扉が現れ、本棚が開ききると同時にひとりでに開き赤い絨毯が敷き詰められ、壁や天井は木製で唐草模様や花柄の彫刻が彫られたエレベーターが姿を現した。
「しかし、このエレベーターというのは素晴らしい技術でございますね。階段も魔力も使わず誰でも容易に上り降りが可能性な箱とは恐れ入ります。」
執事を先頭にエレベーターに乗り込み、右側に縦に並ぶ4つあるボタンの2番目を押すと、蛇腹式の扉が閉まりゆっくりと下降しはじめた。
「私が考えた訳ではないよ、既存の装置を魔石でも動くように改造したに過ぎない。」
「だとしても、一瞬でこのような物を作ることは、我々人間には不可能でございます。」
下降していたエレベーターがゆっくりと止まり、蛇腹式の扉が開き、外の出るとそこはエレベーターホールになっていて、出てきたエレベーターを含めて向かい合わせで、10個のエレベーターが並んでいた。
エレベーターホールから奥に伸びる赤い絨毯の敷かれた広い廊下を執事を先頭に50mほど歩き、通路一杯に広がるアーチ状のゲートをくぐる。
「ふむ。ぼちぼちと言ったところだねぇ。」
ゲートをくぐるとそこは総面積20kmを超える広大な地下都市を一望できるテラスになっていて、そこから見える景色は赤レンガ造りの建物と煙突でところ狭しと並び、産業革命時のイギリスのようであった。
「はい。今日の報告では、現在稼働している工場は製鉄工場が2件と製糸工場が1件のみです。」
ぱっと見でも50本はある煙突の内の3本しか煙が上がっていないのはそのせいだろう。
「ここの工場フロアは、戦闘には向かない職人や女性が亜人を含めて、240人ほどが作業員として従事しています。」
「240か・・・工場すべてを稼働させるには、1000人単位で人が足りないねぇ。」
「おっしゃる通りかと。今後帝国の物流に根を張ることを考えればまだまだ人手が足りません。今夜もまた、奴隷商会の襲撃して、相当数の奴隷達を集める予定です。今回は、3手に別れ、帝都アルガザルム、城塞都市スパーダ、海洋都市リヤードの拠点を持つ、帝国最大の奴隷商会アーバンズ・クラウンの拠点を8ヶ所襲撃し、合計で1000人ほどの奴隷を確保する予定でございます。」
「ふむ。人材の方は追々増やしていくとして、物流ラインの方はどうかね?」
「すでに13社の小規模商会と商業ギルドとの取り引きが確約されております。物品は、ワイン、香辛料、砂糖、金属製のプレートメイル、幅広剣、などでございます。」
「悪くないねぇ。」
べリアルは愉快そうに笑う。
「これが、我々の大いなる野望への第一歩なるのですね。」
「ああ。始めようではないか。我々〝根を広げるもの〟の侵略を―――」
作品の感想・意見などあれば気軽にコメントしてくださるとありがたいです。
可能な限り返そうと思います。




