方向性
今回は短めです。
明日の8時投稿は私用でお休みします。
「納得出来ない・・・」
神殿を出たリーシェは納得いかないと言う、不服そうな顔をする。
「確かにちょっと予想外だね・・・」
アルティも何とも言えない表情をしていた。
「確かに私には魔術士は向いてないって言うのは分かるよ、魔術が全く使えないからね。でもね、もっと他にあるでしょう。生産系とか、建築系とか、美術系とかさ・・・」
「リーシェ。生産系は分かるけど・・・建築系とか美術系は違うような・・・」
「よりによってなんで武道家なのさ! だいたい、私は一応女子なんですけど、なのに魔物と素手で殴り合いをするような、肉体派ゴリゴリのおっさんみたいな職業、嫌に決まってるじゃん。」
「リーシェ、最後の方は完全に偏見だよ。女性の格闘家の人は普通にいるし、武戦学園にはそういう生徒は相当数居るからね。」
「そういう問題じゃなくて、もっとこう…気持ち的な問題なんだよ。」
どうしても納得いかないと偏見マシマシで駄々をこねる。
「私は良いと思うのだがね。」
先程からなにか考え込んでいる風だったべリアルはリーシェが武道家になることに肯定的なようだった。
「え?どうして?」
「いやなに、適正診断をしたのは職業だけではないだろう?」
「そ、そうだけど。でも―――」
実はリーシェが受けた適正診断は職業だけでなく、その少し後に、適正魔術診断も受けていたのだ。
「でも。ぜんぜん適正わかんなかったじゃん。」
「えーと。確か、判別不能だったんだよね。」
「そもそもそんなことってあるの?」
リーシェが受けた適正魔術診断の結果はなんと〝判別不能〟であった。これには神殿職員のひとも随分と驚いていた。
通常は生活系、生産系、戦闘系、支援系の4部門に別れ、さらにその中で、生活系風魔術とか戦闘系炎魔術とか支援系回復魔術などに部類分けされ表示されるのである。
魔力を持つものは少なからずこのいずれかに適正があるため、今回のような判別不能と表示されることはあり得ないことである。
しかし、一部例外を除いてはだが。
「魔術適正診断で判別不能と表示されたということは、恐らくリーシェは、どの魔術にも適正を持たない固有魔術の持ちの可能性が高いということになると思うけど・・・」
問題なのは、仮にリーシェが固有魔術持ちだったとしても結構どんな魔術なのか全く分からないということである。
「そもそも、その固有魔術だっけ?が、私の適正であるかどうかも分からないし、どうしようもないと思うんだけど?」
「そこなのだが、職業適正診断で武道家と出たのなら魔術適正診断の結果はおのずとそれに関係する魔術になるはずなのだよ。」
一般的には、それぞれの職業に適した魔術が使えるようになるものである。
「だから、武道家としての修練を積めばおのずと自分の適正魔術に気づいてくるだろう。」
「いや、でもね。私、魔物と戦うどころか、喧嘩すらしたことが無いのに相手を殴る、蹴るが主体の職業なんて務まりまらないよ。」
そもそもリーシェは、平和な田舎の農村に住んでいて魔物が襲われるどころか、魔物など一度も見たことすらなかったのだ。
なので、戦うどころか喧嘩の経験すら皆無であった。
「戦闘経験などなくても問題ないよ。」
「ん?どうして?」
べリアルは振り返って、右肩に手を置き呟く。
「リーシェが嫌でも拳で魔物を殺せるようにするからねぇ。」
「え?」
そう言ったべリアルの声は凄く楽しそうであった。
途端にリーシェに背中に悪寒が走った。
「ええと・・・やらなきゃ駄目なのそれ。別に私はこのままでも良いんだけど・・・」
「そのままでも構わないよ。連れていくからね。」
「え・・・いや・・・」
助けを求めるようにアルティの方を見た。
「私は可能性があるならやってみるべきだと思うよ。それにリーシェ、このままなにもせずに過ごしてたら、流石に2年生に上がれないと思うよ。」
「うッ―――」
公開召喚儀式前に落第の話が実際にでたので、アルティの意見にはぐうの音もでなかった。
「それに。魔戦学園には、固有魔術を持つ生徒が何人かいるし、色々聞いてみるべきだと思うよ。」
「居るんだね。何人かは・・・それで例えばどんな人?」
毎度の事ながらリーシェはそういった情報には疎かった。
「そうだね・・・十二将の序列一位のニーベル先輩の〝反転魔術〟とか序列二位のイリス先輩の〝幻想魔術〟とか―――」
「一応知ってるけど、馴染みがない人たちだね。しかも十二将の一位、二位とか近づくだけでも大変そうなんだけど。」
一応リーシェも知ってはいたが、なんの接点もないので近づける気がしないのである。
「あっ。そういえば、第三位のアールさんも固有魔術持ちだよ。」
「あれ、そうなの?」
「うん、確か〝透過魔術〟だったと思うよ。」
「透過?すり抜けるってこと?」
「みたいだけど私は見たことないからなんともいえないかな。」
「でも。アールさんが固有魔術持ちがなら、話を聞くことができそうだもんね。」
見知らぬ生徒でしかも十二将となるとそうはいかないがアールさんなら色々と話てくれそうである。
「そうだね。明日聞きに行ってみようか。」
「うん。きっとアールさんなら―――」
「それは構わないが、魔物との殺し合いは明日から行うよ。」
「今殺し合いって言ったよね!?」
なんだか凄く物騒な発言が聞こえたので、聞き返してしまった。
「初回からそれはレベル高すぎない?」
「実践こそが全てだよ、リーシェ。緊張感のない戦いでは意味がないからね。」
「そんなぁ・・・」
明日は一日大変になりそうだとリーシェは思った。
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可能な限り返そうと思います。




