学園長と資質
10話と11話を統合しました。
多少の以前より加筆をしています。
「何だろうね。話って・・・」
メリッタ先生に模擬戦授業後に急に学園長室に行くように言われた。しかも、場合によっては今日の授業は免除するとのことだった。
「心当たりが多すぎる・・・」
それにしても学園長直々に話とは何だろうか。
メリッタ先生は何も教えてはくれなかった。
しかし、おおよその想像はついていた。
「べリアルのことだよね・・・多分。」
隣を並んで歩くバーテン服を着たべリアルの笑顔を浮かべる白い仮面を見ながら話を振った。
「まぁ、そうだろうね。彼女は学園長であると同時に、七大魔王の一人でもあるからね。色々聞きたいことがあるのだろう。君が私をどうやって召喚したのかとか、私は何者なのかとかね。」
仮面をしているので、相変わらず表情は読めないが、べリアルの声は心なしか少し弾んでいるような気がした。
「まぁ・・・そうだよね。べリアルを召喚した時、凄い騒ぎになったからね・・・」
リーシェは公開召喚儀式でべリアルを召喚した時の事を思いだして苦笑いをした。
当初のリーシェは何が召喚されるかなど全く知らずに、なぜか持っていた印章使い、なぜか覚えていた10節の呪文を詠唱した結果、超巨大魔方陣に観客すら巻き込んだ魔力嵐を引き起こしたらしい。
リーシェ本人は目を瞑って詠唱していたので、魔方陣は見ていないし、魔力嵐はリーシェの立っていた位置がちょうど台風の目の中のように静だったので気づいていなかったのだ。
生徒席に戻ったときに周りの生徒に言われてはじめて気づいたのだ。
「でも。騒ぎのレベルで言えば、べリアルを召喚した後の方が大変だったと思うけどな。」
「そうかね?」
「そうだよ。だって、押し潰されそうな威圧放っているんだもん。私、怖くて腰が抜けて、身体が震えて、まともに喋れなかったんだよ。あのときは本当に殺されるかもと思ったんだから!!」
今でもあのときの事を思い出すと鳥肌が立つ。
「しかも、べリアルの威圧で気絶した人が続出したらしいんだから。学園に何件も苦情が来たらしいし・・・」
最も、後半のはアルティから聞いた話なのだが。
「まさかあの程度の存在感で動けなくなるとは思わなかったのだよ。私にとってはあれが自然体だからね。」
「自然体であれとか勘弁してよ。皆の気が持たないよ・・・」
闘技場を出てから、学園長に呼ばれた理由をあれこれ考えるながら、魔戦学園の中にある学園長室に向かっていた。
学園長は本来なら島の中心にあるヨーロッパの古城のような造りの時計塔にいて業務をこなしているらしいのだが。なにぶんどの学園からも10km以上離れているものだから、生徒や職員を呼び出すときに不便だと言うことで、各学園に学園長室を作り、用がある際に学園長自信が転移したり、生徒や教員を転移させたりする為の部屋があるのだ。
「ここだね・・・」
高さ2m、幅2.5mほどある木製の重厚な両開きの扉には、上面には魔方陣のような円を背にした暗黒騎士を思わせるような全身鎧の人物が4本の腕をを広げていて、左上の手の上で水晶らしき物を浮かべ、左下の手には柄は細く刃は広く先端が扇状になった斬馬剣のような大剣を持ち、右上の手も左上の手同様に、上で水晶らしき物を浮かべ、右下の手に先端が捻れた二股の槍を持っていて、その人物の周辺には、左側に鳥の翼を持つ美しい人物達と右側に蝙蝠の翼を持つ醜い顔の人物達が下を見下ろしていた。そして下面には、剣、槍、杖、弓、盾などを掲げ、上面の人物達に対立するよに7人の人物が描かれた豪奢な彫刻が彫られていた。
「寮の玄関扉もそうだが、この学園の施設の扉は無駄に凝ったものが随分と多いねぇ。」
べリアルは、扉の彫刻に触れながら若干呆れた口調で呟いた。
「私も詳しくは知らないけど、神代の時代の邪神と魔王の戦いの様子を描いたものらしいよ。」
「ふむ・・・神代ねぇ。」
左側の鳥の翼を持つ美しい人達の彫刻をなぞった。
「どうしたの?」
「いや・・・行こうか。」
そう言って扉の片方だけを押して開けた。
「ちょっと、いきなり。ノックは!?」
べリアルがノックもせずにいきなり扉を開けたことにリーシェは戸惑いを見せる。
「問題ないよ。中は誰もいないからね。」
「なんで分かるの・・・」
「人の魔力を感じないからね。」
「なら、いいけど・・・」
そう言ってリーシェも扉をくぐった。
中は向かい合った黒革のソファーにガラステーブルに壁際には2m程の本棚が3つほど並び、部屋の中央の窓際に執務用のデスクが1つあるだけのシンプルな部屋だった。
「なんか・・・思ったより・・・普通だね。」
「そうだねぇ。豪華なのは扉だけのようだ。」
入り口の扉が豪華だったので中もさぞ豪華な造りだと思ったが、凄く普通で拍子抜けしてしまった。
「でも。ここに学園長先生がいないとなると・・・待ってればいいのかな。」
「いや、案内してくるみたいだよ。」
べリアルがそう言うのとほぼ同時に、目の前の床に赤色の魔方陣が浮かび上がった。
「わお・・・これは、転送魔方陣ってやつなのかな。」
「そうだろうね。」
べリアルが踏み出して魔方陣の中に入った。
「あっ、待って。」
べリアルの後を追うようにリーシェも魔方陣の中に入った。
二人が魔方陣の中に入って横に立つと、足元の魔方陣が光り輝き二人は魔戦学園の学園長室から消えた。
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気がつくと、広い場所に立っていた。
「ここは・・・」
リーシェが辺りを見渡すとそこは20mはありそうな幅の床には赤カーペットが敷かれ、上を見上げると高さは2~30mはありそうな天井に、壁際に大理石の柱と、柱の前に身体に布を何回も巻いたような服装で火の灯された聖火を掲げた男性と女性の3m程の石膏像が左右均等に等間隔で並び、柱と柱の間には剣を構える5m程の高さ騎士が並んでいた。
「うわぁ・・・なに、ここ凄い!!」
「まるで何処かのRPGの魔王城の廊下のようだねぇ。」
興奮して辺りを見渡すリーシェとは裏腹に、べリアルはメタい事を呟いた。
「そして、これは・・・」
「うわぁ。凄くおっきいね・・・」
そして目の前には高さ10mはある左側には7人の天使とその天使達を祈る人々と大きな城、右側には7体の悪魔とその悪魔達を見て嘆き悲しむ人達と崩壊した大きな城の彫刻が彫られた赤い重厚な両開きの鉄の門が目の前にあった。
「魔王部屋と言わんばかりの扉だねぇ。」
「この向こうに学園長先生が・・・」
ガコンッ―――とひとりでに扉が僅かに動き、ギギギギ―――という金属の軋むような音がして扉外側に開いた。
扉の向こうは真っ暗で何も見えなかった。
「ん~。何も見えないね。」
リーシェは覗きこむように暗闇の先を見つめてた。
「考えていても仕方あるまい。とりあえず入るとしよう。」
「そうだね・・・」
べリアルの後に続くようにリーシェも扉をくぐった。
「本当に何も見えない。何処へ行けば―――」
ギギギギ―――と言う金属の軋むような音がしてバタン―――と閉まってしまった。
「え、ちょっ・・・暗い。べリアル何処にいるの!?」
「心配いらないよ。横にいるからね。」
そう言ってリーシェと右手を繋いだ。
突然ポッと暗闇の中に灯りが1つ灯ると、眩い光を放つ。
「―――ッ!?」
眩しさでリーシェは目を瞑り、両手で顔を覆った。
光が収まり、手をのけて目を開けた。
そこは魔戦学園の学園長室の3倍の広さのある執務室だった。
しかし、造りは白をベースにしたシンプルなデザインで装飾品な彫刻などなく、床一面の赤色のカーペットに、天井は赤色のペイズリー柄の天井に大きなシャンデリアが2つ下がっていて、壁一面の本棚と窓際に書類を納めた棚、部屋の中央には、長方形の黒いガラス天板のモダンなローテーブルにゴツゴツした黒革の5人掛けチェスターフィールドソファーがローを囲むように4つ置かれ、大きな窓の横には赤いカーテンが束ねてあった。
「やぁ。私の執務室にようこそ。リーシェ・アストルとその召喚獣のべリアル。」
執務室の窓際の書類が積まれたデスクで肘をつき手を組んで不敵に微笑みながら革の椅子に座っている、年齢不詳で混じり気のない白髪のロングヘアに、真紅の赤い瞳、病的な程に白い肌、赤色軍服ような服を着て、赤色の外套を羽織った女性、オーリス学園島総学園長、セルジア・リベレスタの姿がそこにはあった。
「しかし、二人とも随分と仲が良いようだねぇ~。」
セルジアはリーシェとべリアルが横並びで手を繋いでいることをからかうように、ニヤリと笑う。
「え?あっ・・・」
手い繋いでいたことを思い出して、赤くなってパッとてを離した。
「あぁ。これはリーシェが私を探すも―――」
「わーわー。べリアル、余計なこと言わないで!!」
恥ずかしくなって、べリアルの言葉を手を振って遮る。
「まぁ、知ってたけどね。こちらからは見えてれるからね。しかし、リーシェは純情だねぇ~。」
ニヤニヤしながらセルジアが追い撃ちを掛ける。
「そんなぁ。学園長先生まで・・・」
「まぁまぁ。可愛くて良いじゃないか。」
「それに関しては私も同意するね。ガサツかと思いきや、かなり乙女なところがあるからねぇ。」
そこにべリアルが加わり、リーシェの純情エピソードを語りだす。
「昨日の夜など、私が召喚獣として同じ部屋で生活する事を男女が1つ屋根の下で暮らすことになるのは恥ずかしいと言い出してね。」
「召喚獣のべリアルを異性と認識してたの?」
「ちょ・・・ちがっ・・・」
「どうもそのようでね。家族以外の男性と暮らしたことないとかでね。」
「へぇ。それは乙女だねぇ。私ならペットぐらい感覚なんだけどなぁ。」
「もう・・・やめ・・・」
「その前は―――」
「もうぉー。二人ともいい加減にしてください!!」
流石に恥ずかしさに耐え切れなくなり、思わず叫んでしまった。
「なんで私の恥ずかしい話ばかりするんですか!!」
そう言って、べリアルの脛を思いきり右足で蹴った。
が、びくともせずリーシェの足は弾かれて、指先を押さえてしゃがみこんだ。
「あうぅ・・・いたた・・・と、兎に角もうこの話はなし、やめてください・・・」
涙目になりぷるぷると震えてながら、べリアルを睨む。
「学園長先生もこんな話をわざわざするために呼んだんじゃ―――あッ・・・」
言いかけて、リーシェは我に返った。
自分が今いる場所が学園長室であることと、話している相手が
総学園長にして魔王セルジア・リベルタスであることを思い出して、顔がみるみる青くなる。
「あっ・・・申し訳ございません。出すぎた事を言いました・・・」
怒らせたのではないかとリーシェはセルジアに深々と頭を下げた。
「あぁ、いいよいいよ。頭を上げて。こんなことで怒らないから。」
「でも・・・その・・・」
「いや、私こそすまなかったね。少しおふざけがすぎたようだ。」
そう言って席を立つとコツコツと厚底のブーツの音を響かせながら リーシェの元まで歩いてきて手を差し出した。
「そう畏まらなくてもいいよ。ほら、顔上げて。」
「・・・分かりました。」
リーシェはセルジアの手をとった。
「まぁ。私の事は呼びやすいように呼んでくれ。ただし、ちゃん付けはよしてくれ・・・」
「えっ。学園長をちゃん呼びする人がいるんですか!?」
「あぁ。私の事を会うたびにセーちゃんセーちゃんと呼ぶ黒髪童顔精霊娘がな・・・」
「あぁ・・・ミナトちゃんですか・・・」
横にピースをして舌をペロっと出すミナトの姿が目に浮かんだ。
「そうあの娘だ。いくら好きに呼べとは言ったがな・・・気安すぎるだろ。」
「そうですね。ミナトちゃんは誰でもちゃんを付けたがりますからね。」
妙なところで親近感をセルジアに持ったリーシェであった。
「ヘっくち―――あれ?風邪でも引いたかな?」
鼻を触りながらミナトは小さく呟いた。
「まさか。ミナトに限ってそれはないと思いますよ。」
何を言っているのと言わんばかり呆れ顔でルクシリアは答えた。
「ん~。それもそうかな。」
ミナトは平常運転であった。
「さて、立ち話は何だし、掛けてくれ。」
セルジアに促されて、部屋の中央にあるゴツゴツした黒革のヴィンテージ風の5人掛けチェスターフィールドソファーにべリアルと並んでいた腰かけた。
「君達2人を呼んだのは、公開召喚儀式のことで来てもらったんだ。一応、教員からの報告書には目を通しているんだけど、やはり直接話を聞きたいと思ったので、来てもらったんだ。」
リーシェの予想通り、公開召喚儀式の事をことであった。
「分かりました。私が覚えている範囲でよろしければ。」
それから、リーシェはセルジアに覚えてる範囲でことのあらましを説明した。
気づくと何故か持っていた純金のネックレスのこと、何故か知っていた10節の呪文のこと、何処か不思議な所にいたおぼろげな記憶、当日の朝意識を少しの間失ったこと、召喚中の自分の状態、召喚した結果ベリアルが召喚されたこと、色々考えたが、落第のするのが嫌だったので当初はとりあえず召喚獣の契約を結んだこと、ベリアルの種族が堕天使であること、そして右の手の甲にある契約のあかしである赤いトライバルサンの刻印のことを。
「なるほどね・・・右手のそれは、契約の証なんだな。」
「はい。」
「意識を失ったときの事はメリッタ先生の報告書でみたが、何でも禁書クラスの魔導書の呪いで記憶消去と精神汚染を受けて一時的に意識を喪失したらしけど・・・リーシェと一緒にいたアルティ・リーフレックの説明では、リーシェが昨日図書館で変な本を見つけたと聞いたらしいと、そう説明し詳細を話そうとした直後にリーシェが意識を喪失したとあるが、そんな危険な魔術書が図書館にあったのか?」
「すみません。そのことはアルティにも聞かれましたが、全然記憶になくて・・・」
「そうか・・・」
「しかし、召喚された時にもしかしてと思っていたが、やはりベリアルは堕天使だったんだな。」
セルジアはベリアルに意味ありげな視線を向けるが、リーシェはそれに気づくことはなかった。
「セルジア学園長はベリアルが堕天使だと気づいていたんですか?」
「そりゃあ、私は魔王の一人だからな。3000年前の神代の時代を生きてきたんだ。邪神との戦いの際に奴の創造した堕天使と嫌になるほど戦ったからな。」
そう語るセルジアは少し悲しそうな目をしていた。
「そうなんですね。流石、神代の魔王って感じです。もっと聞いてもいいですか?」
「あぁ。私のこんな話でいいのなら、いくらでも話すぞ。」
リーシェはセルジアの話を目を輝かせながら聞いていた。
それから、リーシェはセルジアに神代の文化の話や他の魔王のこと、邪神と戦ったときのことなどを話していると、1時間ほど話していた。
「さて、これだけ聞ければ大丈夫だろう。急に呼び出してわるかったな。」
「いえ、こちらも色々聞くことが出来ました。ありがとうございました。」
リーシェは立ち上がって、セルジアに深々と例をする。
「ああ。私も久々に昔のことを話せて楽しかったぞ。」
リーシェの言葉にセルジアは少し満足そうな顔をしていた。
「それじゃあ、そろそろ帰り―———あれ?」
リーシェはソファーから立ち上がり、帰ろうと扉に向かって歩いていことして、ベリアルがまだソファーに座ったままなのに気づいた。
「ベリアル?どうしたの?」
「私はセルジアに個人的な話があるので先に戻っておいてくれないかね。」
「そうなの。セルジア学園長は大丈夫ですか。ベリアルはまだ話があるみたいですけど・・・」
帰ると言った手前、ベリアルが残って大丈夫かどうかをセルジアに確認する。
「ああ。私は構わない、その扉をくぐると魔戦学園の学園長室に飛ぶ。話が終わるまで、ソファーで休んどいていいぞ。」
「分かりました。色々ありがとうございました。」
そう言ってリーシェは扉の前でもう一度礼をして、入ってきた時とは違う木製の扉を開け出ていった。
「真面目な子だな。」
「真面目で素直な点は私も美点だと思うがね。」
リーシェいなくなった事で、セルジアは一度服を整えた。
「話を合わせて下さりありがとうございます。ベリアル様。」
さっきとは打って変わって、いきなり丁寧な口調で話しかける。
「別にそのままでも私は気にはしないよ。」
「いえ。そう言うわけには参りません。貴方様の上位存在を気軽に話しかけようなどと、恐れ多いことでございます。」
そう言うと、テーブルを挟んで反対側にあしを組んで座るべリアルに対して、その場に膝まずき、こうべを垂れる。
「私は。いえ、我々魔王一同は、自身より目上の方をそのような扱いをすることは出来るはずがございません。」
「ふむ、そうは言うが今は、私の方が君より弱いはずだがね?」
膝まずくセルジアを見下ろしながら、少し意地の悪い質問をする。
「お戯れを。私は決して貴方様を強さだけで判断いたしたわけではございません。私は、貴方様のその存在の偉大さ、美しさ、そして、畏怖を抱きました。」
「そこまで、自分自身との差を明確に理解できているのなら、君は他の人間よりは信用できそうだねぇ。」
「ありがとうございます。」
「さて、話を戻そう。とりあえず、座りたまえ。」
「はい。ありがとうございます。」
べリアルに促され、セルジア静に立ち上がり再びソファーに腰かけた。
「まぁ、私も君に用事があったのでね。お互い様だよ。」
「そうなのですか?」
「ああ。しかし、まずは君の話から聞こうか。」
「ありがとうございます。」
ゴホンと一つ咳ばらいをして話し始めた。
「率直にお聞きします。ベリアル様はこの世界の堕天使ではありませんね?いえ、もっと言うと、この世界の存在じゃありませんよね?」
突拍子もないことを聞き出した。
「正解だよ。私はこの世界の存在ではないし、ましてや霊界の存在でもないよ。私が堕天使ないと思った理由は神代かね?」
「はい。そうです。何故なら、この世界の堕天使は3000年前に我々魔王が絶滅させたからです。」
「ふむ。なるほどそれでか・・・」
ベリアルは納得したような声で呟いた。
「あなた様は、どうしてこの世界に来たのでしょうか?」
恐る恐るベリアルに聞いた。
「さてな。私もなぜこの世界に召喚されたか詳しくは知らないがね。」
「そうなのですか・・・」
「だが。1つだけ言える事がある。」
「それは?」
セルジアは生唾を飲んだ。
「私が召喚されたのは、偶然ではなく、この世界にとって必然であったということだ。」
「必然ですか?」
「ああ。恐らくこの世界には、私と同等の存在が悪意を持って既に潜り込んでいる。」
「なぁ―——!?」
セルジアは驚いて目を見開いた。
それもその筈、公開召喚儀式で召喚されたベリアルはただの威圧だけでも、魔王である自分に死を意識させるクラスの強さを誇る存在が既にこの世界もう一人存在していると言われ驚愕した。
もしそうならこの世界では邪神など比較にならない程の脅威である。
「だからこそ、釣り合いを取るために私が召喚されたのだろう。抑止力としてね。」
「抑止力・・・ですか・・・」
「ああ、そうだ。恐らくこの世界を奴らに渡さないための対抗措置という事だろうね。」
「奴らとは?」
「すまないが、これ以上は私には詳しいことは喋れるない。だが、奴らのねらいはほぼ間違いなくリーシェ・アストルの殺害だ。だからこそ、私がリーシェの元に召喚されたのだろう。そして、私の存在を維持するための無限の魔力もね。」
そう。本来の召喚獣とは、霊界から契約者の魔力を使い現界するもので、現界している間は魔力を消費してしまう。そのため、必要に応じて呼び出すものであって、ベリアルのように常に現界させるものではないのだ。
ましてや、ベリアルはただでさえ特殊な存在なので、普通の召喚獣とは比較にならない魔力を消費するはずだ。
それこそ、魔王が契約者であってもそう長くは現界を維持できないだろう。
「そう言うとこだったんですね・・・一目見た時から彼女は普通ではないと思っていましたが・・・やはりそうなのですね・・・」
「私は、彼女の存在を農村の教会から報告を受けたときに、彼女を放っておく置くと色々な問題が起こるのではないかと予想して、私の権力を使って半強制的に特待生として、入学させました。」
「なるほど。それでリーシェを試験も面接もパスして特待生枠として、学園島に匿う形で入学させたという事だね。」
「そうです。しかし、先生や生徒たちには不満を持つものが少なからずいて、彼女にきつく当たる生徒もかなりいたでしょう・・・」
「そうだねぇ・・・」
ベリアルはそれを先ほどクラスメイトから感じたばかりなのだから。
「さらに、予想外なことがありました。それは、彼女が膨大な魔力持っているにも関わらず、小さな子供でも練習すれば扱えるはずの初級魔術すら使えなかったことです。」
そう言いながらセルジアは頭を抱えた。
「原因も既にわかっています。恐らく彼女が固有魔術持ちだからだと思われるからです。」
「つまり、リーシェは既存の魔術をいくら練習しても、使えないという事かね・・・」
「はい。固有魔術持ちは通常の魔術は一切使えません。その代わりこの世界で本人しか使えない特殊な魔術が使えます。魔戦学園にも固有魔術持ちが15人ほどいます。ただ、彼女はまだ、自分が何の魔術を使えるのか知りません。」
「まぁ。そうだろうね。知ってれば使っているかなぇ・・・」
少なくとも今のリーシェは魔術を一度も使ったことがなさそうだと思った。
「彼女には早く自分の能力に気づいてもらい、強くなったもらわなければなりません。」
「それは察するに、自分の身を守れるぐらいには強くなって欲しいということだろう。何か訳ありのようだが。」
「実はこの前の公開召喚儀式の様子は一部国家で生中継されていたんですよ・・・」
「なるほど・・・そういうことか・・・」
「はい。恐らくその時にベリアル様を召喚し、契約する所まで見られています。」
「まぁ、そうなると。当然多方面から目を付けられた、ということになるね。」
ベリアルは可能性としては考えていたが、予想よりも事態は深刻であった。
それもそうだろう。規格外の魔力に規格外の召喚獣を持ち、おまけに固有魔術持ちの少女など国家や組織が放っておくわけないのだから。
「今後、彼女。リーシェ・アストルを狙い様々な組織が動きだすと思われます。四大帝国に加えて聖堂教会、更には邪神崇拝組織真なる神まで絡んでくる恐れがあります。世界中が大きく動きだすでしょう。」
頭を抱えたまま眉をひそめ深刻な表情を浮かべた。
「この学園は何処の国にも属さない中立で魔王とSクラス冒険者クラスの十二将が合わせて24人います。これは世界最大の帝国、カルディニア帝国より巨大な戦力を有しています。ですが、これから先もずっと守りきれる保証はありませんからね。」
「なるほどねぇ。」
(どうやら、早急にでも奴隷たちを使えるようにする必要がありそうだねぇ。)
「っと。こちらの話はこれで終わりです。長々と失礼しました。」
座ったまま、セルジアは礼をした。
「それで、ベリアル様の用事は何でしょうか。」
顔色を伺うように、ベリアルの顔を見た。
「私の用事は簡単だよ。」
そう言うとベリアルはソファーから立ち上がった。
「この世界の個人最高戦力である魔王の強さがどの程度か知っておきたい。だから、今から私と戦ってもらおうか。」
ある程度進んで一段落着たらノクターンの方にも投稿しようと思っています。
作品の感想・意見などあれば気軽にコメントしてくださるとありがたいです。
可能な限り返そうと思います。




