第4話 営業妨害
「すみません。ハナさん。 ちょっといいですか?」
最近人気の出てきた、『見える』専門の幽霊さんが、机に向かって書類をまとめていたら、背後から私に声をかけてきました。
「はい? どうしましたか?」
私、ハナことトイレの花子でございます。
「いや、あの、あれ(・・)どうにかなりませんか?」
「あれってどれですか?」
「あの、生人のしつこいヤツですよ」
あ!『生人』って言うのはですね、私たちの世界の呼び方で生きている人の事をいうんですよ。
そのままですね。
ちなみに、私たち、幽霊は黄泉人って言ってるんです。
私たち死んでますから。
『あれ』、とか『それ』とかじゃ、わからないですよね…。
あのですね…
私たちの一部の仕事場に色々な機材を持ち込んで、カメラやビデオで撮って私たちの仕事場を撮していくんですよ。
その中で一番、五月蝿い(うるさ)人で祓い人の人が一番五月蝿いんですよ。
祓い人ってもうわかりますよね?
生人で言う霊能力者ですね。
その祓い人がですね、
『ここには強く想いの残った霊が…!!』
とか言ってお祓いをしようとするんですけどね、はっきり言って営業妨害ですよね。 営・業・妨・害!!
みなさんも一生懸命何かに集中しているところに知らない人がきて、『邪魔だ帰れ!!』って言われたらムカってきますよね?
そんな感じでたまに来るんですよね…(ハァ)
「あのぉ、はなさん…?」
自分の世界に入ってしまった私に不安になってしまったのか、控えめに声をかけてきた。
「は、はい!? 聞いてますよ!」
「それで、どうすれば…?」
「うーん、それじゃぁ、もう一度祓い人が来たら、その日から2ヶ月ほど休暇を出しますので、祓われたフリをして休暇届を出しに来て下さい」
と言い休暇届の用紙を取り出すハナ。
「え、でも、それだど有給消化になっちゃいませんか?」
と言いながら休暇届の用紙を受けとる見え専の人。
私はニッコリと笑い
「大丈夫ですよ。今回はその祓い人のせいなのでこちら(会社)からの特別休暇扱いにしておきます」
ありがとうございますと頭を下げる見え専の人。
「それでは、これからもお仕事頑張って下さいね」
「はい、ありがとうございました。失礼します!」
と元気よく返事をして、事務所から出ていく見え専門の人。
ハナはその背中を見送り一人呟く。
「まったく、生人だっていずれこっちに来るって言うのに、まったくもう!!」
ため息をつき、違う書類に目を通すはな。
「この生人の祓い人が今回の妨害者かぁ。それじゃ、この人がこっちに来たら今回の有給分肩代わりしてもらおう!うん、それでいいや」
と、ブツブツ言いながら書類に何かを書いていく。
「もう、今日は疲れたからこれで終わりにしようかなぁ」
背伸びをして凝り固まった体をほぐすハナ。
「うん!終わりにして、メリーでも誘ってお茶しに行こう!」