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アナフィラキシーショック

作者: さきら天悟

「ついに解明した!」


彼が研究していたのは、アレルギー。

特にアナフィラキシーショックについてだった。

それはアレルギーのショック症状だ。

スズメバチに刺されて死ぬ場合があるが、

多くはこの症状だった。

だが、スズメバチだけではない。

ソバやピーナッツでもある。

米国ではピーナッツバターを食した男性が恋人とキスをした時、

女性がピーナッツのアナフィラキシーで死亡した例もあった。


彼は微笑みを浮かべた。

アナフィラキシーショックを解明したからではなかった。

彼の視線の先には、写真があった。

若く美しい女性の写真。

彼より30歳は若いであろう黒髪の女子高生だった。





「この蚊に遺伝子を注入する・・・

そして3ヶ月もすれば・・・」


彼は蚊に人の遺伝子を注入した。

彼の理論では、この蚊に注入した遺伝子を持つ人間が刺されると、

アナフィラキシーショックを起こすのだ。

そして、その蚊に卵を卵を産ませると、3ヶ月後には数百匹の殺人蚊となる。



「国は、おまえを許したが、俺は許せない。

天はどうかな」


彼は写真タテを手に取った。

彼女を見つめる。


彼は彼女が好きだった。

そして、彼女もだった。

同じ大学に行って、将来・・・


でも叶わなかった。

彼が嫌いになったわけではない。

彼女の裏切りでも、もちろんない。


でも、彼は責任を感じていた。

「なぜ、俺はあんなことを・・・」


彼はいつも悔やんだ。

時には大声で。

大声で吐き出してしまわないと、押しつぶされそうだった。


「あの時、あんなことを言わなければ・・・」


大学の受験勉強中の息抜きのつもりだった。

夜、彼女と会いたくなった。

夜と言っても、真夏の7時、危険とは思わなかった。

でも、彼女は待ち合わせの公園には来なかった。

そして、二度と彼女とは会えなかった。

棺の中の彼女さえも。

暴行された彼女の棺は閉ざされたままだった。


犯人は15歳の少年。

暴行し、ナイフで何度も刺し、さらに首を絞めた。

逮捕された少年はお決まりのように国と人権を擁護する弁護士に守られた。

そして、男は名を替え、今では先生と言われる身分だった。


「この蚊で死ななかったら、天が許したんだろう」

彼は天を見上げた。





数ヶ月後のことだった。


『原因不明死、アナフィラキシーショックか』


彼は新聞の見出しを読み微笑んだ。


「やはり、天は許してなかった」


新聞だけでなく、テレビのワイドショーも一斉に取り上げ、大パニックとなった。

死んだ男は先生と呼ばれる身分だったが、そこまでの有名人ではない。

だが、死んだ人数がパニックをよんだ。

一家5人。

3人の子供と男の母親を含む。

近隣に広がる恐れがあるため、パニックとなったのだ。

しかし、男の妻は無事だった。



「やはり不完全だったな」


彼は保冷庫を開け、ビニール袋を取り上げた。

中にハンカチが入っている。

彼女の事件があって数年後、彼女の両親から渡されたものだった。

彼女の両親はようやく彼女の日記を読めるようになり、

彼のことを知ったからだった。

数年が経ち、ハンカチについて血のDNAは劣化していたのだった。


彼はもう一度新聞を取り上げた。

そして、ニヤリとした。

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