7 目的
「まずは現状を理解するため、目的をはっきりさせましょう」
その提案にカノンは頷いた。
「わかった。まずはレンを探し出したい」
「ですわね。それに加えて、もう一つ並行して対処しなければならないことがありますわ。それは、霧を止めることです」
「……やっぱり止める方法はあるわけね」
「ええ。先に霧に入ったレコーダーの方々はそこを優先しているはずです。『赤い霧』を止めなければ、山だけではなく、ボイッシュ村全体にまで被害が拡大してしまいます」
「この霧は、やっぱり増え続けてんのね」
舌打ちが虚しく辺りに響いた。
「……止める方法は、発生源の特定。そして澱みと呼ばれる混濁した特異点を見つけ、それを霧散、昇華させることです。……わたくしならば、できるはずです」
声色にいつもの自尊心の塊が乗っていなかった。緊張からか、手が震えても見える。
「……なに? 自信ないの?」
「あ、あなたね! カルマの昇華がどれほど難しいのかわかっていませんでしょう!?」
「大丈夫でしょ。あれだけ誇らしげに自分のことを信じられたんだから。頼らせてもらうよ」
「なにを勝手な……」
「うん、まあ。あとさっきはほんとごめん」
「はい?」
「いやまあ、学者と一緒にこの村で悪さしようとしたのかと疑ったじゃん」
「……ああ。ええ、もういいですわ」
「そりゃ助かる」
「いまはまず、事態の打開です。その件についてはあとで後ほどたっぷりと念入りに愚痴らせていただきます」
「……へい」
大いに気にしている様子をみて、少しだけ平常心を取り戻せたように感じた。
「わたくしの想像ではありますが、レンくんはおそらく巫女の木を探して、赤い霧の中に入っていったみて間違いないと思います」
「うん。それには同意」
「そして、どういうわけか同時刻にカルマが発生……。偶然にしては出来すぎていますが、それについてはいまは考えません。兎に角、森を安全に戻すことでレンくんを助け出せると考えます」
「……なるほど」
「発生源であるカルマがある場所には、具体的な事例がいくつかあります。……確か、獣の腐敗臭。植物が枯れる、または異常発生、果物が熟しすぎたりする影響もあるみたいですわね」
「腐敗臭に、植物の枯れか、ちょっと記憶にない――――果物?」
「ええ。なにか心当たりが?」
「季節外れの実がなってて、しかも熟しすぎててマズイ場所があった!」
「そこですわ! いや、そこかはわかりませんが兎に角そこに行きますわよ!」
「『禁断の森』からは離れるけど―――」
「そちらには優秀な学者の方々がたくさん行っているはずです! なのに未だに事態の収束ができていないとなると、探索地域が間違っている可能性がありますわ!」
「りょーかい! じゃあちょっとついてきて!」