22 女社長、飛鳥の場合
メールを開くと、星空だった。
……いや画像添付とかいう話でなくて、メールをポチッとクリックしたらパソコンから光が溢れて空間転移とかそんな具合である。それが、7年前の出来事。
小学生のころ、魔法少女が好きだった。
同級生たちにそれを話したときのことは何故だかよく覚えている。くだらないことだけ妙に強烈に脳裏に焼き付く現象に名前があるのなら、多分それだ。
否定的な言葉はなかった。
けれどその裏には蔑みのような感情が見え隠れしていることがよく理解できた。人の感情の表から裏を想像することは子どものころから得意だったからだろう。嘘ばかりつく大人たちに囲まれて育ったことが偏屈な才能を開花させたのは幸か不幸か、自分で選ぶなら不幸だろうし、他人からすれば幸運と呼ぶのかもしれない。
ともあれ、そんな幼少時代の記憶を胸に、卒業し、中学生となった。
いつのまにか興味が魔法少女からCGやプログラミングに傾倒していったことは摩訶不思議であると思うところだが、やはりアニメや漫画が好きだったことが重要に思える。
そんな趣味を持ちながら生活していたときのことである。
ある日、一通のメールが届いた。わけのわからない文字の羅列である。ウイルスらしいファイルはなかった。
ひらがな、カタカナ、英数字、一部に単語が混じり、あとは意味不明な記号の羅列だ。それが暗号であると見抜けたのは、やはりウソを見破る才能のせいだったのではないかと思う。うん、それだけ見ればやはり幸運だと思われそうだ。
そして暗号は一週間をかけて無事に解読、かくして意味不明な言葉の羅列はひとつの文となっていた。
―――貴方の力をお借りしたい。
時間をかけて解いた謎がこれである。つまんねえなクソ文かよと舌打ちをしたものだ。
苛立ちの感情はそのまま返信文章に同化し、それを送った。念のため、捨てアカウントを作り、公共のパソコンを活用しての連絡だった。面倒なウイルスもしくはそれに準じるものなら嫌だったので。
帰宅して服をベッドに放り投げ下着姿でパソコンをつけ、メールを確認。私用パソコンへ例の返信が届いていた。
はて、あたしはこのパソコンからは連絡を送り返しちゃいないはずだが。。
念のためウイルスを警戒してあらかたの準備、対策を終えてそれを開いた。
ウイルスメールなら、君がくたばるまで殴るのを止めない。
そんな意気込み強気で開いたメール文にはこう書いてあった。
―――貴方の助力に感謝する。
いやアタシ、人に頼み事したいならまず面見せろって送ったんだけどね?
突っ込みを頭に描いた瞬間、パソコンからは眩い光が溢れ、アタシの身体は飛ばされた。
そしてその光景に至る。
目を開けて、唖然とした。
我が愛しの室内は消え失せ、いつのまにか立っていたのは星空が輝く荒れ果てた大地だった。
いや昼だったし。
まず、自ら正気を疑った。まさか幻覚症状のある『おクスリ』でもキメてしまったのではないか。うん、ない。健康そのもののはずである。
どっと溢れ出た冷や汗からも知覚できるように夢でもない。さてこのあとどうなるものかと背筋を寒くさせていると後ろから唐突に声をかけられて振り向いたのだ。
そしてそこには、大きな、とてつもなく大きな木がひとつだけ、空高くそびえ立っていたのであった。
それが社長、飛鳥が異世界とリンクした最初の出来事、出会いである。




