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SF少し不思議な異世界ファンタジー  作者: 有栖
ボイッシュ村の天災
22/28

19 居合の勝負


『これが最後、そのくらいの気でいけよ』

「……りょーかい」


 

 黒人形の言葉を受けて、自らケイロン・カルマの下へと近づいていく。

 一度目の如意棒での攻撃により吹き飛ばされた化物は、体表がボロボロと崩れ落ちてはいるものの、いまだ原型を留めていた。

 大槍も健在、いつのまにか弓はなくなっているようだが、確かに二度目の攻撃が当たれば、倒せるかもしれない。

 ただし、この武器にも制限があるらしい。


 曰く、5分以内。

 そして、倒せるのはカルマによって形作られたものに限る。


 仕組みはわからないが、そのような感じ。

 加えて言うなら、こちらの体力的にいってあと5分も戦ってなどいられない。


 だからこそ、次が勝負の最終局面。


 




 声がするわけではない。目線が合うわけでもない。

 けれどなんとなく、ケイロン・カルマがこちらと相対しているように感じた。視線が合っているように思えた。

 

 馬の両足が戦いに備えてのためか、足踏みをしている。

 人の両腕が状態を確かめるように、動いている。

 


 体の向きがお互いを捉える。

 場所は拓けた森の空間。お互いの獲物は充分に、存分に扱える。



 そして、勝機が見えた。


 

 ドンッ!! と。



 ケイロン・カルマが大地を蹴り、前へ。同時にカノンの足も大地を蹴った。

 

 足の速度は馬の足を持つカルマに軍配があがる。その突進そのものが、命を奪う武器である。

 突進速度を下げぬまま、大槍が横に構えられ、振り抜く体勢を取ろうとした。


 その隙、ケイロン・カルマの上体が腕を構えた一瞬、足の速度が一瞬のみ落ちた。




 ―――ここだ。ここに、全力を賭ける。元より、そのつもり。



 大槍は横に振られる、直線に、まっすぐ来ることはない。

 その死角へと踏み込めば。


 身体のアルマを出し切るつもりで、右足で飛んだ。

 その刹那のみ、カノンの速度が上回る。


 大槍が届くよりも先に、一歩先に、懐へと潜り込む。

 そして、


「はあッ!!!」


 胴体へ、横一線に叩き込んだ。




 武士による、居合の仕合。


 まるでそのようなものかと、黒人形はひとり思った。

 

 胴体に打ち込まれた如意棒による傷跡から、青白い光が赤黒いケイロン・カルマの中へと浸透していく。


 亀裂からは白く輝く光が溢れ、光の靄がケイロン・カルマの全身を包む。


 しゅううううう、と。湯気がでるような音を奏でて、その全身が森の空気へと薄れて消えた。


 ころん、と。ケイロン・カルマのコアが大地に落ちる。


 その瞬間、安堵からくる急激な疲れに、カノンは膝から崩れ落ちた。




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