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SF少し不思議な異世界ファンタジー  作者: 有栖
ボイッシュ村の天災
21/28

18 神様ですか?

 


 およそ数分前のこと。




『……おい、おーい。……聞こえてねえのかな? もしもーし!』


 祠の前で立ち上がったカノンの耳に、そんな声が届いた。


「……え?」


 人の声、助け!?

 慌てて振り向くが誰もいない。周囲にも人影はない。けれど確かに聞こえた。


 ―――幻聴?


『聞こえねえのかオラアッ!!』


 ―――怒鳴られた。


「うひっ!?」


 驚きに年相応な少女の声を上げてしまう。

 恐る恐ると声のした方へと顔を向けていく。


 気のせいでなければ、確か『祠の方』から聞こえたような……?


『ああ、ようやく気づいてくれた!』


 祠からだった。

 けれど声の発生源がわからない。

 祠は石造りであり、木の札が祀られている。

 そこに生物らしき陰はなく、ましてや人の姿など―――木の札? 少しだけ、光っている? というかこれ。


「……これ」


 手に取って、確かめてみる。

 

森に来た際にはいつも通っていた、何が祀られているのかも知らない祠。

危ないときにはここへ、と祖父から常々言われていた場所。

 その祠に祀らている木の札は『∀』という記号らしきものが描かれた―――。



「―――木符……?」



『おお、大正解』

「おわっっ!?」


 木符から声がした。慌てて落としそうになる。


『うわ、アブねえな! 揺らしたら視界グラグラするからマジやめて! 話をしてる時間が無駄だからな、とりあえず木の札をライブラにインストールしな!』


「……いんすと?」


 聞きなれない言葉に首をかしげる。

 というか、こんな問答をしている暇は―――。


『あー専門用語は通じないのか。とりあえずライブラに嵌め込みな。そうすりゃ、あの子を助けられる力を貸してやる』


 力を貸してくれると言った。

 祠に祀られているモノが。


「―――か」


『ん?』


「神様、なの?」

『神様、じゃあないな』

「じゃあ悪魔?」

『いや悪魔じゃねえよ。まあ理解できなくても兎に角、やることは一緒だろ? 早く腕輪のライブラに嵌めな』


 『なにか』はわからない。

 それでも、『なにか』にすがらなければ、なにもできない。


 言われるがまま、木符をライブラに嵌め込んだ。

 腕輪から光が発せられ、


『いよっと。これでとりあえず視覚の保護は完璧だな』

「…………」


 腕輪に嵌めた木符から、小さい、黒い人影がにょっきり生えた。

 顔もない。謎の黒人形。


 あまりの謎の現象に言葉を失う。



『おいおいおい。時間ないっつってんだろ! さっきのあの子を助けたいんならはよ状況理解しろ! とりあえず俺は神様ってことでいいから! 力を貸してやるっつってんでしょう!?』


 黒人形がまくし立てる。


「あ…、え、はい! セシリアを、追われてて! 助けたくて!」


 言葉の整理がつかない。


『あーわかってる。見てたから。最初に拘束したあたりからだけどな。ほんの少し待ってろ。えー、使えそうなコードは……、あー、時間ねえな。兎に角あるものを利用できる形で、……コイツだな!』


 『クリエイション、開始』 と、黒人形から別の声が聞こえた気がした。

 そして、黒人形の両手が高々とあげられる。


 そこから青白い光の粒子、アルマが集まり、物質となり、形を作る。

 黒人形の両手から、カノンの背丈ほどの長さで、円柱形で黒い棒が生まれた。


『伸びないけどな、如意棒だ。そいつをカルマの胴体に二回ぶち当てろ。それで必ず勝たせてやる。とにかくそいつを持って追いかけろ! 身体が痛いのは根性でなんとかしろ!    助けたいんだろっ!!』


「……うん!」

 

 神の根性論に言われるがまま、『如意棒』を受け取り走り出す。


 幸いにも、頭は打っていない。

 誰かの声がするだけで、少しだけ、体の痛みは和らいでいた。


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