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SF少し不思議な異世界ファンタジー  作者: 有栖
ボイッシュ村の天災
18/28

15 副作用その2



 漲っている。カノンは思った。


 漲っている。セシリアも感じた。



 ケイロン・カルマの体に亀裂が走る。

 亀裂は頭上から首、胴、人の体から馬の体へと走り抜け、あと一息の力を込めれば全て叩き割れるという感触さえ覚えた。


 自らの体に、溢れんばかりの力が漲る。


 セシリアは考える。

 熟練のレコーダーが数人がかりでなければならないとされるカルマの討伐。それを可能にする、この『力』はなんなのだろうか?

 友情? 努力? 天賦の才?



 セシリアが初陣でなければ、思い出せたかも知れない。

 カノンが落ち着いていれば、気づけたかも知れない。



 これが、副作用の『力』だと。



 

 ―――――パキンッ!




 亀裂の走る音がカノンの耳に届く。

 だが、カルマ・コアが割れた音ではない。

 自身の木符。『波』の木符が割れる音であった。

 木符は割れ、腕輪から落ちる。 



「え?」



 声を出した瞬間、力が抜けたような気がした。

 確かに当てていた右手の手刀、その接触がずるりと落ちていく。

 全身は脱力し、そのまま地面へ落下する。



 セシリアの木符もまた、亀裂が走る。

 その瞬間、この『力』の正体を思い出した。


 『初期変動』


 初期変動と呼ばれる副作用。


 不安定な巫女の木を正常化させた際に起こる現象。巫女の木は正常化された際、周囲の無造作に漂うアルマを一定、均一に保つため、膨大なアルマをまとめて拡散させる。

 その現象を初期変動と呼んでいる。

 その副作用は、アルマによる効力の過剰な増大と、その弊害による木符の自壊であった。

 木符に集まるアルマが上限を超えて暴走状態となり、一時的に爆発的な効力を発揮したのち、すぐさま自壊するという仕組みである。


 どこかにある巫女の木を、レコーダーたちが正常化させたのだ。その効力が運が悪くも作用したのだ。




 ――――通りで、災害とまで言われるこの化物相手に善戦できたわけですか。『わたくし』がもっと優秀であれば。あるいは気づけたのでしょうか。




 亀裂が入った木符からアルマの力が抜けていく。

 輝いていたアルマの光が消えていく。


 五芒星の拘束力が失われていくのを、握り締めた命綱がするりと抜けるようだとセシリアは感じた。


 だが、ケジメはつけなければならない。


 ―――失敗のケジメは、わたくしが払わなければ。

 

 セシリアが唇を噛み拳を握り締めたとき、カノンは地面に直撃していた。



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