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SF少し不思議な異世界ファンタジー  作者: 有栖
ボイッシュ村の天災
15/28

12 副作用その1

 ―――ときが止まる。


 死に際の当人でもあるまいに、走馬灯が走り抜ける。

 

 今日の出来事。

 昨日の出来事。

 それと、思い出の出来事。

 

 目の前で刻が止まったかのようだ。

 ケイロン・カルマの弓から放たれた矢は、さきほどまで振り回されていた槍であった。あの大槍が、空中で止まっているような。



 ―――否。止まっている。


 ビュゥゥゥーッ! と。

 無音だった景色に荒れ狂う風の音が生まれる。わけではなく、止まっていた思考がたたき起こされて、聴覚機能が戻ってきたのであった。


 ケイロン・カルマから放たれた大槍は結界による防壁に遮られ、セシリアへ直撃する間際で止まっていた。


「万象なしえる根源たる力、天かける橋、光差す道となれ――――ディスコードッ!!」


 防壁の役目を果たしていた結界周囲の風が、詠唱の終わりとともに東方へと爆風を帯びて吹き飛ぶ。

 目の前で天災レベルの自然現象が発生し動揺が体全体に広がる。

 刹那、爆風が目の前を横切った。


「どぅわっ!!!???」


 木がめくれるんじゃあるまいかと思えるほど凄まじい爆風に、ケイロン・カルマから放たれた大槍も押し返され―――。


「消え―――!?」


 輝く風が大槍の表層に触れた途端、藻屑のように散り飛んだ。


 なにがなにやらどうなってるやら。

 呆然としたまま座りこけていると、いつのまにか走り来ていたセシリアに腕を掴まれ起こされた。


「一旦、逃げますわよっ!」

「うえっ!? あ、わ、了解!」


 いまのままでは埓があかないので流されるまま付いていく。

 その背中を、ケイロン・カルマが静かに凝視していた。




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