12 副作用その1
―――刻が止まる。
死に際の当人でもあるまいに、走馬灯が走り抜ける。
今日の出来事。
昨日の出来事。
それと、思い出の出来事。
目の前で刻が止まったかのようだ。
ケイロン・カルマの弓から放たれた矢は、さきほどまで振り回されていた槍であった。あの大槍が、空中で止まっているような。
―――否。止まっている。
ビュゥゥゥーッ! と。
無音だった景色に荒れ狂う風の音が生まれる。わけではなく、止まっていた思考がたたき起こされて、聴覚機能が戻ってきたのであった。
ケイロン・カルマから放たれた大槍は結界による防壁に遮られ、セシリアへ直撃する間際で止まっていた。
「万象なしえる根源たる力、天かける橋、光差す道となれ――――ディスコードッ!!」
防壁の役目を果たしていた結界周囲の風が、詠唱の終わりとともに東方へと爆風を帯びて吹き飛ぶ。
目の前で天災レベルの自然現象が発生し動揺が体全体に広がる。
刹那、爆風が目の前を横切った。
「どぅわっ!!!???」
木がめくれるんじゃあるまいかと思えるほど凄まじい爆風に、ケイロン・カルマから放たれた大槍も押し返され―――。
「消え―――!?」
輝く風が大槍の表層に触れた途端、藻屑のように散り飛んだ。
なにがなにやらどうなってるやら。
呆然としたまま座りこけていると、いつのまにか走り来ていたセシリアに腕を掴まれ起こされた。
「一旦、逃げますわよっ!」
「うえっ!? あ、わ、了解!」
いまのままでは埓があかないので流されるまま付いていく。
その背中を、ケイロン・カルマが静かに凝視していた。




