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SF少し不思議な異世界ファンタジー  作者: 有栖
ボイッシュ村の天災
13/28

10 戦闘開始


 ケイロン・カルマに意思があるのかはわからない、らしい。ただ、一点に留まってくれるわけではもちろんない。

 話し合いをしている間も時間が止まったように微動だにしなかった巨体が、唐突に動き出した。それが作戦開始の合図でもある。


「狙いを定めて、撃つ……!」


 横に構えた弓で、ぎりぎりと弦をひき、矢を放った。

 矢は森のなかを一瞬で切り裂き、ケイロン・コアの頭に直撃した。


 ―――――クマ退治用の弓、これでぶっ壊せれば。


 カン、という音を奏で、矢は落ちた。矢が折れていた。心も折れそう。


「……大型の狩猟用だぞ? ヒビくらい入れよ……」


 想像以上の硬度に恐々とした気持ちを抱きながら次の弓に手をかける。目線を離した直後、耳に届いた大地を蹴り飛ばすような音に慌てて視点を戻すとすぐそばまでケイロン・カルマが差し迫っていた。


「うっへ! はやすぎ!」


 距離にして30メートルはあったものが一瞬で詰め寄られた。こりゃ森の獣じゃ瞬殺されるわ。という感傷を心の隅へと追いやり、立っていた大木の枝から枝へと飛び移った。





 ズシャア、と大木がなぎ倒される音を合図に、セシリアは浄化作業を開始する。


「任せましたわよ!」

 

 森で木が倒れ鳥が叫びをあげて飛び立つなかに「はやくして!」という悲鳴が聞こえた気がした。


―――――言われずとも!

 

 ひとつ息をはいて、呼吸を整える。


 カノンに渡したものとは違う白い杖のライブラを右手に持ち、左手に持つ木符をはめ込んだ。


 ―――――起動の確認。


 木符に一瞬の光が灯り、正常動作を確認する。あとは、荒れ狂うカルマのなかでアルマを呼び込み、カルマの澱みを消し飛ばせば成功だ。

 言葉にすれば簡単なことだが、行動にすればそれは長い努力と修練の成果である。


 ―――――努力の成果。実らせましょう!


 誰にも見られない状況で、自らの才を証明する戦いを始めた。


「―――――コード、四門結界、風陣。北は閉じ、西を閉じ、南に閉じて、東へ至る」


 すでに地面へ設置しておいた四つの木符のうち、三つに光が灯る。

 セシリアの詠唱が始まると、周囲の風が動き出していた。赤い霧は渦のように巻き上がり、作られた空洞のような空間にはセシリアを中心に結界術式が発動していた。


「荒ぶる風は四門の外へ、輝く風は四門の内へ。其は大いなる風の導き、空の彼方に架ける橋なり」


 セシリアを中心とした結界は菱形をしており、視線は東を向いている。そしてその先にいたのはケイロン・カルマである。目のないその顔が、こちらをひと睨みしたような悪寒を覚えた。


 ―――――くる。でも、怖くない。


 頬を伝う汗が落ちる間もなく、ケイロン・カルマはまっすぐにセシリアへと矛先を向ける。その足が力任せに大地を蹴り上げた瞬間、横から突然現れたカノンの足裏が、ケイロン・カルマの足を砕いた。


「無視してんじゃないよ。デカブツが」


 詠唱を止めるわけにはいかない。代わりに、心の中で感謝を込めた。


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