9 救出と遭遇
「いたぞ!」
学者のひとりが声をあげた。
カルマに汚染された『禁断の森』のなか、彼らは辺りの浄化を図りながら探し回っていた。
そうして無事に見つかったのは、レンである。
「容態は?」
「衰弱してる。が、なにかに襲われた形跡はない。おそらくカルマに当てられて意識を失ったんだろ。村に担いで戻るより、いますぐこのあたりのカルマを鎮めたほうがこの子の命は助かるはずだ」
「……わかった。だがこの分だとカルマの発生源、コアは別の場所にいるってことになる。……よし。ここは二手に別れよう。ここはお前たちに任せて、俺たちはコアを探しに行く。村人が被害にあってないといいが…………」
「…………最悪ですわ」
「…………見るからにやばそうだけど、あれ、やっぱ相当マズイ奴なんだね」
茂みに潜むふたりの視線のさきに、コアはいた。
「カルマのコア。しかも形がすでに成りきっている、ケイロン・カルマですわね。もともとは巫女の木が持つ防衛機能のひとつ、擬態化による防衛機能ですが、カルマの影響で最悪の事態になっていますわ。あれはカルマ、赤い霧を撒き散らすだけでなく、防衛どころか攻撃してきますわよ」
「うん。まあ、あの槍みたらわかるよ」
カノンの視線の先にはケイロン・カルマの胴体、人の身体を模している水晶に向いている。その手には指先はなく、槍の形を模した水晶が赤黒く光り、その上を滴るように獣の毛と肉、そして血がこべりついていた。
「『私』はアルマとか巫女の木とか詳しくないんだけどさ、都の人達はこんなやばい代物を使ってるわけ?」
「……本来、カルマと赤い霧なんて天災レベル以下の出現率ですわ。用法用量を守ればアルマが変色することなどありませんし」
「まあその話はあとで聞かせてもらうとして、あれ、止めるんだよね」
「ですわね」
「……どうすんの。クマとか楽勝で殺してそうだけど」
「……どうしましょう」
親指を噛みながら悩む姿が赤子のようだが、事態が最悪なためにそんな軽口を叩く暇もありゃしない。
「木符をつかって倒したりとかできないの?」
無知な人間として、殴って解決できないかという訴えを起こしてみた。身体を鍛えるとどうも思考の回転率が下がるらしい。
「木符、といいますか。戦木符と呼ばれる護身用のものであれば可能性はありますが、そもそもカルマの満ちているこの条件下では木符を使うために周囲の浄化から始めなくてはいけませんわ。それにわたくしの手持ちで戦木符は持ち合わせていませんし」
「……昨日貰った木符、あれは戦木符だよね?」
確信を持っての質問であったが、返答は来なかった。代わりに、無言の空気が答えになる。
「危ない目に合わせられないとか馬鹿みたいなこと考えてないよね?」
「……危険ですわよ」
「そもそもこれはこの土地の問題。そっちこそ部外者なんだから危険に首つっこまなくてもいいじゃん」
「……いいえ。わたくしはやります。わかりました。では、作戦を考えましたわ。…………付いてこれますの?」
「作戦によるね。聞かせてもらおうじゃないの」




