第05話 タオル越しのたわわ
小さい頃、俺となつめはよく同じ風呂に入っていた。
なつめの両親と、俺の両親の仲が良かったため、なつめはいつも俺の隣にいた。
小学生になると、俺はなつめ以外の友達とも遊んでいた。
高学年になるにつれ、なつめと俺は遊ばなくなり、風呂にも入らなくなった。
気がついた時には、他人のような関係になってしまった。
中学の時に隣の席同士にならなければ、俺はなつめと話すことはなかっただろう。
学校には行くものの、授業はサボる劣等生。
そんな俺を更生させたのは、なつめ以外の誰でもない。
今の俺がいるのは、なつめのおかげだ。
気がつくと、湯船が真っ赤に染まっていたが、それに対し、なつめの顔は真っ青に染まっていた。
涙ぐむなつめに揺さぶられ、俺は意識を取り戻したようだ。
「大丈夫? 死んでない?」
「あぁ、落ち着け、頭を揺さぶらないでくれ。 どうやら、1回は死んだらしいが、なつめのおかげで蘇生したみたいだな」
「馬鹿! もうっ」
なつめは涙を流しながら俺に抱きついてきた。
胸がタオル越しに当たり、俺は………。
バタン。
ハハッ、ネズミが手を振ってるぞ。
また、倒れたのであった。