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七話

蓮は自室にて冷茶を飲みながら考え込んだ。五十鈴と銀苓は既に控えの間に行っていていない。さてどうしたものかと思考を巡らせる。

目を閉じてふうと息をつく。翠蘭も裟浬たちも自分たちで調べてみると請け合ってくれた。蓮は自分にできる事をやるしかないと結論を出したのだった。



あれから、三日が経ち、蓮はまた翠蘭の執務室に来ていた。自身の千里眼で調べた事を報告するためだ。

「兄上。白來国の王妃についてですが。あの方は我が蘇芳国の重臣と繋がっているようです。重臣はたぶん、裟浬様と同じくらいの偉い方かと」

「そうか。名はわかるか?」

「…朱晞(しゅき)様です」

蓮が小さな声で言うが翠蘭は聞き取ったらしい。顔をしかめて考え込む仕草を取る。

「朱晞か。あやつは裟浬と敵対しているからな。ちなみに朱晞は宰相ではないが中書省の長官だ」

翠蘭の言葉に蓮はなるほどと頷いた。兄の手元にある書類に視線を移した。

「兄上。朱晞様にお会いできませんか?」

「朱晞にか。あやつはなかなかの女好きだそ。やめておけ」

即座に却下されてしまった。蓮は仕方ないと諦めて他の事を話す事にする。

「白來国に私が行こうかとも考えています。何でしたら皇太子妃として潜入しようかとも思うのですが」

その言葉を聞いた翠蘭は椅子をがたりと倒して立ち上がる。表情は険しいものになっていた。

「なっ。皇太子妃として潜入するだと?!」

「え。その方がよいのではありませんか?」

「…蓮。それはあまりにも危険だ。妃として潜入できても千里眼を使えなくなったらどうする?」

痛い所を突かれて蓮は黙り込んだ。白來国内には千里眼が使えないような結界が張り巡らされている。そんな中に一人で乗り込んだとしても無謀にも程があると翠蘭は言いたいのだと蓮は気がついた。

「ふう。わかりました。でしたら、諜報員として優秀な者を潜入させた方が早いですよね」

「まあ、そういうことだ。蓮には引き続き千里眼で調べてもらう」

「わかりました」

蓮は頷くと執務机の前に置かれた椅子から立ち上がる。翠蘭は自分で倒してしまった椅子を直すと蓮に微笑んだ。

「まあ、蓮の千里眼のおかげで色々とわかった事も多い。今日はもう休みなさい」

「はい。では失礼します」

蓮は立礼をすると執務室を出たのだった。


蓮が自室に戻ったのを確認すると翠蘭は睦月を呼んだ。

「睦月。いるんだろう。出てこい」

ひらりと睦月が壁から現れた。

「お呼びでしょうか。陛下」

「蓮との話を聞いていただろう。白來国の皇太子を蘇芳国に招こうと思う。第二王子もな」

「佐用ですか。でしたら裟浬様にもお知らせいたします」

「ああ、そうしてくれ」

翠蘭が頷くと睦月はまた音もなく姿を消した。転移術を使ったらしい。翠蘭は妹に見せていた優しげな兄の顔から冷たく厳格な君主の表情に変わる。椅子から立ち上がると窓から見える空を見上げた。雷雲が来ているためか外は薄暗い。それを見つめながら白來国の皇太子と第二王子をどうしたものかと思案を巡らせたのだった。

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