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守隠し  作者: スタンドライト
秘密
25/30

4・2

『拝啓物部昼夜君へ。お元気にしてますか? ちなみに私は元気じゃないです。何故なら既に死んでいるから。きっとこの手紙が届くのは私が死んでから二日、或いは三日経った位だろうからきっと物部君も私の死と言う衝撃的かつ悲劇的な事実から少しばかり立ち直っているんじゃないかと思ってるんだけど、実際はそうでもないのかなって、そう思いながら私の思いを綴っています。

多分きっと今の物部君に降りかかっているのは私が死んだ事による迷惑位で、そこに悲しみを抱いている余地なんかない位に頭が一杯なんだろうなって、そう考えています。

物部君は昔っから八方美人の素養が強かったせいか結構他人の事にドライな所があったもんね。私はそれを痛いほど強く実感したてし、それが今回の件の引き金になっている事は分かっているんだけど、だからこそ守隠し計画だなんて馬鹿げた事を実行しようとしたんだって事を物部君には知ってもらいたかったからこの手紙を書きました。

前置きが少し長かったかな?

多分死者からの手紙に驚いてるんだろうけどもうしばらく、きっと驚きの連続になるだろうこの手紙を途中で破り捨てずに読んでもらえるよう私も精一杯書くんで、物部君も精一杯の覚悟を以って手紙を全部読んでください。

全て話します。

私が守隠しを行った本当の理由。博士との契約、ヤヨイちゃんの狙い(これは推測にすぎないけど)

だから途中で読むのをやめたりしないでください。私の想いが詰まったこの手紙を読ませる事で、私が思い描いた計画は全て終了するんです。もし途中でこの手紙を読む事を放棄したくなったら去年の七月、私に終業式直後に声をかけられた時の事を思い出して下さい。

あの時ホントだったら私の事を無視してくれてもよかった物部君が、私の言葉に耳を傾け足を止めたあの時の気持ちを思い出して下さい。辛く、読むに堪えない長い駄文の羅列になってしまうけど、お付き合いお願いします。これが最後の私のわがままです。よろしくお願いします。

 さて、改行も終えた事だし本題に入ろうかな。この一文を読んでくれる事を期待しながら綴る私の言葉に目を通してくれてありがとう。だから私も精一杯の気持ちで物部君の期待にこたえたいと思います。

まず最初に、私が守隠しだなんて言葉を思いついてそれを実行に移しだそうと思った経緯を書くのが先決で物事の筋だと思うんだけど、それは一度脇に置いておいて違う話しをしたいと思います。それは博士とヤヨイちゃんにまつわるある種ギブアンドテイク的な関係のお話し。

占いの館、マエストロ桂子の所でヤヨイちゃんに出会った事、物部君は覚えている? あの時物部君は占い師のおばあちゃんから随分ショッキングな事を言われていたから中々話しが頭に入ってこなかったんだと思うけど、三人でファミレスに入ってヤヨイちゃんと話しをしている時、私は思ったんだ。

この子復讐をしようとしてるって。

勿論復讐の相手なんて自分の子供を孕ました相手に決まってるよね? 人生の青春ポイントである女子高生期を身重で過ごさせる原因を作った張本人に対して腹が立たない訳がないもん。もちろんヤヨイちゃんの尻がるな所が災いしているっていうのは最もな話しだと思う。だけどそれ以上に避妊具の使用に関してその有無を強要させない事が出来る男性にノーと言われたら、よっぽど強い女性じゃない限りその意思を貫く事なんてできないと思う。

ヤヨイちゃんが弱い女性だとは思わない?

それは違うよ物部君。ヤヨイちゃんは普通の女の子で、言ってみれば真面目過ぎる女の子なんだ。真面目っていうのは人が生きて行く上で、社会性を営んでいく上でとても重要な要素だけど、なにか深刻な問題が起きた時その要素は何事よりも代替のする事ができない弱点になるんだよ。ヤヨイちゃんは言ってみれば最大の弱点で自分を武装した歩く核爆弾見たいな子なの。

ちょっと説教じみちゃったかな? ごめんごめん。でも分かってほしいのは自分を孕ませた相手を特定する為に占いの館を訪れたヤヨイちゃんがマエストロ桂子の言葉によってその相手が誰だかを確信したと言う事。そしてその相手に対して復讐的な、決意を固めていた事。この事を忘れないでほしいの。だけどその前に言っておかなくちゃいけないのがこのままだとヤヨイちゃんがただの核爆弾少女どころかただの逆恨み少女になっちゃうって事。

だって普通にそうでしょ? この場合男から見たらセックスなんてお互いの合意の上に成り立っているんだから男ばかりに責任を押し付けても仕方がない事だろうって、そう思っちゃうかもしれない。特に他人に対してドライな物部君ならなおさらだと思う。だから予め言っておく。

物部君も知ってはいると思うけど、ヤヨイちゃんはあの時既に子供を宿してはいなかった。

つまり流産した状態にあったって言う事。そしてここで現れてくるのが彼女の真面目さ、いや生真面目さなのかな。

小学校時代ヤヨイちゃんが嫌われていた理由が、彼女を中学へと進学させても形をひそめる事はなかった。いや、形はひそめていたのかもしれない。でもだからこそ目に見えない所でその性質が病的なまでに大きくなって自制すら聞かせない程に暴走を始めたのかもしれない。

これは私が既に本人に聞いて確認した事なんだけど、ヤヨイちゃんは私の質問にこう答えてくれたの。

『私があなたの計画に協力する理由は、私を孕ましその後その事実を知った彼が自らの手によって胎内に宿った命を摘み取ったから、彼の命を終わらせる為に協力するの』

彼女は真剣な顔でそう言ったの。まるで一つも偽悪的な表情一つせず、どこか冗談めかした雰囲気を出す事もなく、真っ直ぐ私目がけて言って来た。

その彼とヤヨイちゃんの間で何が行われていたのかは定かじゃないけど、でも確かなのはヤヨイちゃんがその彼から暴力を受けていた事。そしてその暴力によってお腹に宿していた子の命を終わらせてしまった事。

残念だけどそれ以上私がこの問題に踏み込む事は出来なかった。後はそれらの情報を元に類推してそれを相手に、つまりヤヨイちゃんの彼に確認するほかなかった。

もう分かるよね? ヤヨイちゃんの相手が誰なのか。

小空卓都。通称博士。

まあ通称なんて言ってももう博士なんて呼んでるのは私だけなんだろうけど、彼がヤヨイちゃんの彼氏だったの。彼女の子宮に精子を辿りつかせ卵子とその遺伝子を合一させた張本人。それが博士だった。

多分物部君的には納得がいかないと思う。何故なら一年前、博士の方からヤヨイちゃんに会いに行く為の仲介役となってくれないかって、そう言われたのは物部君だもんね。確かにそれはその通りで当たり前の発想だと思う。だけど真実は違った。

簡単なあらすじを伝えるとこう。

ヤヨイちゃんと博士は中学二年の時から付き合っていたの。お互い別の中学に通ってはいたんだけど小学校の卒業を間際に携帯電話のアドレスを交換し、お互いまめに連絡を取り合ってたみたい。ヤヨイちゃんも小学生時代はあんな性格だったから見るからに真面目そうな博士に色々と妄想に近い想いを寄せていたんだろうね。そして博士が中学で勉強について行けなくなり徐々に追い詰められていく中、彼の拠り所が勉強からヤヨイちゃんへとシフトしていったのは自然の流れだった。

一方のヤヨイちゃんは次第に大人びて来たその容姿から周囲の男達にチヤホヤされていた訳だけど、やっぱり生来持っていた気質は変化する事がなかった。いや、もしかしたらそれは隠される事によってより一層歪な形をした性質に変化してそこに存在していたのかもしれない。

周りを囲むチャラチャラした男達と自分の本心が潜在的に求めている物を持った相手との関係。

だけどヤヨイちゃんにとって唐突に得られた、自分を甘やかしてくれる環境をただで手放せる訳も無かった。

結果ヤヨイちゃんは博士を騙しながら何人もの男達と身体を重ねた。そして生まれるのは誰の子ともしれない新たな生命の芽吹きだった。

だけど当然ここで黙っていなかったのが博士だった。自分は絶対に避妊を続けていたと、彼は私の追及にそう言っていたけどその事実が実際本当なのか確かめるすべはないわ。だけど彼はそれを本気で思っていたのか、それとも自分に非が無い事を認めさせるために言った嘘なのか、正直な所分からなかったけどその言葉の結果出た答えは簡単な物だった。

お前浮気してるだろ?

ヤヨイちゃんにしてみたら図星以外の何物でもなかったんだけど、博士にしてみたらそれは青天の霹靂以外の何物でもなかった。いや、この場合は棚から牡丹餅? 或いは怒髪天を突く? まあとにかくどっちにしろ自分に非が無い事を認めさせるチャンスと同時に得た、浮気をしていたという事実が一気に博士を爆発させた。

彼は泣いて謝るヤヨイちゃんに暴力を振るった。そのお腹に宿った小さな子目がけて殴る蹴る、突き飛ばす叩きつけるの暴力行為を何回も何回も行ったの。結果的に恐怖を覚えたヤヨイちゃんが親に頼みこんで一人暮らしをさせてもらって家を出て、そして携帯電話のアドレスも変更して博士の前から姿を消した。暴力の結果子供が死んでしまった事を悔みながらね。これが高校一年生の春。つまり私達がヤヨイちゃん達に会いに行く二、三カ月前かな。

でも結局通っている学校は変える事が出来ない。

はっきり言ってヤヨイちゃんがとった行動は中途半端でしか無かったんだけど、彼女には彼女なりに彼はストーカーでも無ければ変態でもないと、そういう認識があった。だからこれで大丈夫だっていう認識があった。

だけど博士からしてみればそれは違かった。博士は自分が彼女に対してなにをしたのか、その行動に対する責任は感じていたの。だけどそこには愛があったって、問い詰めた私に対してそう言ったんだよ? その瞳にウソはなかったし、病的なまでに本気だった。だから七月の末。ひょんなことから自分を訪ねて来た物部君を利用して自分の前から消え去ったヤヨイちゃんに会いに行く口実を見つけたんだと思う。

だけど実際に会ってみて愕然とした。それは、物部君も覚えてるよね? あの中年の男性と一緒にラブホテルから出て来たヤヨイちゃんの光景を。博士の中にあったのがヤヨイちゃんへの愛なんだったとしたら、いや、愛なんて高尚な言葉は当てはまらないね。もはや一方通行となった恋心にも似た妄執と言った方がいいのかもしれない。とにかくそんな歪んだ純情さを持ち合わせた博士が彼女を見た時に思い知ったのが現実だった。

かつての自分の彼女が、中年のオヤジと援助交際をしていると知ったらそりゃ確かに凹むよね。っていうか愕然とすると思う。だからそれ以降博士はヤヨイちゃんから距離を置いた。

いくら浮気がある事を知っていたからって、援交は引くわ、ってそんな感じだったのかも。

でも一方でヤヨイちゃんにはヤヨイちゃんなりの思惑があった。ここからは私がヤヨイちゃんに確認を取った話しじゃなくなるから全て推測の域を出なくなるんだけど、あれだけ爛れた性生活を送っておきながら再び援助交際なんてしてたのは(本人にとってはあくまで援交ではないらしいけど)彼女の生真面目さがそこにあったからだと思うんだ。

ヤヨイちゃんは自分の体内に生命が誕生した事によって戸惑ってはいたけど、その性格からおろすなんて事は一度も考えた事は無かったんじゃないかな? いやむしろ最初は戸惑いもしたとは思うけどその怒りが向かった矛先は避妊をしなかった男に対してでその赤ちゃんには怒りはおろか些細な苛立ちすら覚えなかったのかもしれない。結果的に生まれてくる感情は赤ちゃんに対する慈しみで次第に生まれてくるのが堕胎や実際に生むとなった際の周囲の環境だったのかもしれない。だけどそんな中で暴力によって強制的に行われた流産に、彼女は憤りと誰にもぶつける事の出来ない苛立ちを覚えていた。

ねえ物部君。ヤヨイちゃんが前にこう言ってたのを覚えてる?

『誰が私の身体に子供を宿したのか、判明させる為に私は来たんじゃないの。私の中でその男を確定させる為に私は占いに来たの』

って、前そう言ってたよね。多分私が思うに、ヤヨイちゃん自身も父親が誰なのか、本当は分からなかったんだと思う。もちろん暴力を振るって流産の直接の原因を作った博士に対して怒りを覚えていない訳じゃ無かったとは思うんだけど、その怒りを覚える根本となった根源に対して自身の明確な認識が生まれるんであれば、そこに宿るのは暴力を振るう元彼氏による恐怖では無く、復讐に変化を遂げるんじゃないかって。

つまりヤヨイちゃんは怒りをぶつける相手が欲しかった。そしてそれが博士であれば尚良いと思ってた。

その理由を裏付ける為にあの占い師の所へと向かって、事実云々ではなく彼女の話しを聞いて確信したんだと思う。博士に、小空卓都に復讐してやろうって。

そして偶然出会った私達との会話の端々から出て来た博士の情報に、彼女は飛び乗ってきた訳。

この二人に付き合っていれば自然な形で小空卓都に接触する事が出来るってね。

確かに普通に考えれば暴力を振るわれて逃げるように姿をくらました元彼女がいきなり自分の目の前に現れるってのはおかしな話だし、警戒しない訳にもいかないもんね。

だからヤヨイちゃんの目的は博士に対する復讐で、私の守隠し計画を利用するっていうのも博士とめぐり合う為の手段でしか無かったって訳。

まあその後一向に博士が出て来ない事に業を煮やしたヤヨイちゃんが強引な手段に出たりもしたんだけど、覚えてる物部君? 

あの山中黙殺殺人事件だっけ? 随分なネーミングセンスだとは思うけど、あの時しきりにヤヨイちゃん穴掘りの難しさや人員の不足を突いてきたじゃん。

あれも博士をその場へと呼ぶ為の布石。

きっとインターネットか何かで調べたんだろうね。何とか博士を守隠しに参加させようと躍起になって、穴掘りの難易度の高さを必死に説いて強引に男手を増やそうとしたの。だけど結果的に三人だけでも作業は順調に進んだ。だからこのままじゃ不味いって、私が死んだら計画も終わりだし博士に近付くチャンスも無くなるって思ったヤヨイちゃんはある行動に出た。

物部君覚えてるよね? あの掘ったはずの穴が埋められて現場が荒らされている事件。

あれはヤヨイちゃんの自作自演だったの。いくら掘っても終わらない作業に一時計画の中止を促し時間を稼ごうと思った。だけどここで私にも一つ、ヤヨイちゃんとは別がらみで思惑があったの。

まあこれに関しては後々語る事にしまして、その思惑を成し遂げる為にはもう一人、協力者が必要だった。更に言えば私のとんでもない思惑を二つ返事で頷いてくれる協力者。まあそんな協力者なんか現実に実在する訳もないから状況と弱みをもって作りあげるしかなかった。

つまり博士、小空卓都の事なんだけどね。

結構簡単だったよ。まず私の思惑をストレートに博士に伝えて、案の定それを拒否した訳だからヤヨイちゃんの事をチラつかせて上げたの。

彼女が本気であなたの事を殺したがってるって。

まあ実際ヤヨイちゃんの復讐が博士の殺害にあるのかどうかなんて、彼女の言葉だけじゃ信憑性もないから何とでも言える訳だけど、実際それだけじゃ博士を私のいいなりにする事は出来なかった。

信憑性ないよね? いきなり元カノが命を狙ってるなんて言っても、信じられる訳がないと思う。

だけどそこに一片の後ろ暗さと、自身の失敗によるトラウマが存在していたらそれは別だった。そんなの信じられるかって、笑いながら言った博士だったけどどこか不安げな表情をしていたから私はこれは行けるって、ダメ押しをしてあげた。

博士の家は医者の名家で、随分家柄も良かったし何より中卒ニートがそれだけでプータローを続けられるなんて親の傘に被らなきゃ維持できる環境じゃ無かった。だから私は言ってあげたの。

ヤヨイちゃんとの一連の関係を、周囲にばら撒いて広めてあげるって。その暴力に関しても、流産に関しても、そもそも子供を孕ました事実に関しても、全て包み隠さず流布させてやるって、言ってあげたの。

確かに証拠なんかないだろと言われればその通りだったんだけど、私が本気になって人を貶めようとすればどこまでもその底辺を更新し続ける事が出来ると博士は踏んだんだろうね。

やっぱ持つべき物は高水準な能力だな、なんて自分の才覚の凄さに感概に耽りながら私は私の忠実なる下僕を手に入れちゃったわけ。そして当面の問題だったヤヨイちゃんの穴埋め事件の犯人を博士に仕立て上げて彼等を合流させた。

言っておくけど彼等の合流事態に私の思惑が重なってたわけじゃないよ? これはあくまで結果的な意味でしかないから深読みはしないようにね。

ああ、それと勘違いしないでほしいのがさっき、博士の事を奴隷みたいな風に言っちゃったけど、多分博士からしてみたらこの関係はギブアンドテイク的な意味合いとして捉えられてるから、そこの所は勘違いしないでね。私は念押しの意味で脅しという選択をしたまでで、博士には博士でヤヨイちゃんが一体何を考え、どう行動しているのかを私を通して知れたわけだから、ある意味お互いに利益のある関係だったんだからね。そこん所は勘違いしないでちょうだい。

えっと、話しを戻すね。

その後、つまり四人が集まった後ね。それから守隠し計画の話しがスムーズに進んだのは火を見るよりも明らかだったよね? あれは一種のヤヨイちゃんからの私へのプレゼントだったんじゃないかなって、私はそう思ってる。

ヤヨイちゃんが自分の復讐の相手が、私に気付かれている事は彼女自身知っていたみたいだったから、それで尚、まるで私が招き入れるかのように博士を引きいれた状況を知ったヤヨイちゃんが私に見せてくれたのは感謝だった。

真面目なクセに素直じゃないから、そのまんまありがとうなんて言えなかったんだろうけど、だからその代わりに穴掘り廃案からたったの数日であのプランを立ててくれたんだと思う。

実際優秀な子だよね。ちょっと本気になって考えただけで私の希望に出来るだけ沿って、なおかつその後の事まで考慮した計画を立案したんだもん。

その後のアパートの契約だの物品の調達だの、デリバリー店への時間依頼の注文だの、ほんと良い働きっぷりだったよ。きっと将来良いイベントプランナーになるんじゃないかな? 本人にその気があればの話だけど。まああれよあれよと私達がボーっとしている間にヤヨイちゃんは準備を推し進めてくれた。そして私を殺すべく仕掛けが完成したその日。

覚えてるよね物部君。

私専用の絞首台がしつらえられたその時、もうヤヨイちゃんの責任はそこで終了していた。そこからはきっと彼女の復讐の物語のスタートだったんだけど私も私で思惑があったの。

さっきもチラッと書いたと思うけど、そもそも私がヤヨイちゃんの気持ちを慮って博士を守隠しのメンバーに入れた訳じゃない事は分かってるよね? 私が博士を仲間に入れた理由は一つ。

私の忠実な僕を作る事。私の復讐を完遂させる為に、死んだ後、私の手足となって動いてくれる人。

勿論私の言う復讐が誰に向けられているのかなんてもう分かりきってるよね?

さて、ここで話しの本題に戻ろうか。とりあえずヤヨイちゃんの真の目的、博士と私の契約、彼女達の関係をここまで話してきて、今後一体それがどうなるのか私にはサッパリだしもはや知るすべもないから、この話しはもうおしまい。続きは現世を生きている物部君が直に、その目で確認してちょうだい。

あ、でも一つだけ忠告と言うか、注意しておかなきゃいけない事があるとしたら、ヤヨイちゃんをあんまりナメない方がいいよ。

あの子の生真面目さを過小評価はしない方がいい。彼女の中で確かに存在しているのは起こしてしまった責任に対する異常なまでの罪の追求性だから。それがあるからこそ博士に対する復讐なんてのも決め込んじゃったんだろうけど、まあそこらへんは物部君も似てるかな。多分物部君なら大丈夫だと思うけど、気をつけてね。

じゃあ話しを本題へと戻します。

本題へと戻すって言っても、どこから話せばいいのかちょっと分からないからとりあえず私の思惑って話しを継続して続けちゃうね。

私の思惑、目的を遂げる為に引きいれた博士が加入してからあっという間に進んだ守隠し計画。絞首台も見事完成してさあ残す所あとは死ぬだけっていう時、あの時物部君言ったよね?

四日後って。

決行を四日後にしようって、キミは言った。それが何を意味するのか、私にしてみれば頭の中で類推する事は出来るけどそれを決定づける事は出来なかった。

だけど物部君が決行までの間に時間を持たそうとするのは分かってた。

きっと彼なら逡巡するだろうって、私には確信があった。だからその期間を利用させてもらった。

利用させてもらったっていうのは私の真の目的を達成させる為の準備期間の事。つまり物部君が四日間の猶予をくれたお陰でシナリオを完璧に組む事が出来たの。

結論から言えば私は死後、その身体を本当に神隠しさせていると思うんだけど、それを実行してくれたのは博士。

多分賢い物部君なら気付いていたかもしれないけど、まあ私の口から一応報告させて。

彼がやったのは私の命令にもとずいた物だから、あんまり博士を責めないでね?

予め同系統のビデオカメラを買っておいて四日の間にそれを設置された物とすり替えておく。

そしてベランダの鍵を開けておけば簡単でしょ? 後は、まあこれは賭けに近かったんだけど死体を発見した第一発見者が、現場から離れるのを見計らって博士がベランダから侵入して私をそのまんまベランダから放り投げる。

幸いにもベランダから見えるのは人気もないただの裏山だし、それだけで神隠しは事済んだ。単純なお話しだよね。その後博士は何食わぬ顔して現場に戻る訳だから。ああ、あと博士の方から物部君が第一発見者になるよう仕向けさせたのも作戦の一つかな。物部君、きっと博士から色々な事言われたと思うけどそれも全てキミをなるべく早く現場へと向かわせ第一発見者とさせる為なの。

第一発見者がヤヨイちゃんだったらこの作戦あんまり効果無かっただろうから。

んで、何故神隠しなんかをやったのかと言うと、単純に言っちゃえば私の死体を一度物部君の目から隠す必要があったから。何故隠す必要があったのかどうかは、ごめんね。ちょっとまた話しを逸らしちゃうんだけど、一度本当の、根本に戻りたいと思います。

つまり私が守隠しを、自殺を図った理由です。そして更に言えば自殺を物部君に強要させた理由。

その本当の理由を語りたいと思います。

きっと気分悪くなる事請け合いな話しになるんだろうけど、そこはごめんなさい。ただ一言だけ言っておくと、私は一年前にウソをついていました。

昔、私は物部君の事が好きだったって、過去系の話しをしたんだと思うけど、そこはごめんなさい。ウソでした。

本当はまだ物部君の事が好きです。処女をささげてあげるって、本気の覚悟で言ったのにそれを拒否された時はかなりヘコんだんだけど、まあそれも今となって良い思い出だね。

って話しが少しずれたか。つまり私が何を言いたいかと言うと、これから話す私が自殺を考え原因、私が私の自殺を物部君に強要した理由、私が物部君に隠れて本当の目的を達成する為に裏工作していた理由、その全てが物部君に対する恋心から来ていると、そう認識して読んでください。もちろん物部君に対する恨みつらみは確かにあるよ。ヤヨイちゃんッて程じゃないけど、復讐っていう意味合いもそこにはある。だけどそこの根本にあるのが恋心だって、認識してください。

憎しみも愛情も、復讐や妬みも全ては同一の感情から成り立っている。

そこにあるのは関心でそこから枝分かれした感情に何ら差異は無いんだって事を、知ってほしい。だから語ります。私の真実を。物部君に知ってもらう為に。そして後悔して欲しい。だから綴ります。読んでください』


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