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第七話 フード

 昼休みになった。フードの子に会いに行こう。

 いや、いきなりすぎると前回までの流れ覚えてないって人にとってよくわからないのではないか…。実際、僕はよく覚えてない。時間的には一か月くらい開いた気がするけど、一日しか経ってないんだね…。

 えーと、昼休みに部活についての打合せが終わった後、ふと外を見るとフードをかぶった女の子がいた。それはまるで始業式に見たフードの子ではないか。その子はてっきり荒木ヤズルと同一人物だと思っていたんだけど違うみたいだ。荒木ヤズルはその数分前まで一緒に話してたんだから。

「おい、木葉。知ってるか、隣のクラスにテンコウシテキタコ」

「天候指摘タコ?なにそれ?」

「……今の明らかに悪意がある聞き間違いをしたよな。そうじゃなくてさ、隣のクラスに転校してきた子がすっげぇかわいいらしくてさ俺見に行ったんだよ」

「お前アイドルにしか興味なかったんじゃないのかよ…」

 今は昼休みで…、さっきも言ったか。昼ご飯食べたあとにすぐ昨日フードの子がいた場所に行こうと思っているんだけどジジにつかまったか。昼も一緒に食べてたんだからその時に言ってくれよ……。

「そしたら、その子絶対に七色メールのキキちゃんだったんだよ」

「へー」

「感動うす‼」

「別に、…こんな高校にそんな有名人が入ってくるわけないじゃんか。似ているだけだろ」

 とか言いつつ、玄関へ行く準備をする。七色メールってのはジジがはまっているアイドルグループだ。七人が全員七色にちなんだ名前になっている。

「違うって、あれは変装していたけどどう考えてもキキちゃんだった……って、どこ行くつもりだ?木葉」

「ちょっと、トイレットへ」

「あ、ちょっと待って俺も行く、話まだ終わってないし」

「じゃあ、お花摘みに行くから行くからついてこないで…」

「どうでもいいけど、お花摘みに行くって……、分かった待ってるから」

 よくわからないけど、『校庭に行く』とは別の意味にとらえられた気がするよ。


「ちょっと木葉、こっち来なさい」

 ジジと別れて、教室を出た後すぐに、荒木ヤズルに拉致られそうになった。…いや、文字のままだよ?右手をむんずとつかまれて、そのまま階段に連れて行かれそうになったが、あと一歩のところで踏ん張って、その場に立ち止った。

「ごめん、ちょっと今日は用があるから。昼休み時間ないわー」

「はぁ?……ならここでいいけど。今日の放課後部活だからね、忘れないで」

 それだけ言うと荒木ヤズルは教室に戻って行った。

 ……それだけしか言うことがないなら、わざわざ階段の踊り場に行かなくとも…。ジジと話してる時に割って入ってくれればよかったのに。

 あれ?

 部活ってどこでやるんだっけ?まぁ、いいか。



「どこだろう、昨日の子…」

 普通に考えて、毎日校庭にいるってことはないのかもしれないけど…。それでもどっかにいると思うんだけどな。校庭にはまだ、昼食を食べている人がちらほらと見えた。その中にフードをかぶった子はいなかった。まぁ、常にフードをかぶっているのかは知らないけど、少なくともフード付きのパーカーを着ている人はいなかった。

 なら、中庭かな…。昨日は中庭から帰る途中だったとか?でも中庭なんて、校舎の窓から丸見えのはずなのにさっき誰も見えなかったな。

 中庭に来てみると、誰もいない代わりにおいしそうなにおいがした。その匂いにつられて歩いていくと、垣根に突っ込み、訳が分からないままそこから抜け出したとたんに壁に頭をぶつかってしまった。それ以降の記憶は僕にはない。


 あぁ、人生楽しかった…。


 とか思ってみたけど、今の人生はまだ続くようだ。どうせならもっとイケメンに生まれ変わってみたかったんだけど、人生は世知辛い。…今の絶対に使い方間違えてるよね、どうせなら頭良くも生まれ変わりたいものだ。

 ん?今の状況はどうなっているんだろう?なぜだか気持ちのいい枕で寝かされているようだけど、気絶している間に保健室に運ばれたのかしら…。

 目を開けてみるとそこには女の子の顔が目の前にあった。僕が目を開けた瞬間その女の子は遠ざかって行った。ついでにそれと同時に枕は消えてなくなってしまった。頭に激痛が……。


「あの大丈夫ですか?」

 この激痛では生まれ変わることはできなかったようだ。

 目を開けると、後光が差した女神がいた。あぁ、まぶしいここは天国ですか。

 ふざけるのはそろそろ止めよう。残念だが生まれ変わったとしても僕は僕のままのような気がしたからだ。それと、その女神が僕の探していたフードの女の子だとわかったからだ。制服の上から胸元にANと書かれた白いパーカーを着ていて、髪の毛を全部隠すようにフードをかぶっている。正直暑くないのかな?

「あの、何があったんですか?」

「それは私のセリフだと思うんですが…」

 よくよく考えると、きっとさっきは膝枕をしていてくれたんじゃないかな。それなら、なおさら目覚めなくてもよかったのに……。

「ここはどこ?私はだれ?」

「えっと……、ここは中庭で、あなたは…、誰でしょう?」

 いちいち答えてくれた。文脈的に何もつながってないだろうに…。一回は言ってみたいことだったから、僕的には満足である。

 そうか、垣根から出てきた瞬間に壁にぶつかってのびてたのか。そこを通りがかったこの女神さまに助けられたと。これぞ運命。いや違うか。

「頭、大丈夫でしたか?すごい音がしてましたけど…」

「あ、はい。大丈夫です」

 思わず敬語になってしまったが…。

「えーと、あなたはこんなところで何をしていたんですか?中庭に人がいるってことは珍しいのに?」

「……ここで昼食を食べてたんです」

「教室で食べたりはしないんですか?四月とはいってもまだ結構寒いですよね」

「…そしたら、隣にいきなり垣根から人が飛び出してきたから驚きました」

 そう言って薄く笑う。無視された?聞いてはいけないということかな…。

「でもここ廊下から見えたりしないの?」

「いいえ、ここはちょうど垣根の陰になっていて、廊下から見えない場所になっているみたいなんです」

「へぇ、確かに僕も誰にも邪魔されない場所で昼食を食べたいよ」

 ちなみに昼食はジジとコースケと一緒で食べているが、昼食中ほとんどジジが今話題のアイドルについて話しているためうるさくて仕方ない。

「では、ここで一緒に食べませんか?静かなところですよ」

「え?」

「……あ、迷惑なら別にいいんですが…。ごめんなさい、忘れてください」

「いや、迷惑とか全然ないよ?じゃあ明日ここに来るよ」

「あ、はい。お待ちしております……、って私が言うことじゃないですよね。えーと、じゃあ、一緒に食べましょう」

 いやー、明日からの昼食が楽しみになってきた。教室で食べるとジジがうるさいし、食べ終わったら荒木ヤズルに手を引っ張られて階段行き~とかいう地獄(なんか怒られそう)を味わなくちゃならないしな…。…まさかこんなところまで来て手を引っ張っていくことなんてないはずだ。…大丈夫だよね。

 予冷がちょうど聞こえてきた。



 放課後になった。

 部活なんてどこでやるんだかとか思ってたけど、普通に教室で勉強していたら荒木ヤズルがやってきた。意外と真面目に部活するんだなと思っていると、

「で、どうやってあと二人部員を入部させるかなんだけど、なんか意見ない?」

 丸投げですか。

「僕は特に誘える人はいないんだけど…。荒木ヤズル確か前に候補がいるにはいるんだけど…みたいな話してなかった?」

「あたしはいいの。部長だから動かなくてもいいの。動くのは下っ端の仕事」

「下っ端……」

 中っ端もいないのに下っ端。せめてあと一人くらい部員がいたらそれもわかるけど……。

「あ、そういえば」

「ん?誰か宛があるの?なるべくゲーム好きじゃなくちゃいやよ?」

 今、どうしても部員の頭数が欲しいって状況でどうして新しく条件つけちゃうのかな?なおさら部員の候補が減った気がするな……。

「ゲーム好きかは知らないけど……、頼んだら入ってくれそうな人と今日会ったんだよ」

「おーー!どんな人?」

「えーと、だいたい僕の肩くらいの身長の女の子で……」

「うんうん」

「敬語口調で話してて、澄んだ声をしていて……」

「うんうん」

「気持ちいいふとももで……」

「……うん?」

「そして、いつもかは知らないんだけど、フード付きのパーカを着てて、そのフードをかぶってて……」

「……………………」

 うなづきながらだんだんと荒木ヤズルは無口になって行った。何か気になることでもあったかしら?

「ちょっと途中で聞き流せない言葉が聞こえた気がするけど……、ていうか聞きたいんだけど、その子のパーカーって白くて胸のところに赤色でANとか書いてあるやつ?」

「あ、そうそう、そうだった気がする」

「……、それ、たぶんあたしのお姉ちゃんだから……」


「荒木ヤズル、姉いたんだ……。あれ?あの子同学年じゃなかったの?」

 確か入学式の日、一年生のクラス分けの張り紙を見ていたはずだ。

「え?そうだけど……」

「じゃあ、父親と母親双方の連れ子でたまたま同じ年の子供だったとかそういう…」

「違うって普通に双子の姉だってば」

「似てねぇ……」

 まるで似てないのだ。荒木ヤズルとあのフードの子は…。というか双子?なおさら似てないことが不思議に思えてきたよ……。

「ていうか、木葉も候補ってのがノズルだったんだ……。かぶちゃったじゃない」

 そうか、あの子の名前はノズルっていうのか。荒木ノズル。女神ノズル、新たな信仰。

「じゃあヤズルも誘おうと思ってたのがあの子だったんだ……」

「あぁ、もう。また一から人探さなくちゃじゃない。……まぁ、いいわ。木葉が誘っといて」

「はぁ?姉なら自分で誘えばいいじゃんか」

「いや……、ちょっとね」

「?」

 良くは分からないが僕が荒木ノズルを勧誘することになったようだった。姉のことが嫌いなのかな……、でもそうなら、勧誘も断るんじゃないかと……。


 とりあえず、この日は部員をどう集めるかについてしか話し合わなかった。






久しぶりの投稿。


感想・批評くれると杏戸喜びます。

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