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第六話 部活

 入学式があってから約一か月がたとうとしていた。もうすぐ、ゴールデンウイークもあり、少しずつ宿題が出ていた。クラスではゴールデンウイークに何をするかという話でも持ちきりとなっていた。しかし、僕はゴールデンウイーク何するかということよりも先に考えなきゃならないことがあった。


「部活決まってねぇ…」


 深刻な悩みだ。この学校、というより四高西は全校生徒が三年十二月まで必ず部活に入らなければいけない。四高北なら普通に部活に入ってなくても、勉強ができればそれでいいのだが…。しかし、ここで問題がある。僕は入学式の二日後にどうしても部活に入りにくい事情を作ってしまってしまったのだ。

 まぁ、四高西ではそうせざるを得ないためにおかしい部活がたくさんあるし、僕の奇行を知らない部活だってあるはずって意気込んでいろいろ部活見学に行ったんだけど、どうしてかほとんどの部活で僕の奇行を知られていたので、入りずらかった。


「よう、木葉、部活決まったか」

 ジジが来た。おい、お前は僕がまだ部活決めてないって知ってるだろ。

「消えろ」

「はぁっ‼なんだよ、いきなり」

 まずい、心の声が出た。だって、だって、ジジ、僕にいじわるするんだもん。ちなみに、ジジはもうサッカー部に入ったみたいで、正規の部員として放課後にもう練習に行っている。

「たしか、ゴールデンウイーク終わった時に絶対どっかに入ってなきゃいけないんだろ?もうサッカー部に入っとけって」

 その言葉に僕は震えた。

「無理だって、サッカー部にはあのごっつい顔の先輩いるし…。っていうか、僕はお前みたいにもてたいって理由だけでサッカー部に入ったりしないって」

 っていうか、サッカー部イコールもてるって明らかな迷信。実際入ってももてるかどうかはその人しだいだと思うよ。でも、なんかもてる人ってサッカー部入りたがるんだよね。

「なぁっ‼べ、別にもてたくて入ったわけじゃねぇし」

「男のツンデレきもーい」

 ジジと顔を合わせて笑っていると、


「ねぇ、木葉君」


 振り返ってみるとそこに荒木ヤズルがいた。

 あれからなんだかんだ荒木ヤズルと話している。その時は初めて話したときと同じように階段の踊り場に行ってから話している。対して重要なこと話すわけでもないのにどうして二人っきりで話すんだろう。

 そしてもう一つ疑問に思ったことは、荒木ヤズルが僕以外の男子とほとんど話したことがないことだ。これについてはジジの情報だからあんまり信用できないんだけど。話しかけられてもさらっと流されるようで僕みたいに話しかけられた人はいないそうだ(ジジ談)。っていうかまだジジはストーキングしてるの?僕はもうやめたよ?

 どうでもいいこと考えたらもうヤズルが行ってしまったので、いつもと同様にジジを引き離してから荒木ヤズルの後を追っていく。


「今日は何の用?」

 踊り場にて、僕が話しかけた。

「木葉君確か部活まだ決まってなかったよね」

 何…だと?まさか荒木ヤズルにまで馬鹿にされるとは思わなかったぞ…。

「人気者と違って僕はだれにも誘われないんです。どうせもう荒木ヤズルはもう決まってるんでしょうけど…」

「なにそれ、嫌味?」

 少しむっとした顔をしたがすぐに顔を戻して、


「あたし、新しい部活つくりたいの」

「え?」


 えーっと、どういうことだろう?兼部?あなた兼部なの?

「いや、そうじゃなくってさ。あたしまだ部活入ってないんだけど…」

 なんと、僕と同じ部活ボッチだったとはいや嘘つけ、部活ボッチとは反対の人種のはずだろう君は。

「でさ、その人数の頭数になってくれないかなと」

「何の部活?運動部なんて嫌だよ?」

「ふふん」

 荒木ヤズルは得意げに笑って、懐から丸められた紙を取り出した。…いや、待って、懐って…。時代劇か…。


「じゃじゃーん、ゲーム部を作ろうと思います」


 丸められた紙を広げると、そこにゲーム部と習字で書いてあった。ヤズル、字がうまいなぁ…。

「いや、ゲーム部あるよ?」

 たしかにある、ゲーム部はれっきとした部活として存在している。

「まぁ、そうなんだけど…。仮入部行ったら、男子部員たくさんいて…」

 女子にとって、男子の比率が高すぎるとしり込みするんでしょうか…。

「とにかく、入ってくれるよねゲーム部」

「いや、名前がゲーム部じゃまずいでしょ。もうすでにあるし…」

「ふふふ、実は名前はもう考えてあるの」

 荒木ヤズルはもう一度懐から丸められた紙を出した。いや、もうさ考えてあったんなら先にそっち出せばいいじゃん。


「じゃじゃーん、ゲームオリエンテーリング部、通称GO部‼」

「…さっきとほとんど変わってないよ?」

「か、変わってるよ。Oの部分が」

「マイナーチェンジ…」

 どうしよう、僕ってたぶんボケ担当のはずなのに荒木ヤズルと話してたら突っ込み担当に回ってるよ…。しかも、どうでもいいけど荒木ヤズル、教室とキャラが違うよう。

「とにかく、今は部員が必要なんだよ」

「…なんで僕?」

 聞いていいですか?

「リーフとしての腕前でぴったりだと思ったの。あと、この前の責任…」

 ビクッ‼

 いや、別にアレな話じゃなくて、実は入学式のあった週の土日に荒木ヤズルと出会いのやり直しをしたときに、荒木ヤズルが転んでしまって…。その時はすぐ気付かなかったけど、実は捻挫をしてたらしいんだよね。まぁ、そうなったのは明らかに僕の責任だし…。っていうかなんで捻挫なのにスタスタ歩いてたのさ。

 つまり、何らかの形で恩を返すよって言ってたら、いまブーメランが帰ってきたというわけ…。

「とりあえず、部員決定ね。あたしあと部員二人集めなきゃだから」

 そう言ってヤズルは教室に戻って行った。いや、まだ僕が入るって言ってないんだけどさ。

 

 四高北では部活を新しく作るのは比較的簡単だ。部員を四人集めること、顧問の先生がいること、そして生徒会の承認がいること。ちなみに、生徒会の承認が一番めんどくさかったりする。提出してから生徒会が承認してくれるまで時間がかかる場合が多いからだ。

 しかし、部活決めまで時間がない新入生が部活を新しく作ろうとしたらどうすればいいか。たいていの場合は研究会を設立する。研究会は部員が二人以上ならよく、なおかつ生徒会の承認がいらないので一日で作ることだって可能だ。でも一年以内に部活に昇格することが必要だ。

ヤズル、僕は二人きりの部活でもOKよ。


 

 次の日。

 僕は例のごとく階段の踊り場に来ていた。

「部員が、集まらないんだけど…、どうすればいいと思う?」

 丸投げですか。

「教室で仲良くしてる人たちは?荒木ヤズル、仲良い人多いよね」

「ミキも、サチも部活決まってるんだよね。あと、あたってない子で部活決まってなさそうな子か…。…っていうかフルネームて」

 不服みたいだ。

 ちなみに、ジジはサッカー部で忙しそうだし、コースケも部活決まったって言ってたし…。あれ?そのほかに僕、仲良い人いない…。…部活だけじゃなくクラスでもボッチでしたか。

「あ、一人だけいるか…」

 荒木ヤズルは思い浮かんだというわりには、浮かない顔だった。

「まぁ、いいわ。木葉、今日の放課後暇よね。一緒に研究会申請しましょ。そろそろ、期限近いし…」

 勝手に『暇』認定された!?僕が部活あるかもしれないという配慮はないのか。…ないわな、今こうしてるくらいだし、そもそも部活入ってないし。それでも、僕は放課後勉強するかもしれないという配慮はないのか。…ないな、僕勉強嫌い。

 うがー。僕の中の僕に否定される。

 ここで予冷が鳴った。

「それじゃ、また放課後ね」

 そう言ってヤズルは先に行ってしまった。…一緒に行こうよう。

「はぁ」

 ちらりと外を見る。今日は暑い日だってのにサッカーを外でやってる人がいる。

 元気だなぁ…。年甲斐にもないことを言う。

 …使い方あってんのかな、勉強しなきゃ。…僕勉強大好き。


 外をぼんやりと見ていると、ある人影が見える。そうあれはまるで…。

「え?」

 あの日に会った、フードの女の子に見えた。

 どういうこと?僕てっきり荒木ヤズルと同一人物だと思っていたんだけど。なんというか、荒木ヤズルが顔が似ているとするなら、あの子は雰囲気がよく似ているのだ。…まぁ、ここからじゃ顔はよく見えないんだけど…。

 しかし、僕は確認に行けなかった。そもそも、教室に戻らないと授業が始まりそうだった。



 放課後…。

 僕は荒木ヤズルとともに教室で研究会申請書を書いていた。…書かされていた。

「書けた?木葉」

 丸投げですか。

「部室はどうすんのさ?しかも、顧問もいないでしょ?」

 そう、まだ部員欄と部の名前と部の目的くらいしか書けてない。部の目的もよくわかんなかったけど、きっとこの部の名前から『ゲームを通して部員たちの親睦を深める会』とかいう感じだろう。…むしろここまで考えられたことを褒めてほしい。

「部室も顧問も決まってるわよ」

「え?」

 初耳ですが、どこで誰に決まったんですか。…どうして敬語なんだろう。

「部室はここで、顧問は担任よ」

「‼‼‼‼‼‼‼」

 言葉にならない。

「…っていうか、研究会作るのにも結構学権いるよね。どんだけ学権持ってんのさ」

 学権とは、この第四喜多良高校が進学校たるゆえんだったりする。ようは、勉強にしろ部活にしろ良い成績を収めたらもらえるもので、先生たちを融通を聞かせることができるものだ。

 ちなみに、この学校はやたらと校則がきつく、パーマ、毛染め禁止や、スカート膝丈やら、カーディガンは指定の色しかだめだのいろいろあるが、学権を使うことで校則を緩めることができる。

 まぁ、学食を買うお金のように使うこともできる便利なものだ。

「え?まぁ、学年一位の成績で入ったから学権がたんまりと…」

 やっぱり、学年主席なんだ…。

「あ、じゃあこれ出しとくね。今日はもう帰っていいから」

 そう言って颯爽と教室を出ていった。

「…はぁ」

 すごい勢いだった。僕としては、あのフードの子について考えたかったんだけど…。

 …帰るか。

 


 

 






やっと学権の話ができたな…。ほんとはもっと早くにするべきかなと思いつつ、ここ来ました。次話では、とうとう荒木ノズルが登場します。引っ張り過ぎた気がします…。


感想・批評くれたら杏戸喜びます。

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