第四話 ゲーセン
誤字、脱字あります。読みにくい箇所あります。
四丁目には高校は第四喜多良高校しかない。その理由は四丁目北、西、東には喜多良高校の校舎しかないし、南地区は基本的にアミューズメント地区と呼ばれているように、遊園地、ゲーセン、公園などで敷地が埋まっているからだ。
いきなりこんな話になったのは荒木ヤズルの行き先がどうやら四丁目南であることが分かったからだ。つまり、荒木ヤズルが学校の部活に入らず体験入部にも見学にも行かなかったのは、遊んでいたからだということがわかる。悪い子だということである。ジジあたりに言ったらなんて思うだろうか。
あれ?もしかしたら荒木ヤズルって彼氏とかいるのかな?こんなとこで遊ぶなんて…。待った、荒木ヤズルは僕と運命の出会いをするはずだった女の子だよ?フリーに決まってるじゃないか。…ただの願望だな。
とは言え、まだ荒木ヤズルからあの坂道であったってことを裏付けしてないんだよな…。マズイ‼
あ。荒木ヤズルがゲームセンターに入っていった。
荒木ヤズルは遊園地等を横目で見ながら、どんどん奥へ進み、ゲームセンターに入って行った。僕?もちろん追っていったよ?…それより、さっきから警察の目が怖くなってきたんだけど…。大丈夫、悪いことは特にしてない。…してるか。
ゲームセンターに入ると荒木ヤズルはUFOキャッチャーの間を縫って歩き、最終的に格闘ゲームの前に座った。
…意外だな。と思った。荒木ヤズルの天使さには似つかわしくない格闘ゲームと来ましたか。私は格闘ゲームは、腕に覚えがあります。対決しましょう。…と思ったけど、ゲーム機は全部埋まっていたので対決するのはできなかった。
ここのゲーム機は基本的にこのゲームセンター内で今同じゲームを行っている人と対決することができる。荒木ヤズルと同じゲームなら対決できたのだが…。
そう思いつつ荒木ヤズルと反対側に座っていた人の画面をのぞき見た。ちょうど今始まった見たいでこの人の名前は「ツヨシ」。相手は「ヤズル」という名前だった。…ヤズルとちょうど戦うみたいだ。敵戦視察だな…。
戦闘バサラゲーム。プレイヤーは戦国時代の武将を使って戦うゲームで、本来なら武将の武器や、必殺技を駆使して戦うゲームなのだが、このゲームには簡単な勝ち方がある。簡単に言えば、手数の多い小剣の武将を使って、必殺技を当ててひるませたあと、小攻撃を当て続ける。そうするだけで、相手はもう身動きが取れずに負けが決まる。
まぁ、それが分かっていて二人とも小剣使いを選ぶんだから、先に必殺技を当てた方が勝ちだ。
戦闘が始まった。「ツヨシ」の方はやはり小剣使いの武将、しかし、「ヤズル」は大剣使いだった。まぁ、大剣使いが弱いわけではないが、「ツヨシ」有利かな…と思っていた、つかの間、いきなり「ヤズル」が必殺技を使った。…しかし、外れたと思った直後、「ヤズル」の打ち上げ攻撃、中攻撃が決まり、「ツヨシ」の体力が半分に減った。「ツヨシ」も必殺をあてに行くが一発も当たらず、結局「ツヨシ」が一発も「ヤズル」に必殺を当てれずに負けが決まった。
「ツヨシ」は名前負けだな。…と思うけど、それよりも強すぎないかヤズル。
「ツヨシ」はその後三回戦うも、やはり攻撃すら一発も当てられず負けが決まり、とぼとぼと帰って行った。結局ヤズルは必殺技を当てず、おとりにしか使わなかった。なかなかのやり手だと思う。
というわけで、戦ってみましょう。ちょうど席も空いたしね。まずは、「ヤズル」ではない別の人から…。
勝利。いい感じに必殺技が当たり余裕で勝利した。
さて、次の相手は…。「ヤズル」だ。僕はそう簡単には負けないからな。
戦闘開始5分。僕は見事に完敗を喫した。…いや、一応言い訳しておくよ?僕がそんなに弱くないことの。荒木ヤズルに必殺を当てることに成功したのに、小攻撃の連続中に荒木ヤズルが逃げたんだよ。逃げられたのなんて初めてだし。しかも、さ、荒木ヤズルそれで怒ってマジで必殺あてに来たからね、僕に。
荒木ヤズルが必殺をさっきの人に当てなかったのって使うまでもないってことだったんだよ。当たったら小剣使いなんて一瞬で死ぬからね。…体験者は語る。
よし再戦と思ったが、荒木ヤズルは別のゲームに移ったようだった。
なんだ、僕の強さに恐れをなしたか。は、は、は、は…はぁ。
…自信がなくなった。
その後、僕はほかの格闘ゲームをやった後、クレーンゲームに移り、五百円を費やしたところで、何やってんだ僕は、と思い至った。
そもそもここへ来たのは荒木ヤズルを追ってきたのであって、別にクレーンゲームをやりに来たのではないのだ。…もう少しであれ取れそうなんだけどなぁ。
よって、先ほどの格闘ゲームのコーナーへ戻ると、人が騒いでいるのが目についた。
よく見てみると、男の人二人に、荒木ヤズルが絡まれていたのだ。
「おいおい、ねぇーちゃん、ちょっとチョーし乗ってんじゃねぇ―の」
「悪いこと言わねーから、謝っておけよ」
荒木ヤズルは何も答えなかった。というより、その二人を完全に無視しているように見えた。その様子が二人の男をさらに怒らせたみたいで、より大きな声で叫びだした。
「おめぇがずるしてんのはわかってんの。そんなキャラクターでふつう勝てるわけないんだわ」
「わかんないかな~、日本語、君外国人?それとも染めてんの?」
荒木ヤズルが外国人かと言われたときに反応した。少し腕が振るえているように見えた。
「…………あんたたちが、弱いのが悪い」
荒木ヤズルがそうつぶやいた。
「…んだとゴラ‼」
二人の怒りが頂点に達した。
確かに荒木ヤズルの腕は一流と言っていいもので、荒木ヤズルにとって弱すぎたのかもしれない。しかし、さっきのように言えばに反感を買ったのは明らかだ。
ここは、やはり助けに行くしかないよな。やっぱり、男に絡まれているところを助けるなんてのはギャルゲーの定番だよね。しかも、助けた後に顔を赤らめて『ありがとう』とか言われたりとかね。…ふふふ。ヤバい、にやける。
えーと、こういう時はなんて言うんだっけ。まぁ、前回というかさっきねぇ~、失敗したから今回はよく考えて行動した方がよさそうです。やっぱり、定番は『俺の女に手を出すな‼』とかだっけ。でも別に荒木ヤズルにとって、僕ってまるで知らない人だからな。俺の女も何もないでしょって感じだな。
と、あーだこーだ考えていると、男二人が荒木ヤズルにとうとう手を出した。
「きゃっ」
「ちょ、ちょっと待った」
「ああん?」
僕は考えのまとまらないまま前に出てしまった。…ヤバい波乱の予感。
「僕と勝負しろ‼」
待って、僕もどうしてそう言ったのかわからない。
「は?なんなのお前?こいつの何なの?」
荒木ヤズルの?なんだろう?一つあるとすれば…。
「僕は…。ただのKYだ‼」
おかしい、もっといいことを言えると思った。
ただ、なんとなく言おうと思ったことと別のことを言ってしまった気がするよ…。
あ、ほら、ほんの一時間前に見た顔をまたみることになったよ?どうしようか。ただわかるのはこの人と勝負しなくてはならなくなったこと。僕は別に戦いたくないこと。…自業自得かな。
僕は「何言ってんのこいつ」という顔をしたこの人たちを椅子に座らせ、戦闘バサラゲームを行った。結論として、この人たちにわざと負けて満足させればいいってことだ。うわ、僕意外と頭いい。…もちろんただの後づけだ。
五分後。
勝った。勝っちゃった。この人たち弱すぎるよ…。
「おい、てめぇ…」
ヤバい?怒らせたよね。絶対。
「もう一回だ」
やだよ。だってこの人たち弱すぎるもん。確かにヤズルがあんたが弱すぎるのが悪いって言った気持ちがわかるよ。
その後、二、三度続けたが僕は一回も負けなかった。こういう人に限って手を抜いたらもっと怒るんだよな…。でも、勝ちすぎたか?
「おい、てめぇチート使ってんだろ」
「いいから、げろっちまえよ」
ヤバい、なぜか僕に怒りが向いてきた。荒木ヤズルはどうした荒木ヤズルは。
ってあれ?荒木ヤズルもう逃げてるよ?おかしい、助けてくれそうな人がもういない。誰か助けて。
「はぁ、ひどい目にあった」
次の日、僕は懲りずに学校に来ていた。
ん?あの後?こってり絞られたよ?ここで書いたらR-15になるんじゃないかってくらい。最終的に店員さんが気付いてくれるまで、…いやよそう。だめだ、思い出したくない。
それと、僕が学校に来たくなかったのはもう一つ理由がある。
「よう、木葉昨日すごかったな」
そう笑いかけてきたのは昨日とまるで変わらないジジだった。
「おはよう、KY、ジジ」
「おっす、コースケ」
ついでにコースケも来た。ところで、コースケは僕の名前覚えてないのかな?僕もコースケの本名覚えてないけど…。KYって呼ばれるの少し恥ずかしいよ?
「そういえばさ、KYって呼ばれ方が先輩たちにも浸透したんだね」
「えっ?」
初耳だよ?
「僕が行った部活でさ、一年にスゲーKYな奴がいるって先輩たちが話しててさ、『その人、クラスでもKYって呼ばれてますよ』って言ったら、先輩たち思いのほかうけててさ、よくわかんないけど、その日のうちにほかの部活にも広まったみたいで…」
「待って、それ確実に確信犯だよね」
言い出さずにはいられなかった。ていうかコースケサッカー部とか、野球部とか行ってないよね?
「くはは、よくやったコースケ」
「でしょ?」
待って半分は僕が悪いとしても、広まったのは明らかにコースケのせいだよね。
え?何?もう僕はKYからは離れられないの?
ゲーセンのあれは気の迷いっていうか…、なんていうか…。
「ねぇ、木葉君」
不意に話しかけられた。
振り向くとそこには荒木ヤズルが立っていた。
「え?うそ?話しかけられた」
ジジは硬直した。…いや話しかけられたのは僕だからね。
ジジの話によると、荒木ヤズルと話した男子はいないって話だったよな…。はっ僕が初めて?なんか卑猥な響き。
「えっと、ちょっと来てくれる?」
そう言って荒木ヤズルは教室を出ていった。
…へ?ちょっと待って!ジジが離してくれない。
何とかジジの手を離して荒木ヤズルの行った方向に行くと、荒木ヤズルは階段の踊り場にいた。何の用だろう?
荒木ヤズルは少しもじもじと話すのをためらって、少し顔を赤くして、…もちろん妄想の中の話である。荒木ヤズルはさばさばとしていた。
「昨日はありがと、…それだけ」
と言うと、教室の方へ向かった。
いや、待ってそれだけ?もっとなんかないんですか。ここまで連れてきた意味は?野放し?待って‼
何か言わなきゃ、何でもいい、一言。
「ぼ、僕と出会いをやり直してください」
どうしてこんな言葉を選んだかな。
「え?」
荒木ヤズルは振り返った。その顔は少し赤らんでいた。
えーと、ここまで読んでくださった人に謝辞を。
実はここまでが三話に入れる予定の内容でした。
杏戸の計画性のなさ、すいません。
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