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第二話 入学式

例のごとく読みずらい文章だと思いますが、よろしくお願いします。

 春休みは瞬く間に終わり、早くも第四喜多良西高校の入学式が行われる。

 第四喜多良西高校、通称四高西は、県内でもトップの進学校に分類される。しかし、この学校は進学校というよりもむしろ部活動が活発だということが有名だと思う。また、行事も規模が大きいものが多く、4日間の文化祭と3日間の体育祭からなる一週間の学園祭などがある。去年の文化祭はジジを連れてきてみたが、多くの出し物がありとても楽しかった思い出がある。

 一つの高校にしてはあまりにも規模が大きすぎると思うかもしれない。でもこれには理由がある。

 喜多良地区は12の区間に分かれている。主に喜多良大坂の上を四丁目、坂の途中の地域を三丁目、坂の下を二つの地域に分け、西を壱丁目、東を二丁目となっている。さらに三丁目と四丁目は東西南北の四つの地域に、壱丁目と二丁目は北と南の二つの地域に分けられている。すべての地域に高校や中学の校舎が一つ以上建てられているが、一つの高校が二つ以上の校舎を持つ場合があり、喜多良地区に高校はすべてで三つ、中学は六つとなる。

 僕の入った四高西は第四喜多良高校の一つでしかない。北、西、東の生徒を足すとほぼ二千五百人に達する。その二千五百人を三つの校舎に分け、基本的に北>東>西の順に頭がいい。つまり進学校の底辺、部活連中が多い。ただ、四高西にいるから四高北の生徒より頭が悪いということはない。四高西のトップ入学は四高北でもトップクラスだろう。


「木葉、何組だった?」

 ジジからの声がする。クラス分けは始業式の前に初めて確認した。実は仲のいい人はジジくらいしか一緒の高校になれなかった。もともと友達が多い方ではなかったけど…。まぁ、同じ中学の人もこの高校に何人か来てるはずだけど、よく知らない人ばかりだと思う。

「僕はA組」

 A組にはやっぱり知っている人はいなかった。知ってる人がクラスに一人でもいてくれたら心強かったのに…。新しい友達作るまでのつなぎとして…。…うわ、僕の考え方ゲスだ。

「そっか、俺もA組だわ。一年間よろしくな」

 …ジジを除いて誰かいてくれるとうれしかったんだけど。…ていうかさっき見なかった振りしたのに。

「…おっ、いやそうな顔。春と言えば、出会いの季節だろ?そんな辛気臭い顔すんなって。女の子が逃げていくぞ」

 見ないフリー、聞かないフリー、いや、実際に何も聞いてないんだけど。ジジは間違いなく友達だといえるけど、この距離感が心地いいからずっと仲良くしていけると思う。…絶対言わないけど。

 それよりも、やっぱりあたりを見渡してみても、知ってる顔は特にないようだなぁ。…あれ?

「…やっぱりお前たまに人の話を聞いてない時があるよな。話し手が軽くへこむときがあるから直した方がいいと思うぞ」

 あたりを見渡した時、僕の目はただ一点に止まった。不思議な恰好をした人がいる。まだ春とはいえ、今日は気温が高いのに熱くないのかな。その恰好はあの日に見た女の子に似ていた。

 僕はすぐにその子のいた方向に走ったが、もうそこにはいなかった。

「おーい、なんだって走って行ったんだよ」

 ジジが追い付いてきた。だがそんなことはどうでもいい。今は先ほどの女の子の方が気になる。

 僕は確信したあの日坂の途中で見かけたフードの女の子だ。




『えー、新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんをこの第4喜多良高校に迎え入れたことを…』

「うーん」

 わかんないんだよなぁ~。さっき見かけたフードの子。

 入学式が始まってからずっと探しているんだけど、どこにいるのかわからない。新入生のクラスを見てたから新入生の中にいると思うんだけど…。いや、まぁフードを目印にして探しているから、フードを脱いでいたなら絶対わかんないんだけど…。

『皆さんの持つ才能、能力をこの三年間で開花させ、…』

「まだ、考えてたのか」

 ジジの声がする。クラスにさえ別れず、立食パーティぎみになっている。自由を重んじ~とかかもしれないけど適当過ぎると思う。まぁ、四高の新入生がすべて集まってるんだから並べさせるのも難しいだろうけど。

「だいたい春休みのほんの一瞬の出会いをよく覚えているよな。いや、覚えてないのか。顔もわからないんだろ」

「うるさいなぁ」

 僕だってあの日の記憶はもう忘れそうだったけど、…信じたいじゃないか。…青い春の訪れを。

 ジジはあの恋愛小説になりそうな出会いをもう忘れてしまったようだ。こいつは顔が見れてしかも結構かわいいって言ってたのに忘れたとか…。

『一日一日努力して三年間を有意義に過ごししていただくよう心より祈っています。また…』

 いや、そもそもよく知ってないから僕にとっていい記憶で、よく知っているから、ありふれたものだからジジは忘れてしまったのだろうか。…は!そういえば恋愛小説で女性が男性と別れるときに『あなたのこともうわかったわ』とか『そんなの知りたくなかったよ』とかいう気がする。つまり知らない方が幸せとかそういうやつか。

『えー、最後に保護者の皆さん本日は誠におめでとうございます』

 …それより、どうして校長先生の話ってこんなにも長いんだろうね。

『校長先生ありがとうございました。続いては新入生代表のあいさつです』


『新入生代表 第四喜多良西高校一年A組 荒木八鶴あらきやづるさん』

「はい」


 その女の子が新入生の全員の前に立った時、新入生(主に男子)が沸いた。きれいな赤色の髪を三つ編みにして、後ろで尻尾のように垂らしていて、生き生きとした魅力的な少女だったからだ。僕的にも先ほどから見回した限り新入生の中でトップレベルの容姿だと思った。…妖精だ。妖精が舞い降りた。

 …いや、それよりもだ。その顔に見覚えがあるのはなんでだろう。

『暖かな春の訪れとともに、私たちがこの第四喜多良高校に入学できたことをうれしく思います』

 荒木ヤズルと呼ばれたその少女は紙を開いて新入生代表のあいさつを始める。

「なぁ、木葉すっげぇかわいい子じゃね」

 最近だ、結構最近に見た顔だと思う。そう整った顔の中であの特徴的な目が僕を引き付ける、この感覚を僕はどこかで味わった。今日…違う。おととい…違う。もっと前か。

 いや、まぁ顔がはっきり見えたのなんて一瞬だったし、…わかるわけないってあれ?

『…、この三年間の中で自分自身を向上させ…』

「おーい、木葉?聞いてないのか?」

 なぜだろう、この心のつぶやきのくだりはさっきもやった気がする。…そうだこれは例のあの子について考えた時に。………「あ」。

『…、先生方、また保護者の皆様、どうぞよろしくお願いします』


「あ~~~~~ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」




「…うくく…。マジで笑える」

「もううるさいなあ」

 始業式が終わり、教室で出席順で並んだはずなのになぜか隣の席となったジジに先ほどのことをネタにされていた。シーンてしてるとこでいきなり声出してしまうと恥ずかしいよね。しかも、それが全校生徒の前だったりとかね。…つらい。

 おそらくあの子なのだ、あの時坂の下で会ったのは。しかも、四高西A組って言われてたから同じクラスじゃないか。それが分かったときの感動を言葉にして何が悪い。例えば、この声優絶対知ってるはずなのに名前が思い浮かばないって時に、話の途中でふと分かってしまったときに誰だって声を出してしまうじゃあないか。これがわかりづらいっていう人は『声優』を『女優』、『話』を『ドラマ』とかに変えてくれるとわかりやすいと思う。…わかりずら。

「…少しは空気読めやお前…。」

「え?」

 おかしい心の中で話していたはずなのに声に出ていたみたいだ。入学してすぐだから話し声もほとんどなかったようで僕のつぶやきは筒抜けだったようだ。周りの人がこっちを見てる…。恥ずかしい。

「第一、ふと分かっても大声を上げる人はいないと思うぞ」

 意外と分かりやすいたとえだと思ったんだけど。

 そんなことよりすごいじゃないかと思う。やっぱりあの日に坂の下で出会ったのは運命だったとしか思えない。ここからの展開は簡単だよね、『なんであんたが~』からの…ってあれ?よく考えたら荒木さんって僕のこと覚えているのかな?もしかしたら『そんなことあった?』って言い返されるかな?…ははは、困った。

 

 この後自己紹介があって、僕の順番では「あ、KYの人だ」ってジジがわざと言い出したから、僕はみんなから名前を省略してKY(木葉楊堅)と呼ばれるようになった。…いや、分かってるよ?それがどういう意味か。でももう少し現実逃避させて。





 


評価、批評くれると杏戸喜びます。

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