第一話 坂の下
物語は始まります。
例のごとく読みずらいと思いますが…
春休みのある晴れた日の昼下がり、僕は友人のジジといつもの学校へ向かう道を歩いていた。
高校受験も大した事件もなく終わり、春から高校生です。僕的には、この中学生でもなく高校生でもない今このときが長く続くほうが楽だと思ったりしてるけどね。
中学を卒業後、どうしてまた学校へ向かう道を歩いているかというと、『せんせーへのお礼』とかいう名分と離任式で先生を見送りなさいとかで一回学校に来いという脅し(そうだと思うのは僕がひねくれているからなのかな…)に乗ってやろうとか思い、この暑い中、わざわざこの道を歩いているのだ。
とはいえ、やっぱり高校と聞けばバラ色を思い浮かべるように、高校はとても楽しみなもんなんですよ。僕は小さなころから、たくさんの漫画を読んできているけど、一番好きなジャンルと言えばラブコメ!普通の女の子と普通の男の子が劇的な出会い方をして、恋に落ちる。まぁ、僕にもそういうことが起こればなぁ、とか妄想するもんですよ。
「やっぱり、俺はアカリン派だなぁ」
すっかり忘れてはいたが、横にいるジジからの声だ。
「まだ言ってんのかよ」
ジジ、本名 寺子仁は小学校からの友人で、初めて会ったときに間違ってジンコジンと呼んでしまったのでこう読んでる。今は国民的アイドル『七色メール』にお熱い。先ほどから、アオネちゃんに惚れただの、いややっぱりだのばかり言っていてうるさく思う。
そんなこんなしているときに、坂道まで来た。
この坂道の途中に三丁目の街並みがあり、その三丁目北の奥の方に僕の通う中学校があり、それより上は四丁目の街並みが続く。余談だが、四丁目にも中学校、高校があるだけでなく、ゲーセン、アミューズメントパークなどがあり、さらに高度も高く絶景が拝めるとあってリア充に人気だそうです。
ま、この坂道が一番つらく、チャリ通の人はこの坂道だけ歩いて登る人が多いが、チャリで登ろうとひいひい言っている人もいる。逆にこの坂道をチャリで下るなんて危険だって思うし、実際に、自転車で駆け降りる人は見たことなかった。
そう、恋愛小説ならば坂道で歩いているときに、
「…どどどど、どいてー」
女の子の大きな声が聞こえる。
この後の展開はわかるよね。この声が聞こえた瞬間に主人公がそこを見やれば、美少女が走ってきて、ぶつかり、『もう気を付けてよね』とか、『お前が、だろ』とか言ってけんかを初めて、そして、高校に入って『あ、あの時の』とかいう劇的な出会いをはたすのだろう。
……あれ?今の声って…。
前を向くと女の子が自転車に乗りながら、坂を下ってきたのだ。
…………………キターーーーーーーーーーーーーーーーー
え?何?15年と5か月ずっと待ち続けてやっと、フラグキター‼ここからは間違いなくぶつかり……。
その次の瞬間、自転車は僕の隣、正しくはジジの隣のぎりぎりのところを駆け抜けて行った。
「ご、ごめんさーーい」
「え?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
「あ、あぶねえなぁ、今の」
ジジは顔をしかめていった。
僕はいまだに口が閉まらない。そ、そんな。フラグじゃなかったなんて…。
一瞬のことでよくわからなかったけど、見た目は僕と同じくらいの年だろうか。フードをかぶっていてよく顔が見えなかったけど、かなりのかわいい子だった気がした。
ほんの二秒間の邂逅で相手が僕のこと覚えているわけがない。むしろ僕が覚えていない。
「おーい、聞いてんのかって木葉‼」
「え?」
不意に話しかけられた。
「いや、さっきから話しかけてたからね」
心を、読まれた?
「いや、だからさぁ、お前ってわかりやすいのよ。今のスゲーかわいい子だったよな。四丁目の中学の子かな。あ、それよりさ、………」
それからジジと離任式でだれが変わるかとか、七色メールはもう少し売れるべきだとか、今の僕にとってまるで興味ないことを話し合った。正しくは、ジジがとめどなく言葉を発し続けた。
その間、僕の頭の中にあったのは、先ほどのほんの二秒間の邂逅だった。ジジにとってはどうでもいいことだったようだが……。ていうか、ジジには顔までよく見えたのか?まさかこのフラグはジジのために用意されていたものだった……とか?
このままでは終わらせない。
物語は始まってもいない。
ありがとうございました。
物語はいつ始まるのでしょうか。
感想、批判等くれると杏戸喜びます。