九話目『【戦いのルール】と状況判断偏 弐』
タクトは泣きそうな目で上田を見つめる
「な、なんだよ!もう、なっちゃったもんはしょうがねーだろ!」
「わ、わかってるよ....」
しょがない、しょうがないと自分に言い聞かせ、タクトはそのヘッドホンを自分の頭に恐る恐る被って見る、それは恐ろしい物だった、あらゆる音がタクトの頭に入ってくるのだ、屋上とは長い距離のある一年生の教室の話し声まで、石ころが落ちる音など鳥の羽ばたく翼の音など、普段は聞こえない細かい音までもが頭の中に入ってくる、タクトはそれを畏れ、ヘッドホンを頭から直ぐに取った。
「で、何か特殊なことはあったか?」
上田が面白おかしく聞いてくる。
「な、なんか...ものすごい数の音が頭の中に入ってきた...」
「へぇ~、便利だな」
「え?」
上田は腕を組み、白いヘッドホンに指を指して口を開く。
「それは【戦い】に便利だって言っているんだ」
「【戦い】って何なの?教えてくれ」
それを聞いた上田は指を左右に振る
「いーや、俺は相変わらず説明下手だから、見てもらった方が楽だわ」
「え?今から?」
「もうそろそろだと思うし、俺の鍵を握っておけ」
そう言われるとタクトは上田の鍵を握って、これから何が起きるんだっという思いから緊張の汗がタクトの頬を流れる。
「十、九、八、七、六.....」
上田は急に言葉でカウントダウンをし始めた、そしてそのカウントダウンがゼロに近づいた時、周りの背景が歪み始めた、背景の形形が一個一個崩れていき、その背景は見覚えのある部屋へと変わった。
「ここは....」
「へっ、見覚えあるだろ」
そこは前にタクトが契約して連れられた真っ白な部屋、そこには上田とタクト以外に何人か人が居た、何人かと言うと八人居る、男性が五人、女性が三人、その中の一人の女性がタクトに近づいて質問した。
「あれ?今日はかわいい子を連れてきたんだねー、君の名前は?」
小柄で髪が桃色という特徴的な女性、その質問にタクトは少し照れながら答えた。
「風雅タクト...です。」
「タっくんか!よろしくね!で、タっくんはこの【戦い】に参加するの?」
「いいや、コイツはただの見学だ」
後ろから上田がタクトの肩を掴み、言う。
「そうなんだ、私は 五月菜々、よろしくねタっくん!」
「う、うん」
「ほら、タクト、ここに書いてあるのがこの【戦いのルール】だ、これを読め」
「あ、ああ...」
白い壁に文字が彫られてて、順番に【戦いのルール】が彫られてある、そこにはこう彫られていた。
【戦いのルール】
一、この戦いは白のチームと黒のチームが八対八で行う殺し合い。
二、白のチーム、または黒のチームが全滅か、一時間以内に争いが終わらない場合はまた次の戦いに引き継がれる。
三、私物持込は禁止。
【鍵のルール】
一、誤まって破壊、又は見つからない場合は再発行します。
二、自分が望んで他人に鍵を託した場合はルールを反していると認定し、この世から存在自体を消します。
タクトはそれを見て、一つある事に気づく、タクトが鍵を謎の大男から託されたことだ、鍵のルールに反したからあの大男は消えた、それを知ったタクトは嫌気が差した。
すると、その部屋全体の重い空気は終盤を向かえ、上田が言葉にする。
「よしっ、そろそろだ、行きますか!」
その気持ちの入った上田の言葉は、タクトの聴く上田の最後の言葉だった。
。゜(゜´ω`゜)゜。