八話目『【力】と状況判断偏 壱』
退屈そうな授業にタクトは眠気に襲われる、しかし眠気に負けない様に貧乏ゆすりで寝ないように誤魔化す、それでも眠気は何度も襲い、タクトを困らせる、まるで糸一本の上に立っているかのような感覚で、その糸から落ちたら完全に寝てしまう状態なのだ、そして、ついに目を閉じて、完全に眠ってしまった。
でも、そんな悠長はしてくれなかった、タクトのその眠気を一瞬にして吹き飛ばした魔人が現れたからだ。
「授業を....ちゃんと....聞けっーーーーーーー!!!」
そう、授業を行っている先生だ、タクトはあまりの驚きに、つい言葉が出てしまった。
「は、はい!三時のオヤツはりんご!」
その言葉が教室全体を笑いに変えた、先生の注意だけで済んだのは良かったが、タクトは顔を真っ赤にして、三秒前の自分を殴りたいという思いを強めた。
____昼のチャイム____
タクトは昼のチャイムと授業の終わりの境目を狙い、席を立って教室を出た。
そして教室を出ると四階にある屋上へと足を運び、屋上の扉を開いた。
なぜ屋上へとタクトは向かったかというと、それは登校中の出来事、突然出会った上田条という男からこう言われた、「ではタクト君、俺は時間がないし、急いでるからまた昼に学校の屋上で!」と言い逃げされ、行かないと行けなくなったわけだ、そして屋上の扉を開き、顔を覗かせると誰も目に映らない。
「あれ?確かに屋上だって言ってたはず...」
「おー、来た来たー」
その声の方向はタクトの前の方向ではなく、背面から聞こえてくる、その方向を振り向くが、太陽の光のせいで上手くは確認できない、だが確かにそこに人影が横たわっていた。
「待ちくたびれたぜー、ささ、こっちこっち、俺の女性のタイプの話でもしようか」
その口調は確かに上田さんだとタクトの中に確信の芽が出る、そして上田条の近くまで行くとタクトは呆れた顔で言った。
「そんな話はどうでもいいです、僕が聞きたいのは今何が起きてるのかって事です。
」
「わかってるわかってる、さぁあ座りな」
タクトは長話を予想に上田の隣に座った、座ると上田は口を開き、言った。
「簡単な事だ、お前は契約し、契約条件で【力】を手に入れる、そして契約したからその【力】で戦いに参加する...これだけだ」
タクトは上田の話を聞き、上田の方に手の平を広げ、呟く。
「待って、【力】ってなんなんだ?それとその【戦い】をもっと詳しく。」
「はぁー、わかったよ、【力】ってのは通常の人と異なる物、その【力】は人によって形が違う、俺の場合はこれになる」
上田は自分の白の鍵を鞄から取り出すと、勝手にその鍵は光りながら形を変え始めた、そして細長く白い拳銃の形に一瞬で急変化した。
「じゅ、銃!?」
「ああ、まぁあ銃だな、でも普通の銃じゃないからな」
「普通じゃないってどういうこと?」
タクトは疑問を投げかける、それを聴いた上田がうーんっと言いながら、何かを探ってる素振りを見せる。
「じゃあ、この石を適当に投げてくれ」
「ん?投げればいいの?」
「おう!そして俺は目を瞑りながら見事に命中させてやる」
「じゃあ、行くよ」
タクトは少し疑いながらも渡された石ころを適当な所に目掛けて、精一杯力を振り絞り、投げた。
上田が針金を引く、そして撃ち込まれるのは弾ではなく、謎の光が銃口から発砲された、そして上田が撃った位置は完全にタクトが投げた石の方向とは全くの真逆なのに、まるで謎の光がその石を追うかの様に素早く動く、そして見事空中で石を貫通させた。
「ん!?す...すごいね...」
タクトは驚いた、それは漫画や小説の中にしか存在しないのかと思っていた【必殺技】みたいな物を目の前で見せられて、タクトは胸の高まりが増してく、(もしかして僕にもこんなかっこいい事できるのかな)と少し期待しながら上田に聞いた。
「それは、僕でもできるの?」
「ん?何言ってんの?できるに決まってるじゃん!ほれ、鍵を取り出して、武器になれ~とか何でもいいから念じればいい、お前の性格などから武器は作り出されるから」
「う、うん、じゃあ、やってみる」
タクトは首に飾っていた【白の鍵】を取り出すと、武器になれ~と強く念じた、するとその想いに答えるかのように鍵は光を発し始めた、そして段々鍵の形が不自然になってタクトの手の上で形を変え始める、漸く鍵が形を変え終わり、タクトは期待を倍にした、しかしその期待は一瞬で崩れ落ちた。
「何これ?....ヘッドホン?」
タクトの手にあった鍵は白いヘッドホンへと変わっていた、それと同時にタクトの期待への情熱は完全な氷河と化していた。
何もかもを状況判断偏で教えします(`Д´)