三話目『真実と失い』
「はい、これで授業をおわる、はい皆帰れー。」
学校の授業が無事終わり、タクトの一番待ち遠しい時間がやってきた。
校舎の出口を出り、目の前を真っ直ぐ行くと屋上で話した女性が約束通りに校門の前で髪を撫でて待っていた、直ぐにタクトは彼女の傍に駆け足で走っていった。
「...ハァ...ハァ...、ごめん、待った?」
「うんん全然!、では行こうか?」
「う、うん」
「で、帰り道はどっちなの?」
タクトが疑問を投げかける、校門を出た所に道が二つに分かれているのだ、タクトは左右どっち?という指の合図に若葉恵美は答える。
「ん?いや、今日はタクト君の家にお邪魔させてもらうつもりだけど。」
タクトはそれを聞いて、(なんとマイペースなっ!?)と心の中に小さく呟いた。
「う、うん、いいよ、どうせ両親は仕事で遅くにしか帰ってこないわけだし」
夕日が二人を慎むようにその赤い光を照らしている、電車が通っていく音、カラスの鳴き声、自分達の足音、そして微かに若葉恵美の良い匂いがタクトの鼻のピンポイントに当る、そして二人の雑談も束の間、とうとう少年タクトの家の前に着いてしまった。
「ここ?」
「そうだよ、少し散らばってるかもしれないけど」
そこはごく普通の一軒家、タクトが先に玄関に手を伸ばし、扉を開いてタクトが後ろを振り向いて声を掛ける。
「はいって」
恵美はタクトが先に行くのに続いて家の中にそっと足を運ぶ、そして小さな声で「失礼しまぁーす...」と一言を口にする。
二人は一緒にタクトの部屋があるという二階に移動し、タクトの部屋に入り込む、そこはまるで数日間放置されたかのような部屋、タクトは流石にこれはやばいと思い恵美を部屋から追い出し、一言言った。
「そこで待ってて...!直ぐ片付ける!」
「は、はい!?」
タクトの部屋からは物凄い音が恵美の耳に聞こえてくる、まるで中が工事中かのようなそんな音が聞こえてくる、三十秒くらい待っていると部屋の扉がバッっと開き、中からは息切れをしているタクトが出てきた。
「お、お、おまたせー..ハァ...ハァ..待った!?」
「う、うんん全然...なんかすごかったね」
「いやー、【家流瞬速お片づけ】ってやつ。」
恵美が部屋の中に頭を覗かせる、まるで部屋が大掃除の後みたいに片付けされてて、何もかもがピカピカと光っている。
恵美はタクトに手招きされ、部屋に入った、そして早速本題になる話題が一瞬にして部屋の空気を変える。
「じゃあ、簡単に言うと、この私達がいる世界の他に、世界が二つあるんだよ」
「二つ?」
「そう、【現世代の世界】は私達の世界だね、で【白の世界】と【黒の世界】。」
「てことは、さっき言ってた【白】ってのは【白の世界】に関係あるって事なんだよね」
タクトはまるでひらめいたみたいに口にする。
「そう、渡された鍵を見せて」
「あ、うん」
ポケットから鍵を取り出すと恵美はその鍵に向かって指を指す。
「ほら、青白く光ってるでしょ、世界も別にあるとして、鍵も二種類あるの、タクト君の鍵は【白の鍵】、青白く光ってるならば【白】の証拠、そしてもう一つ、【黒の鍵】ってのがあるの、もしそれだったら、灰色に光ってるはずだよ、ここまではわかった?」
「う、うん」
「ほら、私の鍵」
恵美は首に飾っていた【白の鍵】を取り出して、タクトの前に振り翳す。
「え?でも、そっちの色は完璧な白だよ」
「さっすが!そうそうタクト君は完璧な【鍵の主】になってないんだよ、てことは契約するってこと、鍵に誓ってルールは守りますって言うの。」
「う、うん、じゃ、じゃあ今ココで契約すれば良いじゃん...ん!?」
タクトが言い終わったその直後、恵美は自分の指でタクトの口を塞ぎ、呟いた。
「それなんだけど、【人を殺す度胸はあるの?】」
「...!?」
「鍵に契約を果たすって事は、【人を殺す事を厭わない人だけ】それを君ができるの?」
恵美はゆっくりと自分の指をタクトの口から遠ざける、そして笑みで一言を話す。
「ないなら、これで私達の関係はお終い。」
「.....ってことは、若葉さんは人を...殺したって事....?」
タクトは怯え怯えで彼女に疑問を投げた。
「そうだよ、じゃあ、君にはその契約果たせそうにないし、私行かなくちゃならないからバイバイ、【また、”会える日を”】」
彼女、若葉恵美はタクトの前を通り越し、さよならっと小さな言葉を言い残して玄関を出た。
(´・ω・`)