アイドルloveな女の恋 (1)
フランの視点。次は今回のターゲットの女の子視点です。
石沢真弓
1年3組1番。人気アイドルグループの『ライトニング』の大ファンで、特にメンバー最年長の鶴崎黎矢がお気に入り。
玉木晴彦
真弓の中学生時代のクラスメートで、犬猿の仲。今は隣町の高校に通っている。
俺は今日から永成高校の1年3組リア充化計画を実行に移した。…といえば大げさだが、実際に今日からは1年3組の生徒全員の恋を叶えなくてはならない。
「あんた、なに震えてるの?」
「ま…畑野、いたのかよ!!」
「オレならとっくの昔にここにいる」
「あ…そう、か」
やっぱり舞花がいると調子が狂うが。
「…で?この教室には何人生徒がいるんだ?」
「それぐらい、自分で数えろ…四十人くらいだな」
数えてみたところ、生徒は三十七人。男子が二十人、女子は十七人のようだ。
「あんた、本気であいつら全員リア充にする気?」
「当然だ」
そう言いながら、俺は一番前の右端の席に座っている女子に目を付けた。ショートカットの髪に切れ長な瞳。勝ち気そうな印象だが…
「やだぁ~!!レイヤ君超カッコいい!」外見と似ても似つかない甲高い声。俺は驚いて飛び退いたが、姿が見えていないことを思い出してほっとした。ふと振り向くと舞花が嫌そうな表情でその女子を見ている。
「…ああいうやつは嫌いか?」
「まあな。教室の中で黄色い声なんか出すなって思う」
「そういえば、さっきあいつが言ってたレイヤ君って、何だ?」
「多分、アイドルグループの『ライトニング』のメンバー、鶴崎黎矢のことだろう」
アイドル…アイドルって何だ?と思ったが、とにかくターゲットは決まった。
「決まりだな。その鶴崎黎矢とあの女子をくっつける」
「はぁ!?あんた、アイドルと一般人をくっつけるつもり?」
「…何か問題でもあるのか?」
「まあ、あんたには分からないか…アイドルっていうのは、普通の人間には手が届かない、言うなれば雲の上の人なんだよ。あんたたち天使が人間と関わらないように、一般人とアイドルは簡単に関わらない。ましてや人気アイドルグループの『ライトニング』の一員となんて、無茶にも程がある、諦めろ」
何かボロクソに否定されてしまった。こうなったら仕方がない。
「畑野、一応離れていろ」
「え…ああ」
全身に意識を集中させ、天使の力を利用するための準備をする。普段はしまっている翼を軽く羽ばたかせ、俺はこの女子に向けられている意識を読み取った。
「終わった?」
「…ああ」
「一体何をしていたんだ?」
「あの女子の一般的な情報と彼女に向けられている意識を読み取った」
「そう…で、どうだったんだ?」
「彼女の名前は石沢真弓、15歳だ」
「へえ、一番なのにいなんだ…あ、いい、続けて」
「あ、ああ、石沢真弓に向けられている意識から読み取ったところ、彼女におもいを寄せている人物が一人いる」
「良かったじゃん!で、誰なんだよ?」
「それが…あまりに想いが微弱で、発信元の人間が分からないんだ…」
「そうか…」
とりあえず、石沢真弓に想いを寄せている人物が誰か分からなければカップリングは成功しない。今日の午後にでも探しに行くか。