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壊れた世界の反逆者 第一部 -断罪の天使編-  作者: こっちみんなLv30(最大Lv100)
第三章:世界を嫌悪する断罪の天使長の黙示録
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(Other Side) 枷 Case:真田

GW、沖縄行ってきました!

と、言うわけで変則的な投稿となりますが、ご了承下さい。

明日も投稿予定です。

ではでは、数少ない読者様、お暇な時にどうぞ。

「何とか意識は戻ったみたいね。でも、驚いたわ。おじいちゃん──いいや、桐人がこんな恐ろしい力を持っているなんて」

 アダムの地下基地の病棟の一室。

 そこで、救命具を取り付ける桐人を見つめながら、エレンは呟く。

「なるほどな。リチャードさんの異様なまでの強さは、何も化身『マルドゥーク』だけではなかったという事、か」

 背を壁にもたれ掛け、サイモンは呟く。

「ルシファー……私達、人間をミカエルの呪縛から護ろうとした救世主。まさか、桐人がその救世主の生まれ変わりなんてね」

「道理で、『C』の首領と司祭はお前だけでなく桐人も付け狙ったわけだ。それだけのアストラルのエネルギーがあれば、クトゥルフをこの地に現界させ、世界を破滅する事も容易い」

「……そうね。破滅、か。危なかったわね。あのまま桐人が暴走をし続けたら、そんな大層な事をされなくても世界が滅びそうだったわ」

 そう言い放ち、エレンは苦笑して顔を桐人から背ける。

「はは、まさかお前の罵言雑言でおとなしくなるとはな。桐人とお前は良い夫婦になれそうだ」

「うっさい! なんなのよ、こいつはっ! ドMかっ!」

 サイモンの茶化しに、エレンは顔を赤らめて桐人を指差し、叫ぶ。

「いいや、どうやらこの現象は、そういう訳ではないらしい。シモーヌの話だと、それは桐人の内にある『傲慢』が静まったからだと言っていたな」

「え……?」

 サイモンの言葉で、エレンは意を突かれた様な表情となる。

「ルシファーは七つの大罪、『傲慢』を司るアビスの住民。その精神力は、自身を傲慢とすればするほど強大になる。……まあ、自意識過剰で常に心では相手を下に見ている桐人らしい住民だな」

「そうね」

 そのサイモンの言葉に、エレンは即答する。

「この馬鹿は、いっつもいっつも優しい顔しながら相手の事を見下してるクズ野郎だわ。どうして周りはこいつのそんな部分に気が付かないのかしら。その癖、人気者だし、チヤチヤモテモテされるわ、告白されるわ、修羅場と化すわ──とりあえず、もう一回殺しとこうかしら」

「おいおい、それは桐人に悪気があった訳ではないだろうがっ! どうしてお前はそんな直情的なんだ!」

 雷撃を拳に纏い、寝ている桐人に振り上げようとするエレンを、サイモンは手に持つ錫杖から発現した『無』の空間で必死に制止する。

「ふんっ!」

 しばらく、押し問答が続いた後、エレンは顔を背ける。

「全く」

 嘆息し、サイモンは呟く。

「……まあ、そんな桐人の『傲慢』をお前のどぎつい口が畏縮させ、そして力が静まったらしい」

「へえ。じゃあ、また桐人が暴走しそうになったら、私がこいつのダメだしをこれでもかという位言いまくれば良いの?」

「まあ、それも一応は効くが、ルシファーの力が覚醒した今、普段からその『傲慢』をセーブする必要がある。こればっかりは、桐人が意識して変えていかねばならんな」

「あ、そう。良い薬ね。この脳内ウルトラナルシストを更生させるのには良い機会かもね」

 冗談でも言う様に、しかし、そのエレンの桐人を見つめる視線は睨みつける様に鋭い。

 そのエレンと桐人を見、サイモンは一寸、戸惑うが告げる。

「だが、それだけでは未だ足りない。ルシファーはミカエルの堕天によって半狂乱状態にある。それは、徐々に桐人の『人』の部分を喰らい、やがて止まることの無い暴走をする」

「え、何よ? 止まることの無い暴走……?」

「そうだ。そうなってしまったら、一生、桐人は桐人では無くなり、ただ破壊と服従をさせる事を繰り返す化け物となる」

「じゃあ、他に何をすれば良いのよっ!?」

 サイモンの口から発せられる言葉に、嫌な気配を感じたエレンは叫ぶ。

「いや、これ以上は私達は何も出来ない。『浸食』を止める手立てはシモーヌでさえも方法が分からない。だが、もう一人、その進行を遅らせる役目を果たせる者がいる」

 そう言い、サイモンは病室から廊下に繋がるドアへ目を向ける。

「盗み聞きは良くないぞ。まあ、いい。これからお前の役割をエレンに伝える所だったんだ。入れ」

 サイモンが告げると、ドアがゆっくりと開き、白髪で病弱そうな白い肌の男が病室に入る。

「真田……?」

 エレンはその男の名をとても意外そうに口にする。

「そうだ。真田の減退の鎖は、内の精神力を削る事が出来る。それは、桐人の中に眠るルシファーの力でさえもだ。だが、真田。本当に良いのか?」

「ええ。固定化した鎖は、俺の手を離れても常に存在させる事が出来る代わりに、その力の乖離の影響で、俺自身の精神を蝕み続けるでしょう。ですが、それでも俺には桐人さんを助ける恩がある」

 そう告げる真田の声を聞き、サイモンは悟る。

(こいつは、私と同じ覚悟を持っている)

 ふふ、とサイモンは苦笑し、口を開く。

「そうだな。今、お前がここにいるのは桐人のおかげだ。命の恩人の為に枷を付け、生きてゆくのも良いのだろうな」

 そう告げたサイモンは、まるで自身に言い聞かすかの様に誰もいない天井へと顔を挙げる。

「枷、ですか。そうですね。俺は、かつて自身が殺してしまった同僚達の為にも、苦しみ、もがき、闇に生きましょう」

 サイモンの言葉に頷き、真田は自身の手を見つめた。



「ケケ、闇に生きる、か。今思うと、恥ずかしい事を言っちまった」

 そう言って、真田は苦笑する。

「だが結局、俺はその闇に依存しちまったのかも知れねえな。何だかんだで随分と楽しく過ごしちまった」

 そう呟き、真田はある少年の事を想う。

「無駄に長く生きたせいで、面白い馬鹿にも出会っちまったしな」

 戦場の爆炎、氷柱、悲鳴、怒号──悲惨な世界の『闇』が飛び交う上空へと、真田は顔を挙げる


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