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壊れた世界の反逆者 第一部 -断罪の天使編-  作者: こっちみんなLv30(最大Lv100)
第三章:世界を嫌悪する断罪の天使長の黙示録
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(Other Side) 盤を動かすもの Case:エレン

 淡い光が照らしだす暗雲。

 その僅かな光で映し出される荒涼とした大地。

 その大地を不規則に暗雲から撃ち出される雷光が抉る。

 その空間に立つ、雷光を象徴するかのような色彩の髪の美女と仄暗い大地を象徴するかの黒いローブを纏った老婆。


「『悪』、ね。確かに桐人と私が殺した『あいつ』は人の仇名す『悪』だった」


「ふふふ。だからこそ、私の能力であの別世界の創造神を引き出す事が出来た。強い者ほど強い『悪意』に触れやすいからねぇ……」


 両者は不敵に笑み、相対する。


「あんたの『アンリ・マンユ』の固有能力は、あらゆる他者が『悪』とするものを具現化させる。あんたには、聞きたい事が山ほどある」


「敵である私が、そう簡単に口を割ると思っているのかい?」


 にたりと、老婆──キザイアは笑んで告げる。

 だが、エレンはその笑みを鼻で笑う。


「ふん。敵、ね。私には、あんたは周りを引っ掻き回して楽しんでいるように見えるんだけど?」


 そのエレンの言葉に、キザイアは少し眉を吊り上げる。


「ほう。何でそう思うんだい?」


「だって、そうじゃない」


 エレンは、キザイアの目を威嚇するように睨みつける。


「あんたでしょ? 京馬君に世界が崩壊する夢を見させたのは」


 問い掛けるエレンの口調はしかし、断言の様にはっきりと告げられる。

 その問い掛けに、キザイアは一寸顔を伏せ、そして。


「ふ、ふふ。あは、あはははははははっ!」


 暗雲に向かい大きな笑い声をあげる。


「どうして、分かった!? 何故、貴様はそれを知った!?」


 その問いをしたキザイアの声色はとても喜々としていた。

 さも、楽しそうにキザイアは興味深げな顔をする。


「やっぱりね。アダムの誰かが思い描いた人類の崩壊と、京馬君の死への潜在的な恐怖を掛け合わせた夢を創り出し、見させたというところかしら。それを知ったのは私というより桐人ね。まずその考察に至った発端は、京馬君にその夢を見させた意味が何であったのかを考えた所からかしら?」


 そう言って、エレンはため息を吐く。


「本当に、理解に苦しんだわ。天使であってもそんな事したら何も得はしないでしょうし、私達アダムもこんな第三者の横入れが無ければ京馬君を拘束した方が動きやすかった。では、誰が? そこで現れたのが、あんたの肩入れしているアウトサイダー」


「ふふ、だが私達が協力しているアウトサイダーにもその夢を見させるメリットというのが無いと思うが? そもそも、そんな貴重な者をお前達アダムよりも先に見つけたら浅羽はもっと無慈悲なやり方で拘束するだろうね」


 キザイアの言葉に、エレンは口を引き攣らせ、言う。


「そうなのよ。だからこそ、そのアウトサイダーの意向とは異なった行動が逆に絞り出してくれた。……あんた達、『ゾロアスターの悪星』の仕業とね」


「それだけで、私達の仕業だと? ふふ、それは早計過ぎるんじゃないかねえ」


「そうね。それだけじゃあ、あんた達とは断定出来ない。『三年前』に私達が滅ぼした『C』の教団のように、アダムに敵対している奴らは他にもたくさんいるからね。だけどね」


 エレンは訝しげにキザイアを見つめ、続ける。


「ゾロアスターの悪星、いいやキザイア・メイスンという人物の過去の行動を調べさせてもらったわ。……正直、意味が分からなかった。紛争中の国とテロリストを相手に、ある時は国を、またある時はテロリストを補助したり邪魔したり……結局、あんたの介入でどちらとも甚大な被害を受けた結果で終わった」


「何が、言いたいんだい?」


「あんたは、争いに勝ち負けを求めているんじゃない。如何に、自分が面白くなるかだけで争いに介入している。それは、今回も同じ。あんたはこのシナリオに京馬君を立たせる事で自身の愉悦を満たそうと考えている」


「ふふ。そうかい」


 エレンの告げた言葉にキザイアは頷き、そう一言言う。


「断定、と言う事で良いようね。可笑しいと思ったのよ。幾ら考察してもあんた達がこの戦争に介入するメリットが見えてこない。アウトサイダーのようなアダムへの恨みや、野望すらない軍事介入組織。だけど、アウトサイダーにはほぼ無償で協力しているそうじゃない? 一体、何が目的なのか。でも、今の考察だと合点がいく。……あんた達が、本当に酔狂であることもね」


「素晴らしいね。さすが、アダムでも五本指に入る『神雷を超越する女帝』。腕以外にも頭も切れる」


 愉快に、そして下卑た笑みをキザイアは浮かばせる。


「だけど、一つの疑問が私にはある」


 そのキザイアに、再びエレンは問う。


「そんなあんたが、どうしてそこまで咲月ちゃんを付け狙うの?」


 そう問いを投げかけたエレンは険の表情でキザイアの瞳を見つめる。


「それは教えられないね」


 キザイアは再度、下卑た笑みを浮かばせ答える。


「『神の実から生まれ出でるもの』」


 そのキザイアにエレンはその一つの単語を告げる。

 それは、何かの事実をキザイアに突き付けるようだった。


「何だい、それは?」


「恍けないで頂戴! 私と桐人は、その存在を『三年前』の戦いで知っている! 世界を壊し、新たな世界を根付く、アビスの中でも最上位とされる存在!」


 エレンは、激情したような、荒々しい声で叫ぶ。


「私と桐人が殺した『C』の司祭は、その一人である『クトゥルフ』と関係を持っていた! そいつから聞いたのよ! その『神の実から生まれ出でるもの』の中でも異質と言われる存在、『神の木に纏わりつく蔦』の事を!」


 エレンの告げた言葉に、キザイアは目を見開く。

 その眼球はエレンを喰い殺さんとばかりの殺意を放つ。


「お前は、知ってはいけない事を知ってしまったようだね」


 キザイアが言葉を放つと同時、その体に漆黒が纏わりつく。


「ふふ、分かりやすい。図星のようね」


「お前の『悪』に、恐ろしきと思うものに、殺されるがいい」


 キザイアを取り巻く漆黒が晴れ、その変化した姿が顕わになる。

 それは、エレンの体の十倍は誇るであろう巨人。

 全身には管の様な突起物が垂れ下がり、また突き出ている。

 その材質は木製のようでかつ鉄のようでもあり、様々な配色がある。


「フグアアアアアアアアアアアァァァァァっ!」


 籠るようで、しかし空間全体に響き渡る声が辺りに衝撃を生む。

 その声を発している顔には目と口の周辺のみを覆うマスク。


「来たわね、テスカポリトカ! リベンジといくかしら」


 手に雷光を迸らせ、エレンは呟く。

 その頬には、冷や汗が伝う。


「『風の担い手(ウィンド・べアラー)』!」


 エレンは緑の魔法陣を発現し、叫ぶ。

 エレンの周りを迸る緑の粒子が舞う。

 そして、その現象が終わるや否や、エレンは一瞬空間から消え失せる。

 その一瞬の後、エレンの分身がテスカポリトカを囲う。

 否、それは光を超えたスピードで駆け出すエレンの残像であった。

 その残像が放った多角多重の雷光がテスカポリトカを包む。

 だが、その雷光の包囲はテスカポリトカに至る前に消え去る。

 否、崩れるように瓦解してゆく。


「さすがね。あらゆる崩壊を生じさせ、また再生させる能力……サイモンでさえも戦慄させたあんたの力、下手したらミカエルよりも厄介!」


 エレンは、不規則に残像を空間に生じさせながら雷光を放ってゆく。

 しかし、その連撃は、一撃でさえもテスカポリトカに届く事は無い。

 だが、それでもエレンは雷光をその化け物に放たなくてはならなかった。


「エレン……よくも、この私を、殺してくれたなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 テスカポリトカの腹部から空間に拡散するように声が響く。


「ち、来るか!」


 舌打ちをし、エレンはさらに攻撃と残像の数を増やしてゆく。

 しかし、その残像が一つ、また一つとガラスが割れるように瓦解してゆく。

その現象を確認した後、エレンは即座に残像と共にテスカポリトカから離れてゆく。


「うあああああああぁぁぁぁぁっ! 許せない、許せないぞ! 『鏡面殺解ミラー・ディスマンティング』!」


 テスカポリトカの腹部から放たれる男の声と共に、その周囲に禍々しくも神聖な氣が発散される。

 一瞬だった。

 エレンの捕縛結界全てが、消え失せた。それはまるで鏡をハンマーで壊したような瓦解であった。


「再構築!」


 無に限りなくなった状態の空間でエレンが叫ぶ。

 すると、空間は寄り集まる様に修復されてゆく。


「消え去れ!」


「ぐ、くそ……!」


 一寸の隙であった。その僅かなエレンの隙にテスカポリトカは眼前まで迫っていた。

 とてもその巨体とは思えない程の超常的な速さで、エレンに極太の腕の突きを繰り出す。

 エレンはその攻撃を自身の光速以上の速さでも避けられないと悟り、左腕で受け止める。


「うああああぁぁぁぁぁっ!」


 叫びと共に、エレンの左腕はガラスの様に粉々に砕け散る。

 続く、テスカポリトカの連撃を雷光を凌ぐスピードで後方に移動し、躱す。

 テスカポリトカの振るう腕の周りの空間がまたガラスの様に瓦解してゆく。


「規格外、ね。やっぱり、こいつに出し惜しみは出来そうにない」


 唇を噛み、エレンは呟く。そのエレンの消失した左腕の先端、電流が迸り、元のシルエットを形どる。すると、その電流に沿うように左腕は浮き出るように再生される。

 再度、エレンは残像を造りながら雷光の連撃をテスカポリトカに浴びせ始める。


「ふふふ、電子と陽子との結合で生じた元素をさらに連結させ、体を再生させる。それを一瞬で出来る芸当。お前は、やっぱりこの世界の枠組みを遥かに超越しているよ」


「五月蠅い、黙れっ! あんた毎、こいつをぶっ飛ばしてやる!」


 空間内に響き渡るキザイアの声にエレンは怒号で答える。


「しかし、やはりこの世界……アビスの最も近い場所に配置されているだけある。とても、興味深い」


 キザイアはエレンの怒号を無視し、呟く。


「フグアアアアアァァァァァッ!」


「また、来るわね! もういいわ、手加減出来ないのはもう分かったから!」


 テスカポリトカの周囲にまた、禍々しくも神々しい氣が拡散してゆく。


「やってやるわよ! 今度は、あん時みたいに失敗しないんだから!」


 険の表情で、エレンは自身に叱咤するように叫ぶ。

 周囲の空間が崩壊する中、エレンはテスカポリトカへと光速で向かって行く。

 ゼロコンマ──幾つだろうか。

 それは、人では捕え切れない程の一瞬でさえも、永遠と感じる程の僅かとも言えない程の一瞬の間での出来事である。

 数々のテスカポリトカの力の氣。

 それは、物質世界で言えば最少の最少の隙間。

 その網目でさえもとてつもなく広いと感じる合間を、エレンは自身の体を電子にまで『解体』させ、一直線に進んでゆく。

 電子の列の後続、氣に当たられ、一つ、また一つとエレンの体の一部が崩壊してゆく。


(失敗したら、死ぬ!)


 最少の時間と体。

 エレンの体感は極限のスローモーションとなる。

 覚悟と、決意を込めて、その奔流のような電子の列はテスカポリトカの氣をうねりながら躱し、進む。


(桐人……!)


 そのエレンを突き動かすのは、人を遥かに超越し、更には世界の構築を司る大元をも凌ごうとする一人の男。

 辿りついたのは、一つの障壁。

 氣との合間に存在する障壁で電子は一気に収束、寄り固まり、肥大。


「馬、馬鹿なっ!」


 一瞬で、しかも自身が放った万物を悉く崩壊させる氣を縫って現れた者の姿にテスカポリトカ、否、その創造神を宿した男、否、否、その存在を能力で『発現』させたキザイアは、驚愕の叫び声をあげる。


「フル・バースト!」


 エレンは、機械仕掛けの右腕をテスカポリトカの腹部に当てる。

 その右腕に搭載されたモーターは瞬時に超高速の回転を行う。

 甚大な、エレンの超凝縮された氣は、テスカポリトカに一気に放出される。


「マッシヴ・エレクトロニック!」


 魔法名として告げられたその一撃の名は、さらにその存在を固着させ、威力を強めてゆく。

 更に、


「『過負荷駆動(オーヴァー・ドライヴ)』!」


 エレンは、自身の限界を超える術を言い放つ。


「や、止めろ! 止めろおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 うろたえ、叫ぶキザイア。

 だが、エレンは不敵に笑み、言葉を──キザイアを絶望に叩き落とす言葉を叫ぶ。


「『全てを絶つ雷鳴エクスターミネイテッド・サンダー』!」


 ひたすら迸る白い閃光。

 どんな闇でさえも、どんな色彩さえも呑み込む、暴虐の白。

 それは、聖でもなく邪でもなく、単純明快な、全てを『絶』する象徴のようであった。

 エレンから放たれた、マッシヴ・エレクトロニックは、その極白の一撃へと姿を変え、自身の正面の対象を悉く呑み込む。


「意志の中枢の一人である私が、俺が、僕が……!」


 が、その一撃をキザイアは無形の体に変化させ、その無数の手で受け止める。

 そのキザイアがエレンの一撃に耐えうるは、『悪』。

 あらゆる生き物から搾取し続けた、狂気、恐怖、罪。

 様々な、『悪』を根源とした精神力。


「予想外だ! ガブリエルも、ルシファーも、ミカエルも、私の! 俺の! 僕の! 手の内であったと思っていた……! だが、こいつは、こいつはああああぁぁぁぁぁっ!」


 エレンの放った一撃は、自身の捕縛結界を悠々と突き抜け、メイザース・プロテクトを突き抜け、そして、『この世界』の大気をも突き抜けてゆく。


「嫌だあああああぁぁぁぁっ! 終わりが見えないのは、嫌だああああぁぁぁぁぁぁッ!」


 絶望の叫び声をあげ、キザイアは無の空間で消滅した。




 喧騒が聴こえ、あらゆる破壊と殺人の行為が空間を彩どる。

 地獄絵図の中、その空間だけは忙しなく指と足を動かす音だけが響く。


「エ、エレンさんっ!? 大丈夫ですか、あ、あわわわ! お前達、『充電』の準備を!」


「銀二……?」


 倒れ伏せるエレンを、アダムの整備班リーダーである銀二が顔を覗かせ、うろたえながら見つめていた。


「いきなり捕縛結界を発動したと思ったら、こんな酷い有様に……! エレンさん、大丈夫ですか!? 僕の顔が見えます!? 僕の愛しているものは分かります!?」


 必死に、エレンに呼びかける銀二は、酷く動揺しているようにエレンは感じた。


「だ、大丈夫、よ」


 エレンは普段通りの声量と口調で銀二に言おうとした。

 が、その声に力が無い事を知り、エレンは疑問に思う。


「つ……!」


 途端、激痛がエレンを襲う。


「良かった……! 意識はあるみたいだ! お前ら、早く、早く!」


 銀二に急かされ、班員がボックス型の機械をエレンの前まで持って行く。

 が、エレンを見た班員達は、その表情を引き攣らせ、足早に元の持ち場へと戻ってゆく。

 エレンは装置から出る配線を右腕で掴もうとした。

 しかし、右腕の反応はない。

 否、反応していないのは右腕だけでは無かった。

 下部、両足も全く反応が無い。

 動かそうとすれば、その分だけ強烈な痛みが込み上げてくる。

 それは、エレンに自身がどのような状態であるのか判断するのに充分過ぎる程の情報だった。


「エレンさん、しっかり! 大丈夫、両足と右腕が無くてもエレンさんは美しいですよ~!」


 馬鹿、励ますなら、もっとマシな励まし方しなさいよ。

 と、エレンは口に出そうとしたが、どうにもその気力でさえ残っていない程、自身が衰弱しているのを理解する。

 エレンは、自身が何故、このような負傷を生じたのか理解していた。

 まずは、両足。

 これは、自身の体を極限まで『解体』した時、電子の列でテスカポリトカへ向かう際、後部の電子が崩壊の『氣』に当てられ、消滅した為。

 後部にあった電子の列は、エレンの下半身の変換場所に当たる。

 更に、右腕は極限まで精神力を超凝縮にし、氣へと変換して放った『衝撃』。

 あまりにも高濃密に凝縮した為、『アビスの法則』内でも、その一撃に体が耐えられず、その奔流となる右腕が消滅してしまった為だ。

 本来なら、テスカポリトカ単体ならば、そこまでせずに殺すことは出来たであろう。

 しかし、


(……キザイアを殺し切るには、あの最高の一撃を浴びせるしか無かった。まあ、仕方ないことよね)


 人の皮を被った、人ではない何か、否、『生物ではない何か』を滅するには、あの渾身の一撃を放つ必要があったとエレンは決断した。

 そこに、後悔はない。

 下手したら、人類の大敵であるミカエルよりも厄介な存在であるあの異質な化け物を倒す事が出来たのだ。むしろ、自身の命は健在した。僥倖と言うべきか。

 それに、あのままテスカポリトカのみを倒したとしても、キザイアは自身の強靭な精神力でまた『悪』から再度あの災厄を発現させるだろう。そうなったら、エレンに勝ち目はほぼ無くなっていた。

 だが、エレンはため息を吐く。

 銀二が差し出した配線の先端を左手で握りしめる。


(もう、私はこの戦いで役目を果たせなさそうね……)


 物憂げで、エレンは戦火が上がる夜空を見上げた。

この小説を見て下さっている数少ない読者様、毎度ありがとうございます。

ようやっと京馬達と夢子との対決に終止符が打たされます。本当だったらもう少し短くなる予定だったのですが、思った以上に長くなってしまいましたね。うーん、構成力がもっとあれば……


 さて、Scene22の解説に入ります。

 と、言っても大した解説は無いのですがね。とりあえず、ケルビエムの登場でいよいよ山場を迎えると思います。他は、色々とあるのですがそれはまた後々明かされるでしょう。


 そして、アルバートのパートでは御前の七天使を相手に自身の愉悦に興じています。アルバートは単体でも非常に強力な力を宿しているのですが、それ以上に厄介な者も多数従えています。自身の目的の為にアダムを本気で潰そうとしているので、その準備も着々と進めています。何やら色々と隠している彼ですが、全てが明かされるのは二部以降の中盤だと思いますね。まあ、第三章では戦場を眺めているだけなのでしばらくは出番がないです。


 最後に、エレンのパート。これが今回の解説で一番密度の濃い回と言って良いかも知れません。

 ええ、京馬に崩壊の夢を見させた張本人。それは、アウトサイダーに所属していたキザイアでした。その理由は自身のシナリオを楽しむ為。実に這い寄る混沌らしいと思います。

 そのキザイアが宿すのは、ゾロアスター教の悪神の頂点、アンリ・マンユ。

固有能力は、あらゆる『悪』を具現化するというもの。この『悪』というのは、どちらというと人の負と感じるものと言えば良いのでしょうか。憎むもの、恐怖するもの、カテゴリは様々です。そのキザイアが能力で発現させたのは、エレンの内で恐怖し、そして戦慄したもの。以前にエレンが桐人と共に殺したテスカポリトカを宿す者でした。その能力は、あらゆる崩壊を生じさせ、また再生させるというものですが、再生の方は今回全く使われていませんでしたね。というよりは、使われる前にエレンが一撃勝負に出た為ですが。正直言ってしまえば、長期戦になればなるほど、テスカポリトカのみでもエレンは不利になってゆきます。自身一人で対峙する事になったエレンはその前に短期決戦に臨んだわけです。テスカポリトカを擁する『C』の話は、それだけで小説二巻分になりそうなので、人気が出たら桐人過去編で作ってみたいと思います。多分、一生作れ無さそうですが。必要な時に断片的に回想が入る程度でしょう。

 ちなみに、エレンの固有能力である電気の流れを操るというものですが、要するに、『電子』って事です。電子を操れるんです。アビスの法則というこの世とは異なる事象でも、この能力は色々出来ちゃいます。例えば、陽子との結合、中性子の生成などで元素を構成させ、さらに結合、体を再生させる……などです。逆も可能で、それを利用したテレポート、自身の体の解体、物質の崩壊、しかしそれら多くは氣や精神力といったアビスの法則内の力学や量子力学が適用出来ない事象で限りがあります。また、体の解体でエレンが無事であると言う事は、意志はアストラルで構成されている為です。それこそがインカネーターであり、またエレンが特別である為なのですが、まあそれは後程。

 今回の戦闘では、インカネーターの最上位同士の拮抗した戦いを描写したつもりです。まるごと固有結界が破壊されたり、固有結界突き抜けて宇宙まで敵を吹っ飛ばすなんてのも、こんな実力者同士の戦いならではです。

 ちなみに、テスカポリトカもケツアクウァトルも一対で別世界の創造神であり管理者です。


 そんな満身創痍のエレンを余所に、物語は多くの思惑と共に大きく動こうとします。

 次回からは京馬の視点中心に話は進むと思います。

 では、Scene23もよろしくお願いします。


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