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もうすぐ誕生日・2

「それじゃ、順番が少し変だけど私達3人からの誕生日プレゼント」

朋ちゃんが代表で可愛いリボンがついた小さめの生成りのトートバッグをくれた。

中を見ると可愛らしいステーショナリーグッズがいっぱい入っていた。

「わぁ、可愛い! ありがとう。大事に使うね」

「それじゃ、これは私から」

「えっ! 瑞穂さんからも?」

「美緒ちゃんにとって石垣島で始めての誕生日だもんね」

そう言ってシンプルなストライプの紙袋をくれたの。

「開けても良い?」

「どうぞ」

紙袋を開けるとピンク色のキャップが入っていた。

つばの部分がチェック柄でつばにハトメで穴が三つ開けられている。

そして大きなピースマークのワッペンがついていて使い込まれた様なダメージ感が凄く良い感じだった。

「うわぁ! 凄い格好良い! どう? クール?」

キャップを被って見せると泉美達が大きく頷いていた。

「瑞穂さん、本当にありがとう。なんだか嬉しすぎて涙が出そうだよ」

「泣くのはまだ早いかな、こっちは岡谷から渡してくれって預かったプレゼント」

「パパから?」

瑞穂さんがカウンターの奥から持ってきてくれたのは凄く古い感じのするワインの木箱だった。

「瑞穂さん、これって?」

「ワインかもね。美緒ちゃんの生まれ年は良いワインが沢山あるから」

「ワインなんて貰っても困っちゃうじゃん。でも、高そうな箱だなぁ」

慎重に瑞穂さんから受け取ると泉美と朋ちゃんがテーブルの上を片付けてくれた。

静かにテーブルの上に木箱を置いてリボンを外した。

「なんか、ドキドキするね。美緒のパパのプレゼントってなんだろう」

「やっぱり、ワインなのかなぁ」

「でも、きっと素敵な物だよ。だってあんなに美味しいケーキを作る人だもん」

泉美が体を乗り出して、なっちゃんと朋ちゃんは立ち上がって箱を覗き込んでいる。

木箱の蓋をゆっくり開けるとモシャと音がして、沢山のピンク色の何かが箱から溢れ出した。

「朋ちゃん。何これ? これって……」

「うわ、綺麗! 泉美、ブーゲンビリアの花だよこれ全部」

「あれ? 美緒ちゃんどうしたの?」

私はなっちゃんが不思議そうに言うとおり泣き出していた。

座ったままで箱に手を置いたまま、ただただ嬉しくて。

「岡谷にやられたわね」

「う~ パパのいじわりゅう」

「はいはい、もう泣かないの」

瑞穂さんがタオルで優しく顔を拭いてくれた。

「なぁんだ、嬉し泣きか。驚いたよ、美緒」

「ゴメン、泉美」

「それで、プレゼントは何なの? 花びらじゃないよね」

「朋ちゃんも気になる? 美緒ちゃん早く」

「もう、なっちゃんまで、そんなに急かさないでよ」

ブーゲンビリアの花びらを少し取り出すと綺麗な真っ白な二枚貝の貝殻がぴったりと合わさって2つ出てきた。

「瑞穂さん、この貝は何?」

「ヒレジャコみたい、シャコ貝だよ」

1つの貝を取り出して中を開けるとアジアンチックなシルバーの籠に入ってる鈴みたいなのが出てきた。

耳元で鳴らすとシャラーンって凄く澄んだ音色がした。

「バリ島のガムランボールね。ドリームボールとも言って『願いが叶う』とか『邪気を払う』って言われてて、岡谷が好きで携帯に付けてるでしょ」

「えっ、気づかなかったけど。それに赤い石がついてるよ」

「ルビーじゃない、美緒ちゃんの誕生石の」

「うわぁ、パパらしいや」

「うふふ、そうね」

そして二つ目の貝を開けて私はしばらく動けなくなってしまった。

「美緒、どうしたの?」

「ねぇ、大丈夫?」

「う、うん」

泉美となっちゃんが心配して声を掛けてきてくれた。

朋ちゃんが私が手に持ったまま開いた貝殻の中を覗き込んだ。

「何が入っているのかな? うわぁ! 凄い素敵じゃん、美緒」

「「見せて、見せて」」

泉美となっちゃんにせがまれて掌に載せて皆の前に差し出した。

「凄いね、朋。ブルートパーズかな?」

「泉美、アクアマリンじゃない。まるで石垣の海みたいじゃない」

「上に付いてるのって、もしかしてダイアモンド?」

それはネックレスだった。

雫の形をした大粒のアクアマリンにダイアモンドが上にあしらわれていて、多分18Kのホワイトゴールドだと思うんだけど……

「瑞穂さん、こんな高そうな物。私……」

「貰っておきなさい、美緒ちゃん。岡谷の気持ちなんだから」

「でも……」

困って瑞穂さんの顔を見るとそんな風に言われてしまった。

「凄いね、美緒のパパって」

「えっ? 何が凄いの? 泉美」

「だって普通は中学生の子どもにこんな物くれないよ」

「でも、それが普通じゃん!」

「もう、美緒は何も判ってないなぁ」

「朋ちゃんまで」

「あのね、美緒ちゃん。美緒ちゃんのパパは美緒ちゃんを子ども扱いしない人だって言う事だよ」

「えっ……」

「ナツの言うとおり。美緒はまだ大人じゃないけれど1人の人間として見てくれてるんじゃないの?」

「朋ちゃん、それって」

「良かったね」

「うん!」

それから、いっぱいお喋りをした瑞穂さんの子どもの事やパパの事、そしてもう直ぐやってくる夏休みの事を。


石垣島に来て私の人生が大きく変ったんだと思う。

だって東京にも友達は居たけれどこんなに楽しい時間を共有した事なんて無かったから。

それに今までで一番素敵な誕生日を迎えられた事が凄く嬉しかった。

これも全部パパのお陰なんだと思う、だって私を受け入れてくれなかったらこんなに素敵な時間を過ごせなかったんだから。



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