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驚いちゃ

由香里、美穂里、波照間、そして俺と美緒の5人でレストランのテーブルで賄いを食べている。

美緒は何も気にせずに美味しそうに賄いのカレーライスを頬張っていた。

「チーフ、岡谷チーフ」

「何だ、ユーカ。チーフだけで判る」

「そうじゃなくて本当にチーフの娘さんなんですか?」

「多分な」

「多分なって、そんないい加減な」

「昔、昔に別れた元彼女の娘だ」

由香里、美穂里、波照間の3人が顔を見合わせていた。

「一緒に暮らすって……」

「面倒臭いな。昨日、俺の家に押しかけて来たんだ、父親を探しに。それでしばらく石垣島で一緒に暮らす事になったんだ。以上」

「以上って」

「自己紹介でもなんでもして飯を食え、飯を」

早々と食事を済ませて食後のコーヒーに手をつけて美緒を見ると俺の顔を睨みつけていた。

恐らく面倒臭いと言う言葉に反応したのだろう。

「なんだ? 俺の顔に何か付いているのか?」

「別に、そんな格好で仕事しているんだ」

「ここはレストランだからな」

俺の格好は真っ白なスタンドカラーのシャツに黒いズボンに革靴、そして長いサロンを腰に巻いて、髪の毛はジェルで後ろに綺麗に流していた。


「そうだ、自己紹介をしようよ」

美緒の俺に対する態度で雰囲気が固くなりかけて由梨香が仕方なく仕切り始めた。

「俺が一番号! 俺は波照間建次はてるまたてつぐ。建設の建に次って書いて『たてつぐ』って読むんだ。テルって皆から呼ばれているから宜しく」

見るからにヤンチャそうな日焼けして浅黒い島の海人と言う感じの青年だ。

「私は小浜由梨香こはまゆりか。皆からユーカって呼ばれているの歳は23だよ」

由梨香はぽっちゃりした感じでセミロングのウエーブがかかった髪を後ろで一つに纏めていた。

「わ、私は黒島美穂里くろしまみほりです。皆からは何故かミポとかミポミポって呼ばれています」

小動物を思わせるような感じで髪の毛は可愛らしいショートヘアーだった。

「自己紹介くらい自分でしろよ」

「うるさいな、判ってるよ。私は大羽美緒14歳。春から石垣二中に通う中学3年生です」

「へぇ、美緒ちゃんって今度受験生なんだ。どこから来たの?」

お姉ちゃんタイプの由梨香が質問をしていく。

「東京から」

「1人で?」

「うん」

「怖くなかった?」

「あんまり、もし見つからなければ直ぐに帰って来いってママが言ってたから」

「ふうん、そうなんだ。それでチーフが見つかったからここで暮らすの?」

「う、うん」

由梨香に質問され美緒が少しずつ静かになり表情に影が差してきた。

「あんまり苛めるなよ。俺ですら美緒の事はよく知らないんだからな」

「でも、チーフに隠し子が居たなんてね。驚いちゃった」

「あのな、隠し子って人聞きの悪い」

「人聞きの悪い事をしたのはどこの誰だ」

美緒の言葉に隆史の顔が一瞬で曇った。

「そうだな、探さなかった俺が悪いんだ。言い訳や言い逃れは一切しないよ」

「えっ?」

俺の言葉に一番驚いたのは美緒だった。

「ねぇ、ねぇ。美緒ちゃん。チーフの第一印象は?」

「小浜さん……」

「もう、ユーカで良いよ。島では苗字じゃなくて下の名前や愛称で呼ぶんだよ。仕事中は怒られるけどね」

「う~ん。だらしなくって部屋が汚くってオタクかな?」

「オタク?」

「うん。ガンプラ、アニメに漫画。それにネットオタク」

「そうそう、チーフは俺らが知らないような情報も知ってるよな。なんだっけこの間の、あれオリコンの」

「えっと『放課後ティータイム』でしょ」

「そうそう」

美緒は会話についていけずにポカンとしていた。

「放課後? ティータイムって何?」

「ほら、美緒ちゃんだって知らないんだぜ。俺らが判るわけないじゃん」

テルが自慢げに胸を張った。

「威張れる事じゃないでしょ。テルは普通の事も知らないんだから。それで何だっけ」

「もう、2人とも直ぐに脱線するんだから。『放課後ティータイム』でしょ、オリコンの1位と2位で新聞に載ってた。あのねなんかアニメの中のバンドの名前で声優さん達がグループとしてCDを出してるんだって」

美穂里が初対面の美緒が居るにも係わらず緊張もせずに会話に入っていた。

「うわぁ、アニオタ丸出し」

「でもユーカ、チーフは他の事にも詳しいんだよね。私達が質問しても大体即答してくれるもんね」

「そうなんだ、でもチーフは自分でオタクだってカミングアウトしているからね。それに色々な事を知っていて凄いと思うよ。厳しいけど凄く優しいし仕事はきちんとしているし」

「優しいのは誰にでもでしょ」

「そうかなぁ、誰にでも優しく出来るって凄い事じゃない? それに優しいだけじゃなくちゃんと駄目な事は駄目って言ってくれるもん」

「後ね、チーフは見ていないようでちゃんと見ててくれるの色んな事を。そして優しく手助けしてくれる。怒ると凄く怖いけどね」

珍しく声のトーンを上げて美穂里がフォローを入れてくる。

「そうだね、ミポ。あんたがこうして働けるのはチーフのお陰だもんね」

「うん」



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