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第1章 4 異世界編

第1章 4 異世界編




『それにしてもエンドウ殿、先ほどの行動はいささか軽率ですぞ』


とシロンが言った。

確かに結果的には少女を助けることができたが、下手をすると俺まで捕まる危険性もあったのだ。


『だけど、あの状況で助けなかったら男じゃない』


『今は、我が主の体を使っておるから女であろう』


確かにシロンの言い分も分かるが、しかし


『俺の信念が許さなかったんだ』


世の中には理屈じゃないこともある。と俺はそういうとシロンは、


『だがその結果、傷つくのは我が主の体だ。もうちょっと自重をするべきであろう』


『わかったよ、次からは気をつけるよ』


と俺は答えたが、同じことがあったら迷わず助けるだろう。

助けることができるなら、助けるのが当たり前だ。


シロンは俺が言葉だけなのが分かったのだろうか、大きなため息を吐いた。






数分だろうか、少女は泣き止むと


「もう大丈夫です」


と言って立ち上がった。


「無理してない?、大丈夫?」


と俺も声をかけ立ち上がったが、少女はもう大丈夫ですと答えた。


「助けていただいてありがとうございました」


「いやいや、困ったときはお互い様って奴だ」


少女は、俺より二つほど年下のようだショートヘアーを目深にかぶった大きなスカーフで隠している。

いかにも、外国の畑仕事というだぼだぼな服装で全体的に細いが、顔立ちがよく目元がはっきりしている。


「私の名前はアンナと言います。あなた様のお名前は?」


「俺は円堂 実、アンナはどうしてあいつらに捕まったんだ?」


話したくなかったら話さなくていいと付け加えて俺は訪ねた。

アンナは、いえ、話しますと言うと事情を説明してくれた。






説明が終わるとアンナは俺に


「どうしてエンドウ様は、こんな辺鄙な所にいたのですか?」


と聞いてきた。俺はシロンが目立ちたくないことを思い出して、どう答えたもんかと考えた結果


「道に迷っていたんだ」


と曖昧に答えた。アンナはその答えで納得したのか、


「もしよかったら、私の住んでる町まで案内いたします」


と言ってくれたので俺はお言葉に甘えて案内してもらった。






町まで案内してもらいながら俺はアンナと話をしていた。


「エンドウ様はどこに向かって旅をしていらっしゃるのですか?」


「アカデミーに向かっているんだ。それよりも、俺の事を様付けで呼ばなくていいよ」


ほとんど年が変わらないし、俺はタメ口でいいと言った。するとアンナは


「いえ、貴族様にそんな滅相もございません」


「いや、俺、貴族じゃないし」


「魔術師様じゃないのですか?」


「俺は魔術が使えないから魔術師じゃないんだ、そんなにかしこまらなくていいよ」


逆に俺の方が、かしこまってしまうと言った。するとアンナは、


「分かりました、ではエンドウさんと呼んでいいですか?」


俺はかまわないと笑顔で言うと、アンナは顔を真っ赤にしてうつむいた。




町までたどり着く途中で、アンナは逃げてる途中で落としたのだろうか?かごを拾った。

ちょうど俺は、さっきの戦闘で使ったナイフ(刃の部分はその辺の葉っぱを巻いた)の扱いに困っていた。

なので俺は、かごに容れさせてもらえないかと尋ねた。

アンナは二つ返事で快く、ナイフを受け取ってかごに収めてくれた。




[アンナ side]


私は、助けてくれたエンドウさんについて不思議に思っていた。


エンドウさんは、黒のローブに白のワンピースと、いかにも魔術師の格好だが、旅に適した服装には見えなかったからだ。

仮に旅をしているにしても、荷物がないのはおかしい。

さらに男たちを圧倒したあの動き、あんな動きは見たことがない。

しかも魔術師学校であるアカデミーに向かっているという。


なので、格好と行き先からてっきり魔術師だと思っていた私は、エンドウさんの魔術師じゃないという言葉に耳を疑った。


何者なんだろう? 

なぜ、あんな辺鄙な場所にいたのか?


だが、エンドウさんがときおり見せる無防備な笑顔、私が泣き崩れたときの心遣いから悪い人ではなさそうだ。

普通、悪い人だったら、武器であるナイフを預けたりしないだろう。


アンナは、曖昧に答えるのは話せない理由があるのだろうと結論を出し警戒を解いた。


そうすると、エンドウさんとの会話は、同い年くらいの友達のいない私にとって楽しいものになっていった。




私は、エンドウさんと話していて、ふと姉がいたらこんな感じで話したりするのかなと思った。






[other side]


マッチョ達はアジトである洞窟に戻っていた。

洞窟の中には、広い空洞があり20人ほどの男たちが今夜行う仕事の前祝いに酒盛りをしていた。


マッチョは酒盛りをしている男達の暢気さに苛立ちを覚えた。

だが一刻も早く、ボスに報告せねばと思い、人ごみを掻き分けて奥に向かった。

酒盛りをしている男たちは、洞窟に入ってきたのが仲間であるマッチョ達だったので冷やかしやねぎらいの言葉を掛けていったのだが、普段と違いなにやら様子がおかしい。

不審に思った男達の中でも黒のローブを羽織って杖をついている大柄な男が声をかけた。


「おい、何かあったのか?」


マッチョたちは今夜襲う予定の町に偵察に行かせていたのだ。

もしや、町の自警団にでもやられたか?

だが、マッチョたちには目立った外傷が見られない。

するとマッチョが声を張り上げて


「ボス、大変です。ま、魔術師が現れたんだ!」


このマッチョの言葉に男達は動揺した。

魔術師が現れただと?

あの町には魔術師がいなく、自警団の人間もたいしたことがない。

そういう評判だったので今夜襲う町に決めていたのだが、


「何があったか詳しく説明しろ」


そういうとボスはマッチョ達から事情を聞いた。






事情を聞き終えたが、ボスはその話が信じられなかった。


「本当にその黒髪の小娘一人にやられたのか?」


「はい・・・・」


マッチョの返事にチビとデブは頷いている。

だが説明を聞いている限りその小娘は魔術の発動に必要な呪文スペルを唱えた様子はないようだ。


呪文には、術者固有呪文じゅつしゃこゆうスペル魔術固有呪文まじゅつこゆうスペルの2種類があり、上位の魔術師が行う高等技術である詠唱破棄スペルカットは術者固有呪文しか省略できない。

しかも、相手はまだ自分達よりも年下の小娘であり、詠唱破棄による小魔力オドの使用量の増加に耐えられるはずもない。

ボスは、その黒髪の小娘が本当に魔術師なのか疑問に思えた。

その上、

瞬間移動の魔術なんてもの、魔術師であるボスは聞いたことがなかった。

マッチョたちはその黒髪の女に攻撃魔術でやられたわけではない。

以上の2点からボスはその黒髪の小娘は魔術師ではなく、多少腕の立つだけと確信した。


なにより、相手はたった一人の小娘。


もし魔術師だったとしても、この人数の男達と魔術師である自分がいれば問題ないと思えた。


「そいつは魔術師じゃねえな、多少腕が立つようだが俺様がいれば何の問題もねぇ。野郎ども、仕事は予定通り決行だ。今夜は派手に行くぞ!」


まわりの男達は、魔術師じゃないというボスの言葉に安堵と獲物が増えたことによる喜びからか、大声で士気を高めていった。

ボスは、その様子を見てこれなら問題ないと思ったが、


「おい、念のために弓の用意をしておけ」


とマッチョに言った。


「は、はい!」


マッチョはボスが油断してないことに気づき、安堵とともに勢いよく準備へと男達の元に戻っていった。






今回の話では、聞きなれない魔術用語が出てきました。

それについての簡単な見解とともに説明します。


大魔力マナ

 自然界のどこにでも存在する魔力。


小魔力オド

 生命体が保持している魔力。

 オドは食事や睡眠、呼吸などの方法で補給が可能。


呪文スペル

 呪文は魔術を使用する際に必要な言葉。

 呪文には、術者固有呪文じゅつしゃこゆうスペル魔術固有呪文まじゅつこゆうスペルの2種類がある。


術者固有呪文じゅつしゃこゆうスペル

 術者固有呪文は魔術師が自分の周りにある大魔力マナを掌握して使用可能にするもの。


魔術固有呪文まじゅつこゆうスペル

 魔術固有呪文は使用する魔術の種類の決定に必要なもの。


詠唱破棄スペルカット

 詠唱破棄は、上級魔術師クラスの魔力量が必要。

 魔術固有呪文のみで魔術の発動が可能。

 プロローグでシルティが使っていた「カレイド」は詠唱破棄を使っている。

 術者固有呪文なしで魔術(魔法)を発動させるということは、小魔力オドのみで発動させるということなので、小魔力オドを大量に消費する。


 術者固有呪文じゅつしゃこゆうスペルは人によって様々だが、魔術固有呪文まじゅつこゆうスペルは短縮不可。

 例:「天高く舞い上がれ、カレイド」

  この場合「天高く舞い上がれ」が術者固有のスペルで、「カレイド」が魔術固有のスペル。


こんな感じで今回のあとがきは説明のみです。

次の話は、明日ぐらいにはあげたいと思います。


最後に駄文ながらも読んでくださった皆様に最大の感謝を!


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