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プロローグ 3   運命は猫の手に・・・

プロローグ 3   運命は猫の手に・・・




「あなたの存在を貸してほしいのよ。その代わり私の本体を貸してあげるわ」






「俺の存在?」


体じゃなくて存在ってどういうことだ?


「分かりやすく説明すると、あなたが向こうの世界で、円堂 実として存在した記録を貸してほしいのよ。そうするとあなたの世界で私は、エンドウ・ミノルとして認識されて魔法を使用する際の制限が外れるわ」


それは、なんか裏技やチートに近いような?


「本当にそれだけか?」


「さらに私は向こうの世界の住人にもエンドウ・ミノルとして認識されて、違和感なく目的のために調べられる」


なるほど、だけど・・・


「もし、その状態でシルティが変な行動をとると、もしかして俺の責任になるんじゃないか?」


「妙なところで鋭いわね、その通りよ。だけど、私は目立ちたくないからそんな変なことはしないわよ。」


シルティが俺として行動をする・・・・・絶対無理だ。

考えるまでもなく、文化や考え方の違いがここまでハッキリしているので、シルティは日本を勘違いして来日した外国人のような行動をするだろう。

いやいや、シルティはそんじょそこらの外国人とは違い、魔術崇拝って行ってた国から来た異世界人だ。

移動の際は、魔法を使って空を飛ぶくらいのことはするだろう。


「あなた、なんか失礼なこと考えたでしょ」


「考えたが、まず俺の世界の一般常識はどうするんだ?」


「そんなこと心配してたの?」


そんなことではなく、かなり重要だと思うが?


「あなたの存在を借りることによってある程度の知識は得ることができるのよ」


「それを早く言え」


それなら、それほど変な行動はしないだろう。

すると、シルティは唐突に質問してきた。



「あなた、一人暮らし?」



「そうだが、なんだ?」


一人暮らしだがそれがどうした?


シルティは、「ラッキー」と小声で言うと俺にとって衝撃な一言を放った。


「あなたの部屋を活動拠点にしたいのよ」


・・・何?

俺の部屋を活動拠点に?

それはかまわないが、女は男の部屋に入りたがらないと思ったが、それぐらいは耐えられるのだろうか?


「それはかまわないが、それでも衣食住の住だけだろう、他はどうするんだ?」


「服はあなたの物を借りたり、自分で補充するわ」


俺の服を借りる?

まてまて、もしかしてこの女何か勘違いしている?


「食べ物は・・・・、あなたの世界には食べられる野草や動物は?」


「野草の方は知らないが、動物の方は野良猫や犬、カラスがいる程度だが、大丈夫か?」


シルティは少し悩んだあと


「お金を貸して下さい」


やはり、お金が必要になるような気がした。

俺は短期アルバイトや臨時収入で稼いでいて、貯蓄に余裕があるから、たぶん大丈夫だろう。


「働いて稼いだ貯蓄があるから、節約して使うならいいが・・・」


「ありがとう!」


話の途中でお礼を言うとは・・・。

もしかして、最初から衣食住の確保が目的だったんだろうか。


「ま、いっか」


死ぬよりはマシだろう。

俺は、多少のことは協力してもいいかという気持ちになった。


だが肝心なことに俺は気づいた


「俺はどうすればいいんだ?」


「あなたは私の体を使って、アカデミーの学長に会いに行って、あなたの体を直してもらえるように頼んでみて、あの人にしか直せないだろうから」


「なぜ学長に?」


「学長は、世界に7人しかいない魔法使いのうちの一人で、灰の魔法使い シンバ・アッシュ・ローレライよ」



「そんな偉い人に直してもらえるのか?」


「大丈夫よ。あなたが私の体を使って訪ねて事情を説明すれば信じてもらえるわ。私だって、白の魔法使いだもの」


!!


魔法が使えるからもしやと思ったがやはり魔法使いだったか。


「これで質問は終わり?」


まてまて、俺は問題ないが、シルティは問題ないだろうか?


「待った、シルティは自分の体が俺に使われても平気なのか?」


「私?、私は平気よ。だって女同士じゃない、何か問題がある?」


やはりな、おかしいと思ったんだ。


シルティは、女同士だから部屋も服も大丈夫だと思っているのだろう。

普通、口調はともかく、服装で男だとわかるだろうに。


あ、シルティはこっちの世界の服はわからないのか。


納得したが、なんだか納得できないこの気持ち。



「そういえば、あなた、口調が荒っぽいわね。せっかく綺麗なんだからもったいないわよ」



あ〜俺、このまま死んで生まれ変わった方がいいかな。

いいよね、うん。


「お〜い、戻ってこーい」


「は、今、俺は何を?」


「大丈夫?」


心配してくれてるのはありがたいが原因はあなたです。

だが、俺には、落ち込んでる暇はない。

まずは誤解を解くことから始めよう。


「まず、落ち着いて俺の話を聞いてくれ」


「うん」


「今まで、シルティと俺で認識の違いがあったことがわかった。」


「それはないと思うけど?、どこか間違いがあった?」


数秒おいて俺は理不尽なこの思いを乗せて叫んだ。





「俺は男だーーーーーー!」





シルティは一瞬固まったあと、


「嘘ね」


即答だと!、しかも断言してるし・・・。


「嘘じゃない」


「だって、あなたの顔、声、髪型、体型、どれを見ても年頃の女の子にしか見えないわ」


シルティは理不尽な事実を突きつけた。

た、確かに顔は童顔、声は高め、髪型は長い髪を後ろにまとめて止めている、いわゆるポニーテールってやつで、体型は、がっちりしておらず、男らしさとはあまりにもいえないが・・・。

これでも気にして、言葉使いを荒くして男らしくしようとしているのだが・・・。


「確かに見た目はこんなんだが、俺は男だ」


「信じられないわ」


「どうしたら信じてもらえる?」



すると、シルティは恥ずかしそうに聞いて来た。



「あなたの本体を見るのが一番早いけどいいの?」


俺は半ばやけくそ気味に了承した。


「しょうがない、それで俺の誤解が解けるなら・・・」


シルティは招くような仕草をした。











すると、目の前に俺の体が裸で現れた。



「俺が二人!」



何で俺が二人いるんだ?ってそんなことよりも、



「な、何で裸なんだ?って見るなーーー!」



興味深そうな物を見て興奮したようなシルティは


「ほ、本当に男?」


と確認するように聞いてきた。


俺は自分の体の下半身を隠しつつ


「これだけ見ればわかるだろぅが!」


「だって、やっぱりその体、一部分を除いて女の子にしか見えないわ」


「き、気にしている事をズバズバと言うな」


丸びを帯びている俺の体は無駄な筋肉があまりついていないため、ますます、疑問を与えたようだが・・


「確かに付いているけど・・・」


するとシルティは猫の姿だからだろうか、獣の敏捷力を発揮して回り込んできた。

素早く俺はシルティの目を手で隠した。


「も、もういいだろ。さっさと俺の体をしまってくれ!」


シルティも今更ながら恥ずかしくなったんだろうか、動揺した声で


「わ、わかったわ」


了解すると先ほどとは逆で追い払うような動作して俺の体が消えた。











俺とシルティは気まずい雰囲気になってしまった。


俺はこの状況を打開するために先ほど疑問に思った質問をした。


「俺はなんで二人いるんだ?」


するとシルティも打開したかったんだろうか、妙に上ずったこえで


「そ、それは」


「落ち着け」


俺はシルティにまずは落ち着くように言った。

シルティは深呼吸をした後、俺の質問に答えた。


「さっきも説明したけど、あなたは死んでしまって魂と体が分かれたの、だから今のあなたは魂なのよ。」


臨死体験したみたいだなって、俺、死んでるし。


「俺の体が裸だったのは?」


「ワールドは、生物のみしか使用できないからよって、これもさっき説明したわよ」


そういえば説明されたな〜って待てよ?


「俺は今裸じゃないぞ?」


「それはあなたが死んだときに着てた服でしょ。あなたの今の状態は最後に服を着てた自分を認識していて、それを再現しているのよ」


「俺の体はいまどこに?」


「認識できないだけで、今も、この境界をさまよっているわ」


俺は、納得したが話題が尽きてしまった。

シルティも話すことがないのだろう。

また、気まずい雰囲気になってしまった。











俺は、これでシルティの誤解は解けたがどうしようかと悩んでいたが、答えを出せるのは俺ではなくシルティだ。

ここは、シルティの考えがまとまるまで俺は話しかけない方がいいだろう。



十分程だろうか、沈黙が続いた後、シルティが沈黙を破った。



「わ、私は、あなたが大丈夫ならいいわよ」


その結論が出るとは・・・


「本当にいいのか?、他人に大事な体を借すと言うことは何かと問題があるんじゃないか?、着替えとか入浴の時、俺は体を見たり触ったりしなきゃならないんだぞ?」


するとシルティは何か吹っ切れたのだろうか


「いいわよ、減るものじゃないし」


俺が恥ずかしいのだが・・・。


「それに、見ず知らずの猫を助けるぐらい優しいあなたなら、私の体を預けてもいいわ。ミノル」


そこまで言われると俺はなにも言えない。

それに俺を信用したのだろう。最後にちゃんとミノルと名前で呼んでくれた。

ここまで信用されて断ったら俺は男ではない。


俺は存在を貸すことに了承した。


シルティは恥ずかしさからだろうか、最後に余計な一言を言った。


「それにいくら考えても、あなたの事は女の子にしか見えないわ」






俺は精神的に致命的なダメージを負った。






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