プロローグ 2 運命は猫の手に・・・
プロローグ 2 運命は猫の手に・・・
「話をまとめるとこういうことか」
白猫の話を聞いていてなぜ俺がこの場所にいるのかがわかった。
俺が今までいた世界に、ある用事があって訪れたシルティだが、現れる場所はだいたいしか設定?できないのでとりあえず陸地の人里の中に現れるように設定した。
だが、カミナの国のある世界は、どうやら電車や車という物がなく、人のいない場所なら大丈夫だと思って出現したが、運悪く線路の上だったようだ。
その時、運良く通りかかった俺がシルティを助けたが、このときシルティは急の出来事でどうしようもなく、パニックに陥り気絶してしまった。
そして今朝のあの出来事に繋がったということか。
「あの電車っていうの?凶悪な化け物におそわれたかと思ったわよ」
「電車は、乗り物だ」
「乗り物?あれが?」
どうやらシルティのいた世界と俺のいた世界では文明の違いがあるようだ。
「やっぱり人の姿で渡界すればよかったかしら?」
「あんた、猫じゃないのか?」
するとシルティは不機嫌な声で、あんたじゃなくてシルティと呼びなさいよと言った。
めんどくさいが、礼儀に欠けるし、何より話が進まないので
「わかった、じゃあシルティは、猫じゃないのか?」
「そうよ、この姿は私の写し身だから私の本体は人間よ」
ネットゲームで言うところのアバターって所か。
「じゃあなんで猫の姿で現れたんだ?」
「もしいきなり人が現れたら目撃者は驚くじゃない、その点、猫だったらいきなり現れてもあまり驚かないでしょ」
「なるほど〜」
確かにあの瞬間、意識が朦朧としていたとはいえ、猫の姿ではなく人が目の前で現れたら驚くまたは、俺疲れているのかなという現実逃避に走るだろう。
「それにそっちの世界の民族衣装は渡界してからじゃないとわからないし。なにより用意できたとしてもそっちの世界には生きてる服はないでしょ?」
「生きてる服?」
毛皮や蛇皮などの生き物の皮を使っている服のことかと思ったがそれは生き物が素材の服だろうしと疑問に思っていると
「インテリジェンスのかかっている服のことよ」
「インテリジェンス?」
どうやら文明の違いと言うよりも、根本的に世界の仕組みから違うようだ。
「あ、そっか〜」
とシルティはごめんごめんと謝りながら説明を始めた。
「まずはこっちの世界のことについて説明しないとね。分かりやすく言うとあなたがいた世界は科学崇拝の世界で、私のいた世界は魔術崇拝の世界なのよ」
「魔術崇拝?魔術って言うとあれか、呪文を唱えて火の玉を出したり、回復の呪文を唱えてけがが治るというRPGによくあるあの?」
「あーる・ぴぃ・じーはわからないけれど、だいたいそのイメージで合っているわ」
イメージをすることはできたが、そんな魔術なんて代物、この21世紀の時代では物語の中だけの空想の産物だろう。
俺だって一度は、ル○ラを唱えて学校までひとっ飛びしたいと満員電車の中で何度も思ったことだが、実際にできるわけない。
「信じてないわね」
「実際に見てみないと信じられないな」
「じゃあ見せてあげるから見てなさい」
そういうと、ボンっという音とともに、白猫から白犬、白鳥、白馬、白イルカなど白い動物に次々と変化した。最後はまた白猫に戻りお辞儀をした。
「おー」
俺は手品を見た後の観客のように拍手をした。
「ま、今のはカレイドっていう変化魔術なんだけど納得した?」
現実的ではない変化を見てみて俺は魔術についてこういうものかと納得したが、ある疑問が生まれた。
「なんで白い動物だけなの?」
「私の魔力の色が白だからよ」
「魔力の色?」
どうやら魔術師には色分けがあるらしい。
「私の魔力は白だから、白でイメージされる生き物に変化が可能で、赤なら赤い生き物に、青なら青い生き物にと言う具合に変化が可能なのよ。私は専門外だからわからないけど変化専門の魔術師ならペガサスやグリフォンなどの幻獣にも変化できるわよ」
なるほど〜と納得してもとの話に戻って考えると
「じゃあ、インテリジェンスはそのかけた物体を生物に変える魔術ってことか?」
「だいたい合っているけど、正確には生命を付加させる魔法よ」
「魔法?魔術とは違うのか?」
「魔術は術師が呪文や媒体を使って起こす奇跡のことで、魔法は、現在の魔術では起こすことのできない奇跡のことよ。生命に関わる術の魔術での再現はアカデミーの研究によると不可能と言うことらしいわ」
「ちなみにアカデミーっていうのは?」
「アカデミーは魔術の研究機関や高等教育を行う場所のことよ」
「魔術の学校ってことか?」
「だいたいそうよ」
納得したが、また話がまた脱線してしまった。聞いていくときりがないな。
「話を戻すが、こっちの世界の衣装がどういう物かわからないと言うのはわかるが、なんで生きてる服が必要なんだ?」
「私が渡界するのに使用した次元跳躍魔法のワールドは、生物のみしか使用できないのよ」
生物のみ?ということは・・・
「・・・ということは、私が普通の服を着てワールドを使用すると服は魔法の効果から弾かれて消滅してしまう。そうすると裸のままなにも持ち込めずに人の姿で現れるのよ。そしたら女として私は生きていけないわ」
シルティは恥ずかしそうな仕草をした後、落ち着いたのか、理解した?と俺に確認をした。
「ああ」
ター○ネー○ーの未来から現れたときのあれみたいなものかと俺は納得した。
「だから猫だったのか」
「それに私、猫が好きだしね」
「趣味かよ」
なんか、まさにファンタジーの世界って感じだな。
「まてよ、その猫ボディは趣味だからっていうのはわかったが、なんで本体にカレイドをかけて猫に化けてこなかったんだ?」
「渡界先でなにが起こるかわからないじゃない、緊急の事態の場合は、空の本体に戻ることができるのよ」
なるほど、だが聞けば聞くほど本当にきりがないな。
「その猫ボディで魔法を使っても大丈夫なのか?」
「この体は、灰の魔法使いの特別製で、たいていの魔術ならいくら使っても睡眠や食事で魔力の回復が可能なんだけど・・・」
なんだ大丈夫なのか〜
「魔法は、ほかの魔術と別で、この体だと別世界では異物扱いにされて発動に制限がかかるのよ」
「せ、制限?」
「魔法の種類によるけど、ワールドの場合は2回なのよ」
「あと何回使えるんだ?」
「今の状態だともう使えないわ」
「は?」
「私とあなたの体に使ってもう打ち止めよ」
「俺の体?」
「あなたは死んだのよ。死んだってことは魂と体が分離してしまうの、あなたの魂だけなら私の分だけの魔力で足りるけど、負傷した体はあのままだと完全に死んでしまうわ。その点、この境界では時間の概念は存在しないから死ぬことはないわよ」
「体が完全に死んでしまうとどうなるんだ?」
「魂が新しくなって別世界で新しい命として生まれ変わるらしいわ。そうするとあなたとしての人格は消滅するわね」
理解したが、シルティがそんなにも貴重な魔法を使ってでも俺を助けたのは本当に責任に感じただけだろうか?
「じゃあ、もう魔法は使えないってこと?」
「そうよ。今の状況ならね」
「それってまずいだろ」
「今の状態ならね」
さっきから今の状態という言葉を強調して使っているような?
「でね、この今の状態を打開して、その上、あなたの体を元通りにする方法があるんだけど、あなたの協力が必要なのよね」
「内容にもよるが・・・」
「あなたの存在を貸してほしいのよ。その代わり私の本体を貸してあげるわ」