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第1章 10 異世界編

第1章 10 異世界編




[other side]



俺は自分の思い通りに事が運んで思わず笑ってしまった。

今回の策は獲物が寝静まった深夜に町を襲うのだが、ただ襲うだけだと獲物が四方八方に逃げてしまう。

なので、あらかじめ町に忍び込ませた手下どもに騒ぎを起こさせて、あっちに盗賊がいると思わせる。

そうすると、大抵の獲物は盗賊のいる逆の方向に逃げるだろう。

だが・・・・・


「そうして逃げた先には、いるはずのない盗賊がいるんだな」


この策の利点は町の自警団はいるはずのない盗賊の対応や火事に手を割いてる隙に貴重品を持った獲物が無防備にもあちらからやってくる。

自警団もそのうち気づくだろうがその時にはもう手遅れだ。



こうして、俺の思い描いた通りにこちらに逃げてくる獲物に杖を向けて


「我が魔術はすべてを焼き尽くす フレイムブラスト」


俺は魔術炎弾(フレイムブラスト)を放った。

フレイムブラストは獲物の頭上を越え綺麗な放物線を描くと遠方で火柱が上がった

これで獲物は町に戻れない。


「野郎ども、すべてを奪いつくせ!」


俺が声を張り上げると手下どもは目の前の獲物に食らいついた。



[side out]






なにか呪文のような声が聞こえた瞬間、後方で火柱が上がった。

あまりの轟音に俺は耳をふさいだ。


『シロン、今の火柱は?』


『魔術炎弾による攻撃だ』


魔術炎弾ってことはあの火柱は魔術か。


『やばいな』


今のこの状況はまずい。

俺のまわりの人達は先ほどの轟音でしゃがみこんで驚きからか呆然としている。

それもそうだ、いきなり後方に雷が落ちたかのような轟音が上がって驚かないはずがない。

だが、この状況だとすぐにでも逃げ出さなければ危ないのだが、後方はあの火柱のせいで逃げることが出来ず、左右は木々に覆われていて見通しが悪く盗賊が潜んでいる可能性が高い。

前方は先ほどの魔術炎弾が飛んできた方向なので魔術師が待ち構えているはずだ。


さっきの魔術を目の当たりにして俺はこの世界での魔術の恐ろしさを理解した。

あれは個人が持っていていい力じゃない。


このままだと八方塞、せめて魔術師をどうにかできれば・・・・


『シロン、あの魔術は連発できるのか?』


『魔術師の力量にもよるが、あれほどの威力のものは早々連発できるものではない』


ならば、俺に出来ることは一つだけだ。


「ジャンさんとアンナは、ここで待っていてください」


「エンドウさん?」


アンナは俺が何を考えているのか分からないようだ。

俺は人ごみを掻き分けて前方に向けて駆け出した。


『エンドウ殿、何をしようというのだ?』


シロンは俺の行動が理解できないようだ。


『何って、助かるためには敵を倒すしかないだろ』


俺は袋に収まった剣を取り出しておく。

先手必勝、やられる前にやれ。

そういえば、悪即斬って新撰組の有名な言葉もあるな。


『昼間の縮地だったか?あれは確かに有効であろうが一度限りしか使えんのであろう』


確かに、昼間使った縮地もどきは目の錯覚を利用したもので一度しか使えないが・・・


『昼間とは状況が違う』


あの時はアンナが人質になっていて動きが取れない状況だったから使ったが、

今回は、まだ相手に人質がいるわけではない。

ここにいるみんなを守ればいいだけだ。


『それに俺の本業は素手じゃなくてこっちだし、白兵戦なら何人いても負けないよ』


俺は前方から逃げてくる人達を掻き分けて進む。

どうやら盗賊が前方にいるようだ。

人波から逆らうように動くのでなかなか前に進めない。


『エンドウ殿は今、我が主の体を使っているのだぞ』


シロンは体が違っては動けないと指摘する。


『動きって言うのは体よりも、経験で動くものだ』


昼間の縮地もどきが出来たのなら大丈夫のはずだ。

多少、筋力や体つきの違いで動きにくいだろうが問題ない。


『それよりもシロンは魔術のほうを何とかしてくれないか?』


あの魔術炎弾が出ないだろうが威力の低い魔術なら放てるかもしれない。


『はぁ〜、魔術のほうは何とかしよう』


溜息を吐くと無茶はするなとシロンはあきれた声で言った。


『円堂流剣術を見せてやるよ』


その時、爆発音が前方で響いた。






もう少しで人ごみから出れるという所で女の子の叫び声が聞こえた。


「誰か助けて!」


俺は急いで人ごみから出るとそこで剣を振り上げた盗賊が幼い姉弟と母親に斬りかかろうとしていた。

姉と母親を守ろうと弟は必死に盗賊の前に立ち塞がるが体格が違いすぎる。


「どけーーーーーーーー!」


俺は一瞬で盗賊に近づき左手で鞘を持ち右手で剣を抜刀するとその勢いのまま相手の腕を斬った。

さらに剣の振り切った動きにあわせて体を回転させて相手の即頭部を蹴り上げた。

盗賊は、一瞬のうちに何が起こったかわからなかっただろう、そのまま倒れると意識を失った。




[other side]


姉弟は何が起こったかわからなかった。


姉弟は親と共に町から逃げてきた人の中でも先頭の方にいた。


町が盗賊に襲われてすぐに着の身着のまま一家は逃げてきた。

弟は父親の背中におぶさり、姉は母親と手をつないで少しでも早く町から離れようとしている。


姉はまわりを見てみると自分たちと同じように逃げてきた人たちも必死に駆けている。

姉は一瞬で壊れてしまった日常に戸惑いや不安を感じた。

弟も同じなのか父親の背中に強くしがみついていた。

もしかしたら泣いていたのかもしれない。

姉も泣きそうになるが必死に我慢する。

母親は娘に大丈夫よと語りかけるが声が強張っている。

父親は妻の様子を見て何か言おうとしたが今は一刻も早く盗賊から逃げることが重要だ。

まわりでも、盗賊に対する恨みや憤りの声が聞こえてくる。



「我が魔術はすべてを焼き尽くす フレイムブラスト」



前方で何かが光ると頭上を飛び越え後方に放たれた。

何だと思った次の瞬間、後方で轟音と共に火柱が上がった。

あまりの轟音に人々はしゃがみ込んだ。


誰かが魔術だと叫んだ瞬間


「野郎ども、すべてを奪いつくせ!」


と言う声と共に、左右から盗賊が現れた。

いきなりいる筈のない盗賊が現れて、左右から悲鳴が上がった。

その瞬間、一足でも逃げようとする人の波ができた。

だが、急に方向転換してもすぐに逃げ出せるはずもなく盗賊が迫ってくる。

中には反撃をしようとする人もいたが、武器もない素手では敵うはずもなく殺られてしまう。


父親はこのままでは逃げられないと悟り、息子を背中から下ろすと妻に


「子供たちを頼む」


と言う。妻は


「いやよ。あなたも一緒に逃げましょう」


と叫ぶ。


「このままでは逃げられない、行くんだ!」


夫は妻と子供たちに言うと前方に向かった。




夫は、他にも同じように妻や子供を逃がすために足止めをする男たちと共に盗賊に抵抗した。




だが、足止めはそれほど長くは続かなかった。


「我が魔術はすべてを吹き飛ばす ブラスト」


先ほどの炎弾魔術よりも下位の魔術だが男たちには一溜りもなく吹き飛んだ。

吹き飛ばされても、妻や子供のために少しでも足止めをしようと倒れながらもしがみつくが


「邪魔だ」


魔術師はそういうと杖をこちらに向けて魔術を放った。




盗賊がいる方向でなにやら爆発音が響いた。

姉弟は父親の事が心配だったが母親の方がもっと心配なはずと思い今は必死に逃げた。

だが、2回目の爆発音が響くと姉は涙が出てきてしまった。


――どうして自分たちがこんな目にあわなきゃならないの

――こんな理不尽な事がなんで私たちに起こるの?

――もし町の伝説で出てくる女神がいるなら今助けてよ。


しかし、こんな思いは届くはずもなく姉は袖で涙をぬぐう。




爆音が響いてから少しして盗賊が追いついてきた。


盗賊が追いついてきたという事は・・・・・


姉弟は父親が死んだと気づき呆然とした。

その時、母親が姉弟の腕を引いた。

その瞬間、先ほどいた位置に盗賊が斬りかかってきた。


危ない所だった、一瞬でも遅かったら姉弟は真っ二つに成っていただろう。

だが、母親は腕を引いた勢いを殺しきれずに姉弟共々倒れてしまった。


盗賊は下品な笑みを浮かべると


「こりゃ〜大量だわ♪」


姉や母を見て、いやらしい目つきになった。

盗賊は姉の腕をつかもうとしたが、弟がその手に噛み付いた。


「いてぇな、このガキ!」


盗賊は怒りからか自分の手に噛み付いている弟の顔を殴りつけた。


だが、弟は消して離さなかった。


盗賊は弟を何度も何度も殴りつけると、やっとの事で自分の手が開放された。



「お父さんと約束をしたんだ。お母さんとお姉ちゃんは男の僕が守るって」



弟は顔を腫らしながらも、姉と母親の前に守るように立ち塞がった。

この約束は父親が背中で泣く弟に語ったものだ。


――お前は俺の息子だ。もし俺に何かあったらその時は男のお前がお母さんとお姉ちゃんを守るんだぞ。



「僕が守るんだ!」



弟は盗賊の前に出た。


姉はぼろぼろになりながらも守ろうとする弟を見ていられなかった。

10歳の弟はアンナにぼろぼろになって自分を守ってくれるのに何も出来ない自分が腹立たしい。

だが、12歳の自分に何か出来るはずもない。


盗賊は鼻を鳴らすと


「じゃあ、死ね」


と言って剣を振り上げた。

姉は思わず目をつむって


「誰か助けて!」


と叫んだ。すると後ろから



「どけーーーーーーーー!」



と綺麗な声が響いた。


私は目を開くと地面に白目をむいた盗賊が倒れていた。


何が起こったのだろう?


私はおそるおそる顔を上げるとそこには・・・




「女神様?」




月明かりに照らされた美しい女神様が佇んでいた。






やっとバトルパート突入だ~。


次回はそのうち上げます。

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