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第1章 7 異世界編

第1章 7 異世界編




俺は買い物から帰って来るとアンナが何か不安を抱えていることに気づいた。

話している時も、笑顔に一抹の影が宿っている。

まだ、森での出来事を引きずっているのかもしれない。

俺は、洗濯物が乾くまで暇なのだからこういうときはアンナの手伝いをして気を紛らわせるのが一番だと思った。


「何か手伝うことはないか?」


ときくと、アンナは一瞬笑顔になった後、遠慮しているのか少し困った顔になってしまった。


「服のお礼だから遠慮しないで」


アンナはまだ悩んでいるらしい、すると店の奥から店主のジャンが顔を出してきた。

どうやら話を聞いていたらしい。


「話は聞かせてもらいましたエンドウさん、それではアンナの手伝いをお願いしてもいいですか?」


「わかりました」


ジャンも、アンナが不安を抱えていることが分かったらしい。

ジャンは、俺に目線でお願いしますねと言っているのが伝わった。

俺は笑顔で答えるとジャンはウインクをして店の奥に下がっていった。




俺はアンナに何をすればいいと訊いてみると、アンナはどうやら割り切ったらしい。


「店の中の掃除をおねがいしてもいいですか?」


「まかせてくれ」


そういうとアンナはカウンターの掃除を始めたので、俺も掃除の基本であるまず上からということでテーブルの拭き掃除を始めた。

拭き掃除をしているとシロンが話しかけてきた。


『エンドウ殿はずいぶんと手際が良いの、何かやっていたのか』


『以前、喫茶店の仕事を手伝わされたときがあって、そのときに覚えたんだ』


その時は・・・


『エンドウ殿、なにやら暗い顔してどうした?』


『いや、昔の古傷を思い出してしまって・・・』


喫茶店の仕事でウエイトレスの格好をさせられたことを思い出してしまった。






その時の俺は、財布を落としてしまって金に困っていた所に、先輩から喫茶店で日払いのアルバイトをしないかと言われておもわず受けてしまった。

いざ、喫茶店に行ってみるとウエイトレスの服を渡されて給仕をお願いと言われたときに、やっと先輩に嵌められたと気づいた。

喫茶店のマスターに事情を説明するのに1時間掛かったが何とか説得に成功、だが、今日中にウエイターの服は用意できないのでウエイトレスの格好でおねがいねと言われ絶望した。


「男の俺にこれはまずいでしょ」


と俺は言うと、マスターは


「円堂君なら大丈夫よ♪、だってウエイトレスの方が違和感ないもの」


と言いやがった。だが金に困っているのでしぶしぶ了承して仕事をすると、そういうときに限って知り合いによく会うし、先輩も様子を見に来た。


俺を嵌めた先輩には、とりあえずアイスコーヒーの代わりにめんつゆを出してやった。






俺が去年の出来事を思い出しているとアンナが話しかけた。どうやら俺の手が止まっていたらしい。


「エンドウさん、どうしたのですか?」


「いや、ちょっと昔を思い出してたんだ」


アンナは首をかしげた。




店の準備も終わり、酒場を開くとすぐにお客さんが入ってきた。

俺は、アンナと共に店の給仕をしたが客足が止まる気配がない。

この人数はアンナ一人で回るには多すぎる。

俺はアンナに


「いつもこんなに店は混むの?」


と訊いた。すると、


「今日はお客さんがいつもより多いですよ」


いつもは客席が埋まらないくらいですとアンナが答えた。

今日に限って何でこんなに混むのだろうと俺とアンナはそろって首をかしげた。



このとき町の中では、黒髪の美少女があかねこ亭で給仕をしているという噂が飛び交っていた。

円堂が買い物をしに町へ出た時、姿を見た人の話もあいまって、一目見ようとあかねこ亭に人が押し寄せたのだ。



給仕をしながら俺はお客に引っ張りだこだった。


――おう、そこのねーちゃん酒を注いでくれよ。

――そこの別嬪さん、こっちにエールを持ってきてくれ。

――きみ、かわいいね、こっちも酒を注いでくれよ。


はい、ただいまと俺は答えつつアンナの方を見た。

アンナの方もなにやら常連の客に俺の事を訊かれているらしい。

どうやら、この忙しさは俺が原因のようだ。


『やっと、気づいたのか』


とシロンはあきれた声でつぶやいた。




俺は、カウンターに注文をとりに行く途中でアンナとすれ違った。

アンナはどうやら忙しさで不安を忘れたらしい。

この忙しさはアンナにとっていいことだったようだ。


俺はふと、こんな忙しいときに喫茶店でやったことを思い出してアンナに向かって手を上げた。

アンナは一瞬、きょとんとしたが、俺の意図に気づいたようだ。




アンナも手を上げると笑顔ですれ違いざまにハイタッチをした。




このハイタッチは、喫茶店でお互いにがんばれよ、無理するなのようないろいろな合図として使っていた。

結構、この合図をすると不思議と仕事が楽しくなったのを俺は思い出した。




それから、俺とアンナはだんだんと笑顔で給仕をして店の雰囲気がとても明るいものになっていった。






前回が半端だったのでここで一区切りと言う感じです。


次回もすぐ上げると思うので今回のあとがきは短めです。


最後に駄文ながらも読んでくださった皆様に最大の感謝を送ります!

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