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プロローグ 1   運命は猫の手に・・・

注:この表記が表示される場合は翻訳魔術使用状態の場合であり、人によっては「カレイド」が「変化」という風に直訳されるような場合があります。



プロローグ 1   運命は猫の手に・・・




 気が付くと目の前には現実的にありえないほど広い空間が続いていた。



「ここはどこだ?」


と声を出してみたが、俺のまわりには人はおろか何もない。

冷静に今の状況を判断すると俺はひとつの結論に達した。


「これは夢だな。」


そうだこれは夢だと、一人で納得したはいいものの、夢の中で夢と気づくのはおかしいと思った。

少なくとも俺はそんな経験がない。

それに夢なのになぜか後頭部に痛みが走った。

おかしい、何かがおかしい、何か大切なものがないようなこの喪失感はなんだ?



すると頭上から白い発光体が雪のように降ってきた。



その光景はとても幻想的で、現実味がなく、こんなファンタジーな展開はあり得ない。

これはやはり、夢だなと俺は結論付けようとした。

その時、一欠片の白い光が俺に近づいてきた。


「何だこれ?」


よく見てみると光は手のひらに収まるほどの大きさで、ほのかに明るく、暖かみのある光を放っている。

触れてみようと思い、手を伸ばしたところで、ふと声が聞こえてきた。


「あなた、死んでるわよ。」


「・・・・・は?」


いきなりそんなこと言われた俺は、何がなんだかわからなかった。

どこから声が?、まわりを見渡しても人はいない。

まさかこの光から声が聞こえたのかと疑問に思った俺は、光に話しかけてみた。


「あんたが話しかけたのか?」


「私以外に誰がいるのよ?」


確かにまわりには誰もいないが・・・


「・・・本当に?」


「本当よ」


数秒思考停止していたが俺は先ほどの聞き捨てならない言葉の意味を聞いた。


「俺が死んだっていうのも」


「本当よ、覚えてないの?」


「覚えていないんだが・・・」


「よく思い出しなさい」


俺はそういえば後頭部に痛みがあることが何か関係があるのかと思い、今この状況になるまでの過程を思い出してみることにした。あれは・・・












 その日は春なのに冬とも思えるほど寒い朝だった。始業式ということで高校3年の俺、円堂 実エンドウミノルは、学校に向かうために駅へと歩いていた。


「ふぁ〜眠い」


春休みに幼馴染から借りたRPGを終わらせるためにがんばった俺は、学校に行ってホームルームが始まるまで寝てようと決め、今朝は普段よりも1時間は早めに行動をしていた。

3年目ともなると、目をつぶってでも学校へ行けるとまでは行かないが、身に付いた生活習慣が今の極限状態でも体を動かしていた。

だが、踏み切りを渡れば駅というところで、意識が朦朧としてきた。


「さすがに不眠不休三日徹夜はきついか」


借りたRPGはイベントの発生条件やレアアイテムの入手、裏ダンジョンと言う風に通常クリア後もやりこみ要素のある種類のもので、俺は、どっぷりはまってしまった。

幼馴染は、俺がこういうやりこみタイプのゲームが好きなことを知っているので、いつも、おすすめはこれと言ってゲームを次々と貸すのだが、この手のやりこみ要素のあるゲームは終わりがなく、自分が満足するまで俺は続ける。

その結果、初の三日徹夜になった。

通常クリアだけにするべきだったといまさら後悔しても遅い。


俺は何とか眠気を覚まそうと手の甲をつねったり、首を振ってみたがだめだった。

駅はもうすぐそこだがんばれ俺と、寂しながらも自分に活を入れたところで、ふと気づいて見ると踏切が閉じていた。

早く開かないかないかと線路を見てみると、一匹の雪のように真っ白な猫がレールの上で横たわっていた。


死んでいるのかわからなかったが、朝から猫のばらばら死体を目撃するのは新学期早々気分が悪いと思いレールからどけることにした。


「すばやく行けば何とかなるだろう」


左右を見渡しても電車が着てないことを確認してついでに向こう側に渡ろうと思い、遮断機の下を潜り抜けて猫のもとに行って持ち上げたが、またもや意識がぼんやりしてきた。


こんな所ではやばいと思ったところで電車がきた。


どうする俺。とどこかのCMのようなことを思いながら選択肢は一つしかないというか、ほかはこの状況だとデッドエンドだろと思いながらも前方に飛び出した。






「俺はここで電車に跳ねられて・・・死んだ?、電車に跳ねられて死んだなんて・・・」

と電車の時刻が狂うと何千万もの慰謝料がかかるんだよなと考えていると光が冷静な声で答えた。

「あなたは跳ねられ死んだのではないわ」

「え?」

そう言われて俺なりに考えてみると、まだ続きがあった。






「あっぶね〜」


見事に着地成功、俺オリンピック評価満点だと馬鹿なことを考えながらも腕の中の猫を見てみた。

遠くから見ていてわからなかったが、その猫には幾何学的な模様が付いていた。


「何だこの猫?」


と思いながらも、よく見ると模様は明らかにいたずらというにはおかしく、何か規則的に付いていた。

まさに悪魔召喚の儀式にでも使われるのかとも思えるような模様だった。

動物虐待かな?

何なんだこれは?

と思ったが、その猫には首輪がついていたので、とりあえず飼い猫かという結論にたどり着いた。


「住所は書いてあるっていうか読めね〜な」


筆記体だろうか?そこには流れるような字で何か書いてあった。

俺には読めないな。

駅のところの交番に届ければいいかなと思いながら、交番に行くために歩道橋を上っていくとまたもや意識が朦朧としてきた。

さすがにやばい。

とりあえず早く届けて学校に行こうと思って歩道橋の階段を上ったところでいきなり声がした。


「どこ触ってんのよ!」


いきなり声に驚いた俺は、階段を踏みはずしてしまった。


「あぶない!!」











そして階段から落ちて俺は、


「・・・・・・・・・・・死んだ」


状況がわかったとたん俺は、絶望した。


「やっと現状を理解してくれた?」


「理解はしたが納得できないというか、ここはどこだ?なぜ死んだ俺はここにいる?」


「ここは世界と世界の境界線の上って所ね」


「は?、何、境界線?」


「あなたは、こっちの世界からここに来たのよ」


そういうと光がこっちと指し示すように動いた。

よく目を凝らしてみると何もないところから霧が晴れたようによく知る町が映し出された。


「確かに俺の知っている紋白町の町並みだな」


「そうあなたが理解しやすいように、あなたがいた町の風景である紋白町を映したわ」


そう言われてみると今朝と変わらない町が映しだされているが、駅前は普段とは違う、人だかりができていた。


「あれって俺?」


そこには頭から血を流して倒れている俺がいた。階段から落ちたからだろうか、手足は投げ出され、肌が見えるところは痣だらけという我ながら痛々しい状態だ。


「あなた、階段から落ちて手すりをつかんだまではよかったけど、勢いを殺しきれずに後頭部に手すりがぶつかって気を失い、気を失ったせいで手すりから手が放れ転げ落ち、見ての通りの有様ってところよ」


「あちゃ〜」


さすがに三徹はやりすぎたか。ゲームのやりすぎで意識が朦朧として階段から落ちて死亡って呆気ないなと考えつつも


「あそこで声をかけられなかったらな〜」


とつい考えたことを口に出してしまった。




すると光はギクッとマンガみたいな音を立てた。




しばらく俺のすぐ近くを回った後、先ほどと同じように俺の前を漂い始めた。


「確かに、あなたが死んだのは私のミス見たいなものね」



「は?、まてまて、なんであんたの責任なの?」


「だって私があのとき声をかけたんだもの」


・・・・・・?


「だけどあなたも悪いのよ、あなたがあんな所をさわるから」


「ちょっと待ってくれ」


俺は思考を整理してみた。あの時、俺がさわっていたものとは・・・


「もしかしてあの時の白猫?」


「その通り」


すると光はあの時の白猫に変わった。


「猫はしゃべらないだろ」


「そっちの世界では、そうかもしれないけど、こっちの世界では普通よ」


と猫は俺の世界とは反対側に動いた。


「な、なんだ」


先ほどと同じように目を凝らしてみてみるとそこには俺の知っている町並みとは別の石造りの町並みが見えた。


「こっちの世界の今映っているのは・・・」


と白猫は何かを思い出すような仕草をした後、


「カミナの国ね」


カミナの国と言われても、俺には外国の古い町並みのようにしか見えない。


「カミナだかなんだか知らないがあんたがそっちの世界からきた白猫だとわかった。だが、なんで俺が住むこの隣の世界に来たんだよ」


「それはあなたとは関係ないのだけど・・・」


何か言いづらいことなのだろう。猫は言いよどんでいて、俺はこのままでは話が進まないと思い


「まぁ、なんだか気になるがそれを聞いても俺の今の状況は変わらないならいいや」


早々に思考放棄した。

昔から考えてもわからないときは考えないことにしている。

白猫はその言葉を聞いて


「あなた、珍しい人ね。普通どういう事情か聞くものだけど・・・」


「あんたは、珍しい猫だな」


とお互いに相手が珍しい奴だと確認したところで、ふと、名前を聞いていないことに気づいた。







「そういえば、あんたの名前は?、ちなみに俺の名前は、円堂 実エンドウミノル


「そういえばまだ名乗っていなかったわね。私の名前は、シルティ・レイ・アイルよ。」







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