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世界のノイズ〜最近世界がバグってる〜

掲載日:2026/04/17

最近なんだが世界がおかしいぞ。

まるで、○○みたいだ。

3分で読める短編SF。

①

ピピピッ…ピピピッ…。

今日も7:00にスマホのアラームが鳴る。

身支度をし、朝食を済ませた僕はいつもと同じ電車で会社へ向かう。

「おはようございまーす。」

「おはよう」「オハヨー」「ういーすっ」

今日は金曜日だ。

休みのために仕事頑張ろう。

変わり映えの無い日常。

可もなく不可もない人生だ。

これはこれで良い人生だ。


②

「じゃあお先に失礼しまーす。」

「お疲れ」「ういーすっ」

辺りはもう暗い。

帰りにつまみとビールでも買って、家でドラマでも観ながら晩酌をしよう。

明日は気晴らしに海沿いをドライブでも行こうかな。

そんなことを考えていたら、自宅の最寄り駅に到着した。

会社のある都心と違って、自宅周辺は静かな住宅街だ。

コンビニに寄って帰ろう。

人通りの少ない暗い道を歩いていると、「それ」に突然出会った。

背の曲がった老婆が道の真ん中で歩いている。

「歩いている」

だが、進んでいない。

足は確かに動いている。

一歩、また一歩。

それなのに、老婆は

同じ場所から一ミリも動いていなかった。

まるで、ランニングマシンの上を歩いているようだ。

顔は無表情で虚ろとしている。

「なんだこれ…」

僕は冷や汗をかき、来た道を逃げるように戻った。

心を落ち着かせるために遠回りをしてコンビニへ向かった。

その日は恐怖を払うように、忘れるように深酒をして眠った。


③

翌日の土曜日。

昼過ぎに起きた僕は、予定通り海にドライブに行くことにした。

昨日の出来事は疲れていただけ。

と、半ば自己暗示のように自分に言い聞かせた。

車に乗って30分が経ち、お気に入りの海沿いの国道に到着した。

窓を全開にしてアクセルを踏む。

「風が気持ちいいな。」

1人呟きながら、いつもの休憩スポットに向かう。

20mほど先の、海辺の岩の上に、カモメがたくさん止まっている。

それらを眺めながらボーッとするのが好きだ。

…

何かおかしい。

違和感を感じた僕は異変を探すようにカモメたちを見た。

「えっ。」

思わず声が出た。

カモメが増えている。

飛んできたカモメが群れに加わったわけではない。

文字通り「分身」しているのだ。

1羽が2羽に。2羽が4羽に。

全く同じ見た目のカモメが増えていく様子は気味が悪かった。

最終的に群れは100羽以上に膨れ上がり、まるで塊のようにぎゅうぎゅうに岩の上に止まっていた。

「頭がおかしくなったのかもしれない。」

2日連続で異常なものを見た僕は気が狂いそうだった。

その日は、半ばパニックになりながら帰宅した。


④

翌日の日曜日。

朝起きた僕は部屋を見て、また頭がおかしくなったと思った。

部屋の真ん中に「歪み」が発生していた。

空間に幅50cmほどの亀裂があり、その開口は真っ暗で中は何も見えなかった。

亀裂の周りはまるで光が屈折したように歪んでいた。


僕は狂った。

3日連続の異常事態にもう限界だ。

何か自分も異常な行動をしないと。

この世界に順応するように。


「なんなんだよぉお!!」

僕は亀裂の中に飛び込んだ。

なぜそんなことをしたか分からないが自分がおかしくなっていることだけは分かった。


⑤

飛び込んだ先の空間には、想像を超える「異常」があった。

無限に広がる空間に、まるでマトリックスの映画に出てくる緑色のプログラムコードのようなものが、辺り一面に広がっていた。

地面も、空も、空中にも。

無数の文字と数字と記号が水の流れのように漂っていた。

「んだよコレ...」

逆に冷静さを取り戻した僕は、それらの文字列をじっくり見ることにした。

触れようとしても手をすり抜けるが、読むことは出来る。


<hwlsk)/8j(-6kし71k「hwk82「っjlを>


意味がわからない。

もう一度文字列に触れようとした時、あることに気づく。

自分の腕に、空間にある文字と同じ色、文体の文字が書いてあった。


<AI_No.726kq23_田中仁志>

<Status : Active>

<World_ID : JP-03>


田中仁志...僕の名前だ。

「エーアイ...ナンバー...?」


⑥

次の瞬間。

「ッ!!」

無限に広がる空間に閃光弾を放ったような眩い光が拡散した。

自分の意識が遠のくのを感じながら、僕はなぜかこんなことを思った。

「老婆もカモメも、まるで壊れたゲームみたいだったな...」

「まさか...この世界...」

ここで完全に気を失った。





⑦

ピピピッ…ピピピッ….

今日も7:10にスマホのアラームが鳴る。

身支度をし、朝食を済ませた僕はいつもと同じ電車で会社へ向かう。

「おはようございまーす。」

「おはよう」「オハヨー」「チョリーッス」


今日は金曜日だ。休みのために仕事頑張ろう。

変わり映えの無い日常。


可もなく不可もない人生だ。

これはこれで良い人生だ。


⑧

「はぁ。まだバグ多いですねー」

「そうだなぁ。AIも気づく奴らもいたしなぁ」

「まぁ2日前のデータを上書きしたから、またデバッグ頑張ろうな。今日は徹夜だぞ♡」

「えーっ!もう帰りましょうよ〜。先輩こそ奥さんとお子さんいるのにいいんですかぁ?

娘さんまだ6歳でしょ?」

「まあ納期近いからね。仕方ないね。」

「はぁ。やりますか。」

日本を代表するゲーム開発会社「ノヴァシミュレーション」の野崎と後輩の武田は、完全自立型都市建設ゲームの開発中である。

ゲーム内のキャラクターがそれぞれ人工知能を持ち、実際に意思を持ったように行動する。

そんなゲームを開発していた。

武田が言う。

「こいつらってバグに気づいたりして、いろんな反応してましたけど、意思ってあるんですかねえ」

野崎が答える。

「さあな。目の前で起きたことに決められたプログラムで反応してるだけだろ。化学反応みたいなもんだよ。

さあ仕事仕事!」

「ういーす...」

気の抜けた返事で武田は答えた。


⑨

一方そのころ、野崎の妻と娘のリリカは自宅でくつろいでいた。

「パパ遅くなるって。お仕事忙しいみたいだね〜」

「えー!今日は早く帰ってくるって言ってたのに!!」

6歳のリリカは顔を膨らませる。

「じゃあ明日はお詫びに遊園地に連れてもらおっか?」

「えっほんと?やったー!!」

リリカは先ほどまでとは逆に満面の笑みだ。






「あれ?」

突然リリカがいう。ベランダを指差し言った。

「ママ、あれなあに?」




窓の外、空中に亀裂があった。



完


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