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29話 アマテラスが世界を滅ぼした ~前編~

フィクションです。

過去の話になります。

長いので分けました。

 とんでもない爆弾が二回落とされ、戦争が終わった。

 日本は、敗戦国となった。


 勝利国は日本をどう分けようか、話し合っていた。


 アマテラスは、それが面白くないが、昭和が祈りを欠かさなかったので、我慢をしていた。


 しかし、一人の男が、日本の運命を変えた。


 それは、後に昭和天皇と呼ばれる男だった。


 アマテラスの領域である日本を影になり日向になり治めていたのは、『すめらぎ』だった。その一族は、すめらぎの一族あるいは皇族と呼ばれ、すめらぎが死すと、その名に『天皇』と付く。

 そして統治していた年代にその名が付く。

 昭和の前は大正だった。その前は明治。

 昭和のすめらぎは、明治天皇の孫にあたる。


 命が失われる戦争をアマテラスが喜ぶはずもなく、すめらぎに力を貸したのはスサノヲだけだった。

 その理由は、猟師が魚が捕れなくなって困るからだという。

 ツクヨミは、失われていく幼い命、最後に『お母さん』と叫びながら散っていく命を嘆いていた。


 戦争が終わり、他国の手により、日本が勝手に他国の都合の良い様に変えられた。


 すめらぎは国民の象徴となった。

 (まつりごと)はもうしない。


 それでも、祈りは変わらない。



 アマテラスはアマテラスの領域に住む民のため、すめらぎの祈りに力を乗せた。

 そして、敗戦国とは思えないぐらい、発展していった。


 少し前、まだ大正が生きていた頃。

昭和が結婚し、次々と子どもが生まれていた。

 しかし、『法律』とやらで、女子が産まれてもすめらぎになれないのだった。

 アマテラスは少し落胆していた。

 ようやく『皇太子』となる男子が産まれた。

 その成長を見守ったが、すめらぎになるにはいささかいや、かなり頼りない男だった。

 どちらかと言えば、体が弱いということをのぞけば、弟のほうが素晴らしい人間だった。

 しかし、昭和はその頼りない男を皇太子と言いきり、それを通した。


 アマテラスはその理由を尋ねた。


「この男からしか、この国、日本を救うすめらぎが生まれないのです」


 アマテラスは、昭和が言っていることを、受け入れた。

 そして、昭和の祈りに耳を傾けていた。


 日本をあげての祝い事があった。


 それは、その皇太子が妃を迎えたというのだった。


「気の強そうなおなごじゃな。めかけか?」


「そうですね。きちんと儀式をしておりませんので、『妃』ではありませんね」


「じゃが、あの女の血を入れられたくはないのぅ……。あれは、異国の血を引いておるぞ?」


「やはり、そう見えますか。では、後継ぎは別の女に産ませましょう」


「そっちが『妃』か?」


「立場的には、妾になるかもしれません。下手すると、子を殺されるかもしれません」


 アマテラスは黙った。





 昭和に見えていた未来に影がさすきっかけになったのは、はやり、皇太子が結婚してからだった。


 結婚し、しばらくして、皇太子妃が別人にかわったのだった。

 夫である皇太子はそのことに触れない。

 見事に、皇太子妃になりきっている女だった。そして、皇太子妃ブームが起こった。

 ただ、金遣いが荒い女だった。

 一度着た服は二度と着ないという、昭和からすると考えられない女だった。

 皇族で賛成したものは誰ひとりいなかったのだ。



それから数ヶ月し、皇太子に男の子が生まれた。

 生んだ女は皇太子妃ではない。

 世間的に、皇太子妃が母親ということを、すめらぎは貫いた。

 皇太子は、浮気男と言われかねないので、黙り込む。


 昭和はしっかりとその男の赤子を見る。

 まちがいなく、未来のすめらぎにつながる赤子だった。

 皇太子を甘やかしてしまったことを反省し、孫である皇子には、厳しく教育することにする。そしてその教育は始まった。


 ある日、皇太子妃が赤子を抱いて現れる。


 妊娠の光など、見えてはいなかった。

 昭和の妃は、『突然のことでびっくりしましたわ』とそれ以上言葉が出てこない状態だった。


 そこから、完全に、皇太子がおかしくなっていった。

 その子は皇太子妃の実の妹が生んだ子だったのだ。

 しかし、皇太子は、自分の血の繋がりがない子を可愛がる。


 昭和は、勝手にスペアを連れてこられたことに、憤慨していたが、長男を護ることを優先した。


 そして、しばらくしてから、別の女が身ごもった。

 皇太子の悪い癖が出てしまったらしい。

 そのことが、ますます皇太子の立場を悪くする。


 昭和はただひたすら、長男に帝王学を叩き込んだ。


 生まれたのは女だった。

 長男は可愛がった。

 たとえ半分しか血がつながっていなくても、妹であることにはかわりないのだ。

 それに、父親とよく似た面差し。

 長男と長女が一緒にいると間違いなく兄妹として見える。

 次男だけが異質だった。

 皇太子妃はとにかく次男を可愛がった。


 昭和の妃は、別け隔てなく、孫たちを可愛がる。

 昭和にはそれだけが救いだった。

 たとえ、皇太子から皇統のオーラが消えていたとしても、長男がしっかりとそれを引き継いでくれていた。


 皇太子妃の悪い噂がたつ。

 夜遊びをしているらしい。

 そして、横柄な態度で、職員たちをこき使う。


 昭和の妃はそれを聞き、嘆いていた。

 それを憂いた別の皇族の女性が皇太子妃に言う。


「皇室に女優はいりません」


 皇太子妃はその言葉を非難と受け取らず、自分のことが妬ましいのだと解釈したのだった。

 週刊誌は皇太子妃の事を記事にした。そうすれば販売部数は伸びた。

 月刊誌には必ずカラー写真で皇太子妃としていかにすばらしいかと褒め称えられていた。写真集の要望が出てきた。

 皇太子妃は、何をしても許される存在になっていった。


 昭和が気づいた時には、遅かった。


 すでに、違う宗教が皇太子妃を通して日本に入り込んでいた。

 それも、こともあろうか政治家も巻き込んでいく。

 その宗教は西の大陸、そして北の国交がない国の企みを含んだ新興宗教だった。

 その宗教は後にカルト宗教として、ヨーロッパの国で認定されてしまう。


 昭和は皇太子妃が入れ替わった理由がそのためだったとようやく気付いた。

 皇太子が軽井沢のテニスコートで出会った女は、ただ単に、皇室に入りたいというだけの女だったのだ。

 その女を消して成り代わったのは、その女の妹だった。

 双子として生まれていたのにもかかわらず、冷遇された環境で育っていた。

 皇太子妃となった双子の姉に嫉妬し、いつかその地位を奪ってやると思っていたのだった。そして、悪い仲間と相談する。

 それは悪い仲間にも都合のいい話だった。

 うまくいけば、皇室を乗っ取れる。

 乗っ取るには、皇太子の血を引いていない子どもが必要だった。

 そこで、双子の妹は、父親が違う妹の息子を奪った。

 少なくともその子どもには、自分の血は入っている。

 母の再婚相手の男の血も。

 皇族の血は、一滴も入ってない。


 双子の妹は、血の繋がりのない長男と長女には冷たくあたり、血を分けた甥である次男には、甘かった。

 厳しく躾などしていない。

 いずれこの子を皇太子にするのだと、思っていた。

 そのためには、自分の言いなりになる次男でなければならなかったのだ。


 公務で英語が必要になった。

 しかし、双子の妹が話せるのは、スラングだった。

 そこで、もう一人の妹に目をつけた。

 顔立ちは姉妹だけあって、よく似ている。

 プライドもあり、英語力もあるようだ。

 お嬢様育ちということもあり、ピアノも問題なく弾ける。

 双子の妹は、その妹を自分の影武者として使い始めた。

 その妹が、いつか、その地位を奪ってやると心の底に野心を秘めていることに全く気づかずに……。


 そして、立場は逆転し、ついに、双子の妹は闇に葬られた。

 少し顔立ちがかわったということは、『額のシワ取りで美容整形した』ということにした。

 国民は皇太子妃の顔が変わっているのに、気づかない。

 皇太子妃は『なんて愚かな国民。税金を納めればいいわ。私が使ってあげる』と思っていた。

 散財ぶりは変わらず、夫である皇太子は皇太子妃が変わったことに全く気づかない。

 影武者でいたときから、愚かだと思っていたが、ここまで愚かだったとは本当に思わなかった。

 皇太子妃が警戒するのは、すめらぎの昭和だけになった。



 皇太子妃が別人になっていた。

 昭和は気づいてはいたが、もうどうしようもなかった。



 次男が家に大学の後輩の女を連れてきた。

 ひと目見て、北の出身だとわかった。

 その両親も家に招待する。

 娘の父親と皇太子妃は手を結んだ。

 狙いは同じだったからだ。


 しかし、その結婚に、昭和が猛反対した。


「結婚できないのなら、皇籍離脱する」


 次男はそう叫んだらしい。

 皇太子妃は、ほくそ笑んだ。

 皇太子との結婚、実は昭和は反対していたのだった。

その時の相手は自分ではなく、一応長女と言われている姉だった。

 結婚できないと言われると、皇太子がゴネた。

 見事に、ゴネた。

 そうして、昭和とその妃は、折れたのだった。

 ゴネれば、通せる。

 その頃、嫉妬に狂いながら傍観していて学んだことの一つだった。

 この時、結婚を円滑に進める方法があると、娘の父親から提案があった。

 そして紹介されたのが、呪術師だった。

 娘の父親は無駄に顔が広かった。

 ただし、悪い方面に。

 娘の父親は、皇太子妃の実の母親にも接触して、協力を頼んでいた。

 娘である皇太子妃がここまでになれたのは、裏で母親が政治家や企業のトップを籠絡していたからだった。

 それが公になると、籠絡された男どもは立場だけでなく、家族もすべて失い、地の底に落ちてしまう。


 皇太子妃、その母親、娘の父親が手を組んだ。

 その母親も呪術師を連れてきていた。


 昭和に呪術をかける。


 しかし、そう簡単には効かない。

 アマテラスの加護があるからだった。


 呪術師達は仲間を集める。


 そして、昭和を呪った。


 しばらくして、昭和は病に倒れた。

 皇太子妃の母親と娘の父親はほくそ笑んでいた。


 しかし、黙ってやられる昭和ではなかった。

 少なくとも、力を削がないといけないモノがいたからだった。

 昭和は自分の持てる力で皇太子妃の母親を攻撃した。

 反撃にあうとも思わず、護りをもっていなかった母親は倒れた。

 ひとまず、大きな敵の一人は倒した。


 昭和の体調は戻らない。


 アマテラスは心配したが、「次の時代を頼む」と言われてしまっては、どうしようもない。


 次男は結婚を諦めていないようだった。

 というよりは、母である皇太子妃に引くに引けない状態にさせられていたことに気づかなかった。

 皇太子妃にとって、お花畑で頭の悪い嫁は都合がよかったのだ。

 娘の父親は、どうすれば皇室に入れるかを娘に説いた。

 こういう時はこう行動する、どういう時にどう言えばいいか。

 娘は従順にそれを実行していく。


 娘が妊娠した証拠を父親は昭和に突きつけた。


 昭和はそれでも首を縦に振らない。


 娘の父は、最終手段に出ることにした。

 皇太子妃も、それを望んだ。



 呪術師を集め、昭和を再び呪ったのだった。



 皇太子妃は呪術の素晴らしさを知った。



 この頃、結婚問題の当事者は留学していた。

 そして、留学中に立ち寄った他の国で、ある女性と出会ってしまう。

 恋に落ちるのに時間は関係なかった。女性が身ごもるが、次男はやむを得ず、留学していた国に戻るしかなかった。

 ただ、この事を後輩の女性に知られるわけにはいかないということだけは、強く思った。



 昭和が倒れた。

 今度は回復しないだろう。

 しかし、侍医達は、懸命に手を尽くす。


「へぇ~? Rh(―)なんだ? それってどういうこと?」


 皇太子妃は、尋ねた。


「珍しい血液型でございます。二千人に一人でしょうか」


「手に入るの?」


「献血を募るしかありません」


「そう……」


 侍医は赤十字血液センターに連絡を入れる。

 昭和と同じ血液型を確保してもらうためだった。


「持久戦になるかもしれない」


 侍医の言葉を皇太子妃は聞き逃さなかった。

 その横で皇太子は神妙な顔をしているだけだった。


 昭和が祈りをすることが出来ず、皇太子がその祈りを引き継ぐことになった。

 皇太子は昭和が老体であっても祈りを捧げていたことに正直驚く。

 職員たちに言われるまま、皇太子は、昭和の祈りを引き継いで言った。

 しかし、その祈りは、アマテラスには届かなかった。


 呪術攻撃は続いていた。


 昭和が倒れてから3ヶ月経った。


「しぶといのね」


 皇太子妃は昭和が入院している病院の方向を睨みつける。


「しかし、調整がむつかしくなってきております。これ以上強くしますと、年内には……」


「クリスマスが祝えなくなるわね? じゃあ、年明けまで保たせてちょうだい」


 国民が昭和を思い、自粛していくが、皇太子妃にはそれが面白くない。

 次男は留学中。

 結婚の話も宙ぶらりんになっていた。

 ただ、花嫁となる娘がまだ大学生ということで、まだ時間はあると考えていたが、来年の三月には卒業してしまう。そこで、大学院へ進級することを提案し、娘と父親はそれを受け入れた。

 卒論は父親が手伝っているという。

 修士論文も父親が手伝うことになるのだろう。

 一応、大学院という学歴は付く。


 そして、クリスマスを迎えた。

 侍医が必死で昭和の命を繋いでいる。


 年末、慰労会と称して、盛大なクリスマスパーティーを開いた。

 話題は昭和の寿命をいつ終わらすか。

 そして、その後の計画だった。

 皇妃になれば、日本赤十字社の名誉総裁になれる。

 そして、副総裁というのをつくり、嫁を入れよう。

 しかし、嫁だけ入れるとなると他の皇族から反発を食らうかもしれない。

 女性皇族を名誉副総裁にすれば、問題ないだろう。

 仕事も分配できることだろう。

 昭和の妃が勲章をつけるというのをテレビで見てから、やってみたかったのだった。

 そして、それを他の皇族たちの眼の前で行う。

 優越感に浸れる。

 それだけのために、名誉副総裁を作ることにした。


「忙しいわ。やらないといけないことがいっぱいある……」


 皇太子妃は嬉しそうに、呟いた。



 そして、年が明けるが、新年祝賀行事は行わない。

 いや、行えない。


 皇太子妃は皇妃になる日を指折り数えていた。


 そして、その日が来た。



「天皇崩御」



 朝のワイドショーは番組変更でそのニュースばかりだった。

 チャンネルを変えても同じ事を言っている。

 昭和の功績など、聞きたくもない。


 そう思いながら、女官たちが忙しくしているのを横目で見ていた。


「あぁ、神妙な顔をしていなくては……」


 一歩外に出ると、カメラのフラッシュが光る。

 なんて心地よい光。

 この角度よ。

 こっちから撮ってね。

 そう思いながら、カメラに自分がきれいに写るように動く。


「これで、すべてが思い通り」


 横にいる皇太子は皇太子妃の人形だった。


 翌日、『平成』の世が始まった。

 昭和の時代は終わった。

 今まで皇妃だった昭和の妃は、皇太妃となる。


 皇太子妃は念願の皇妃となった。


 喪中であるにもかかわらず、次男の婚約発表を急いだ。

 まだ、大学院生であるということを強調する。


 皇妃は次男を皇太子としたかったが、それは周りが許さなかった。

 翌年、長男が立太子し、皇太子となった。


 次男が結婚した。

 国外での妻という女もその結婚式に同席する。

 一部ではどういうことだ?という声があがっていたが、留学中にお世話になったということで通した。


 日赤の名誉総裁としての仕事は楽しかった。

 良妻賢母のお手本として、憧れの眼差しで見られていることに高揚した。

 今まで散々嫌味を言ってきた皇族の女どもの眼の前で、勲章を授ける。

 なんて、気持ちいいのだろう。

 来年には、ここに次男の妃も加わる。

 日本赤十字の掌握はもうすぐだった。



 その頃、アマテラスは、祈りが聞こえなくなっていることを不思議に思い、すめらぎのいる場所を覗いてみた。

 そこには見覚えはあるが、全く皇統のオーラがない男がいた。

 それも、微妙に儀式の手順が違っている。


「昭和よ……これが未来のすめらぎに無事、つながるのか?」


 そう思っていると、アマテラスが大事にしていた地で地震が起こった。

 すめらぎは祈っていたが、全く伝わってこない。


 邪念が西の方から飛んでくる。


 どうやら、高度成長というのが妬ましいらしい。


「それもあって、昭和は倒されたのか……」


 アマテラスは昭和が眠っているという墓に行く。


「おるか?」


 返事はない。


「肉体が滅んだが、魂まで傷つけられている。回復に少し時間がかかる」


 アマテラスの横にツクヨミが立った。


「そうか」


 アマテラスは、アマテラスの領域を見渡す。


「力が、落ちてきている」


「あの女のせいだ。社をことごとく破壊している」


 アマテラスは信じられないものを見る目でツクヨミを見る。


「道を通すのに邪魔だからといって、放火しているところもあったぞ?」


 アマテラスはあまりのことに、言葉が出てこない。


「一応、神主か? そやつがあらかじめ、祈っておったが……。人の圧力か? それに屈したようだ」


「そうか……」


 アマテラスの力は、すめらぎの祈りだけではない。

 領域全てに散らばる神社と呼ばれるところに、人が集まり、手を合わせて祈ることにより、力を得ているのだった。


「そういえば、あの時代は、寺が壊されていったのぅ……」


 国教を神道にするということだった。


「わらわは気にならなかったのだがな?」


「そもそも、考えが違う。生きている者が願うのは、我々神だ。肉体が滅んでからが、仏だ」


「いろんな言い回しがあったな……」


 昭和が期待していた皇太子が結婚した。


「祝の気持ちじゃ」


 雨が降っていたが、雲を手で払う。


「この国のために、頑張ってくれ」


 そう呟くが、その未来は決して明るくない。


「なぜ昭和がおらぬ……」


 ため息を吐きかけ、なんとか息を止める。


「それは無理というもの」


 ツクヨミが横に立っていた。


「国民が喜んでおるが……あの女どもはろくなことを考えておらぬ」


「守れるか?」


「妻を守るのは夫の務め。しばし、様子をみよう」


「なるほど」


 アマテラスはしばらく見守ることにした。

 相変わらず、すめらぎから祈りの声は聞こえてこない。

 全国にあった神社からも祈りの声は小さくなっていく。



「何が起こった?」


 アマテラスは皇太子の様子を見る。

 皇太子妃と二人で悲しみに打ちひしがれていた。


「宿った子が殺された」


「は? どういうことじゃ?」


「呪いがまた使われた」


「それで、子が?」


「占いで男だとわかったから、攻撃したらしい」


 アマテラスは、すめらぎの一族を把握する。


「男が生まれておらぬのか……。ああ、そういえば、そういう呪にかけられていたな」


「ああ、あの女が死ぬ時に、それを強く願った」


「あんな女を嫁にするからじゃ」


 皇太子が惚れ込んで結婚した女は、双子の妹に殺された。

 そして、その時に、呪をかけたのだった。

 普通では呪はかからない。

 しかし、その体に流れていた大陸の血が力を貸した。


『日本の皇室を滅ぼせ』


 その呪は、簡単には解けるものではなかった。

 死の瞬間に、己の執念すべてをかけて呪ったのだった。

 自分を殺した女にではなく、すめらぎの一族を。


「男だったのか?」


「ああ」


「そうか……」


 どっちにしても、呪にはかかっていたことになる。


「おなごなら大丈夫か?」


「恐らく」


「なら、次はおなごがよいな。かわいい娘に力を貸そう」


 そう言って、アマテラスは守れなかった命を悔やんでいる皇太子妃を見た。


「悲しみが強すぎる。魂を傷つけておるぞ」


「次は、必ず。護ろう」


 アマテラスの言葉にツクヨミが頷いた。

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