表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/46

28話 黒いもやもや

フィクションです。

かなり短いです。

「ツクヨミ! どこじゃ? スサノヲ! どこじゃ?」


 アマテラスが珍しく怒鳴っていた。


「何だ?」


「姉者?」


「これはなんじゃ?」


 アマテラスは水晶に、ある島を映した。


「ずっと黒くもやもやとしているではないか!」


「あぁ……」


 ツクヨミが頷き、スサノヲを見た。


「魚は?」


「届けておる。一応、全部食べてるみたいだ」


 ツクヨミは怒っているアマテラスを見た。


「あ~。現代版島流しというのを、やった」


「あ゛?」


「久しぶりの島流しだ。逃げられず、他の船を近づけておらんぞ?」


 アマテラスはじっとツクヨミを見る。


「気持ち悪いのじゃ! ここが!」


 つくよみは、ふむ、と頷いた。


「雨を降らしても、洗い流せぬ」


「そうであろうな」


「水晶で確かめるのも穢らわしい。ここに何を置いた?」


 スサノヲはツクヨミを見る。


「イタチの長女の元夫と、その母親」


「はあ?」


 アマテラスは少し考えた。


「はて……」


 眉間に人差し指を当て、記憶を辿ろうとするが、あまりにも穢らわしかったため、記憶から完全に削除してしまっていたようだった。


「あっちの大陸に住んでいた夫婦の、夫だ」


 ツクヨミはその大陸の方向を人差し指で指さす。


「大陸から抜け出そうとしたから、姫と相談した」


 スサノヲが答えた。


「それで、姫はなんと?」


「それが、すっかりその男の存在を忘れていたようだ」


 アマテラスはそれを聞き、何度か瞬きをした。


「それで?」


「やはり、命を簡単に奪ってしまうのでは、自分の犯した罪の重さにも気づかないままになる」


「で?」


「『反省するようにできないか?』と言われた。だが、他の人に迷惑をかけることなくとも言われたから、その母親と一緒に島流しにした」


 アマテラスは納得し、うなずく。


「で、その結果が、これか?」


 水晶には、海の上に黒いもやが浮かんでいる。


「島を包んでしまうぐらいの穢か……」


 ツクヨミはそれを見て、小さく呟いた。


「このままにしておけば、周りの穢を集めるな?」


「そうじゃ」


「スサノヲ、島を変更しよう」


「どこに?」


「わらわの領域外にせよ」


 それを聞き、ツクヨミはクビを傾げた。


「どこの領域までなら許される?」


 スサノヲは思いついたように言った。


「月はどうだ?」


「私がいやだ」


 アマテラスがそれを聞き、眉根を寄せた。


「とにかく、少なくとも、この国からは追い出せ」


 ツクヨミは小さくため息を吐き、水晶を見た。


「スサノヲ、一応、人が住める島はどこにある?」


「このあたりなら、影響は少ないか?」


 アマテラスの顔をちらっと見ながら、太平洋のど真ん中の島を指さした。


「ふむ。ここなら確か人は住んではおらぬが、ずっと夏が続くようなものだ」


「飲水があれば、生きていけるであろう。そこに飛ばせ」


 ツクヨミが頷いた。


「スサノヲ、井戸だけ掘ってやれ」


「しかたない……」


 そう呟くと、スサノヲは姿を消した。


「お?」


 穢本体の存在がなくなったからか、アマテラスは水晶をじっと見る。

 そして、清めの雨を降らした。

 しかし、なかなか簡単に穢がとれない。

 アマテラスが鈴を鳴らしていかずち、扇で風を起こしても、簡単には黒いもやは晴れない。


「アレの中に第六がいないのが、不思議だ」


 アマテラスは首を傾げたまま、ツクヨミを見る。


「第六ではないのではないか?」


 アマテラスはなかなか穢がとれない島を見る。


「もし、第六が第六とわからないままカケラになっていたら、どうなる?」


 アマテラスに言われ、ツクヨミは考えた。


「そもそも、自分で自分の半神を壊したのだろう?」


「そうきいてるが……」


「第六じゃ。ひっくり返っておらぬか?」


 ツクヨミは目を見開いた。


「まさか?」


 アマテラスの返事はため息だった。


「あ、やってしもうた……」


 仕方なく、新たに作ってしまった大風を島の上に持ってくる。


 スサノヲが戻ってきた。


「ご苦労じゃったな」


 スサノヲが頷く。


「煩いぞ? あそこで正解かもしれん」


「魚は届けるのか?」


「頑張れば捕れそうだったから、覚えていたら様子を見ることにする」


「それでよかろう。もう、十分じゃ」


 アマテラスは水晶に視線を戻す。


「姉上、第九のことは、何か知っているのか?」


「わからぬ。数字を冠した大姫からは何も聞いておらぬ」


「もしかして、まだ知られていないとか?」


 ツクヨミがアマテラスの顔を覗き込む。


「今、このわらわの領域に、第一、第四、第三の残滓……でないな、残り香的なものか。あとは、第五。第二……。揃っておるな」


 アマテラスは驚きながら、ツクヨミを見た。


「それぞれの使いが末姫のそばにおるのじゃ」


 スサノヲはじっと水晶を覗き込む。


「何か、見えるか? あの島の穢、どう見えておる?」


 アマテラスはスサノヲに尋ねた。


「黒いもやもやとしか、わからぬ。あれは……あの男とその母親についていたぞ?」


「存在するだけで、周りに穢を撒き散らしておるんじゃ。ある意味、すごい親子だのぅ……。姫は見ておるのか?」


「見る必要はないと言っておいたが……」


 ツクヨミはそういいながら、こめかみに人差し指を当てる。


「確認しておったら、あの穢に気づかぬはずがない」


「そうか」


 少しホッとしたようにツクヨミは言う。


「姉者、言い忘れていたが、あの島は嵐が多い。勝手に雷も落ちる。これはどうすればいい?」


 アマテラスはしばらく考えていたが、ややしてから首を横に振る。


「それも宿命(さだめ)。運が良ければ生き延びるであろう。一応、他の船が近づかぬよう、島から出ぬようにだけしておけばよい」


 アマテラスはそう言い切った。


「そうしておいた」


 スサノヲは少し得意げに言う。


「ツクヨミ、この島を浄化せよ」


 アマテラスはじっと島を見たまま、言った。


「あい、わかった」


 ツクヨミはじっと島を見る。

 そして、その根源を探すが、見つからない。

 仕方なく、黒いもやを集める。


 集めようとして、ハッと気付いた。


「スサノヲ、雷を落とせ!」


 じっと島を見ていたスサノヲは右手を上げる。

 そして、掌を広げ、何かを握りしめてから、力強く振り下ろした。


 水晶の中で真っ白な稲光が島を貫く。


「うむ」


 アマテラスが、ふぅと小さく息を吐いた。

 そして右手をあげ、左右に振る。


 大風が真っ二つに割れ、す~っと消えていった。


「ツクヨミ、何かわかったか?」


「わかった。あれは、あれが、第九……」


 ツクヨミは自分の掌をじっと見る。


「塊にはならぬ。あれはあのカタチが、第九だ」


 アマテラスは目を見開き、言葉を失う。


「浄化は……」


 ツクヨミは目を閉じ眉根を寄せた。


「スサノヲのいかずちが有効だ。だが……」


 ツクヨミは、黒いもやもやが消えた島を見る。


「どこに飛ばした?」


「第四の大神の方向へ」


 アマテラスはじっと水晶を見たまま、考える。


「第六と混ぜてはならぬのか?」


 スサノヲの問いに、ツクヨミは頷いた。


「あれは完全に意思を持っていた」


「恨みか?」


「そうだ。半神を分けられ、戻され、本来の半神に潰されたのだぞ?」


「恨みも深かろう……」


 アマテラスのつぶやきに、ツクヨミはうなずく。


「その恨みが誰に向かっているのかが、問題じゃ。末姫か。第六か。それとも……」


「明確な相手はまだわからぬ。だから、第四に飛ばした」


「兄者、なぜ第四なんだ?」


「いろいろな世界を作っておるらしいからな。その一つに集めればなんとかなるのではないかと……」


「第四の大姫任せにしたということか……」


「そうともいうが……」


「一応、一族に知らせておいたほうがよいのぅ」


 アマテラスはそう言い、ツクヨミとスサノヲを見た。


「末姫に近づけないようにせよ。見つけ次第、二人で、第四の大姫のところへ飛ばせ」


「あい、わかった」


 ツクヨミとスサノヲはアマテラスにしっかりと頷いた。


「姫に気づかれたと思うか?」


「……誤魔化せぬ」


「そうじゃな。折を見て、話すしかないか……」


 ツクヨミが頷き、言った。


「私の一族に話をしておいてもらおう。それに、姫にはどうみえているのか知っておきたい」


「頼んだぞ」


 ツクヨミは頷いた。

ツクヨミとスサノヲは島流しすることができて、喜んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ