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22話 ティアラ

フィクションです。

作者はとんでもなく妄想中です。

 年が明けた。

 皇室に休みはない。

 新年の新年祝賀の儀がテレビで中継されていた。




「皇居宮殿、松の間、両陛下が入ってこられました」


 アナウンサーが淡々と説明している。

 燕尾服のすめらぎ、その後ろにローブデコルテにティアラで正装の皇妃が入口で二人揃って、一礼し、そのまま進んでいく。


「その後ろには皇太子殿下が続いて入ってこられました」


 皇太子もローブデコルテにティアラの正装。

 入口で、一礼してから、中に進む。


「皇太子殿下の頭上では、ティアラが輝いていますね」


「今年は、国民からの強い要望があり、皇太子殿下がティアラを新調されました。今、両陛下の後ろを通って両陛下の右側にお立ちになります」


「新調されたのは、ティアラとネックレス。そしてイヤリングですね。とてもお似合いです」


 皇太子がアップになる。


「そして、今、入ってこられましたのが、天皇陛下の妹、聖子内親王殿下です。かつて皇女の時に着用されていたティアラをお召です。両陛下の左側にお立ちになられます」


 新調されたローブデコルテにティアラの正装で、内親王殿下が一礼していた。





 テレビでは、新年祝賀の儀が放送されていた。

 昨年は上皇妃の逝去ということで、新年の祝賀関係の行事は、すべて見送られていた。


「2年ぶり?」


 望はお雑煮を食べながら、テレビを見ている。


「そうなるね」


 そう答えたのは、母の直子だった。


「人数が減ったね」


「そうね」


 いつもならそこにイタチ夫妻と次女が加わっていたのだった。

 イタチ本人にいたっては、皇妃よりも豪華なティアラを着用するということを平然としていた。

 さらにティアラに合わせたネックレスはティアラをネックレスにしたのか?といいたくなるぐらいの豪華さだった。

 自分が皇妃でいるつもりだったのだろうか。

 実に愚かな事をしていたものだと、望は思う。

 

 仮の宿の占い師を引き継いだ直子は、じっと画面を見る。


「皇太子が女性であったことが明治以来なかったから、それに相応しいティアラになったんだね……」


 なるほどと、一人で納得している。


「どういうこと? いつも叔母である聖子さんのを借りてたよね?」


「すめらぎはわかってらしたから、新調しないということにうなずいておられたんだね。皇女という身分と皇太子という身分じゃ全く違う。それに相応しいティアラでないとダメだよね。ある意味、さすがだね」


「ああああ~~~~」


 望は思わず大きな声を出す。


「別に節約とかじゃなくて? 『皇太子』に相応しいティアラ!」


「いや、節約もあったよ? あの時、片方でしっかりと栓を締めてても、横で全開していた人達がいたからね」


「確かに、それって、結局、どうなったの?」


 直子は遠い目をした。


「トラック何台分って、聞いてた?」


「百台分?」


 直子は首を横に振る。


「その倍だよ。キツネでね。イタチは……」


 ため息を吐く。


「イタチがその百台分……という感じかねぇ……。報道では一応数字はでていたけど、少なめに、言い訳っぽく言ってたねぇ……」


 望は自分でお雑煮のおかわりを入れに行く。


「あ、全部食べていいよ。今日はみんな帰ってこないから」


「うん、わかった」


 たっぷりと餅を入れ、テーブルに戻る。


「それより、あの、とんでもなくお金を使ったあの家はどうなったの?」


「家……ねぇ……」


 直子はお茶を入れ、一口飲む。


「あまりにも悪趣味過ぎてねぇ……」


「悪趣味……」


 直子は首を傾げる。


「いや、もともとセンスのカケラもない嫁さんだったけどさ、ああ、イタチね」


「う、うん」


「あれは、酷かった」


「え……」


 思い出しただけで、疲れているようだった。


「あれ、イタチがじきじきに皇太子殿下を案内したっていうんだけど……。あれは、人を招いてもてなすということじゃないね。もてなすつもりなんて最初からない。ただ、『コレだけの財力が私にはあるのよ。すごいでしょ。これも、最高級品よ? あなた、持ってる? コレだけの広さがないと、映えないわよね。これは✕✕産の無垢材なの。これだけの大きさのはなかなか現地でもなかったのよ。でもね、私はコレを手に入れられるの。すごいでしょ?』」


「か、母ちゃん?」


「もっと続けようか?」


 望は黙る。

 こういう時、母に逆らって、いいことなんて、一つもない。

 思っていることをすべて吐き出させて、竜巻になるか嵐になるかわからないが、通り過ぎるのをただひたすら待つだけ。


「『この家具は特注なの。特別に作らせたのよ。この部屋にぴったりでしょう? 家具職人がこだわって、これを作るのに3年はかかったのよ。すごく細かい細工でしょう? 私がそう指定したの。私のセンスいいでしょ? それにね、ここで使われているこのつまみ、この材料はものすごく希少なの。それをここまで集めさせた私、私がすごいのよ。建築家の先生はそんなこと全然思いつかなかったんだからね』」


 直子はそこまで一気に言うと、お茶を飲み、一息つく。


「『それに、この壁紙は50年前と同じものなのよ。当然、特注なのよ。あとここね、切りっぱなしの断面は嫌だから、金箔みたいな安っぽいのじゃないの。金を張り付けてるの。どう? 豪華でしょ? あの梁の金具は再利用したのよ。ものは大切にしないとね。それとここのシャンデリア。きれいでしょう? 50年前のものには見えないでしょう? 見覚えあるかしら? 皇居の宮殿と同じなのよ。すめらぎがここで外国の要人と面会しても問題ないでしょう? それとこれ、一番の自慢なの。金の蒔絵なの。金よ? ここは黒の大理石。輸入にちょっと時間がかかったけど、素晴らしいでしょう? 一枚ものよ? 張り付けてないのよ? この厚み、すごいでしょう?』」


 そして、また一口お茶を飲む。


「まだ言いたいけど、この辺にしておくわ。まあ、とにかくすごいんだから。あとで職人に聞いたけど、値切られたっていうのよ? あれだけの労力をかけさせられてるのに、値切ったのよ? 追加で億単位で使っておいて。それに、設計通りにしてるのに、『ここは違うでしょ。どうしてこうなるの? 私はそんな事一言も言ってないわ。直してちょうだい』って、キンキン声で言って、親方達は、職人を引き止めるのに必死だったっていうのよ? 念の為、設計図をやその場でのやり取りのビデオを確認したら、イタチは一言もそういう事を言ってないのよ。どう思う?」


 どう思うと聞かれて、この場合、なんて答えるのが正解なんだろう?

『そういうときはね、『ひどいね』って、言っておけばいいのよ』

 急に朋美の言ったことを思い出す。


「ひどいね」


「そうでしょ? テレビで見せたところは、それなりに、その程度に作ったところよ。全部見せないと意味ないと思うのにね。大丈夫なところだけ見せてるの。プライベートのところなんて、もっと贅沢なものを使ってるわよ? そんなことより、あの、有刺鉄線で囲われたあの建物!」


「うん」


「あれは解体するらしいわ」


「あれ、影武者の……なんだったの?」


「イタチ曰く、教育の場、だったらしいわ」


「教育……」


「そう、躾ね。といってもね、『あなたは将来天皇になるの。この国のトップなの。私はその母親なの。国母なのよ。あなたは私の言う通りに動けばいいの。何も考えなくていいのよ。私がいいっていうまで、ちゃんと練習してないとだめよ。写真にも残るのよ? 映像にも残るの。ちゃんとやってね? お母さまをよろこばせてね』って」


 直子はそう言うと、口を潤すために、お茶を飲む。


「ようするに、洗脳場所?」


「そういうことになるのかしらね? ただ、そこに入るのは、まだ影武者として育てられてはいたけれど、外に出せない子達という感じかしらね? それに、あの家には地下もあるのよね。地下牢というか座敷牢がいっぱいありそうじゃない? 一体何人の影武者がいたのかしらね」


「いろんなタイプがいたもんね」


「ほんと。私はあのトンボの子が一番よかったわ」


 大きなため息を吐く母に、望は何も言えない。


「あの子だったら、陛下も成長を楽しみにしていたと思うのよ」


「そうなの?」


「優しい子だったわよ? ただ……ただ、幼すぎた。心が……成長しなかった」


「そうだったんだ」


 そう言えば、と思い出す。

 朋美は魂が霧散したと言っていた。

 それは一族でもビデオを見て、確認済み。

 巫女の一族にも連絡を取り、情報を共有した。


「最後、海が見たかったんでしょ?」


「そうみたいだね。あの日にアップされたあの三曲の動画、再生回数がすごいらしいわね」


「うん、他のアイドルやアーティストの曲を差し置いて、ダントツで世界一だよ」


「『聞いてくださるだけで、十分です』って、収益はすべて世界……なんたら基金に寄付しちゃったんだっけ? で、あの建物の話に戻るけど」


「うん」


「解体したら、国民は怒るかしらね?」


「使い道がないのなら、解体するなり、縮小するなりして、何か使えるようにしたほうがいいと思うけど……。でも、お金がかかるでしょう?」


「そこなのよね。でもね……」


 直子はまたため息を吐いた。


「お祓いじゃ、浄化できないのよ」


「え?」


「皇太子殿下でもかなり時間がかかると思うわ。あれは……年単位で取り掛からないと、だめね」


「浄化に?」


「そう」


「あの人達って、そういうものの上に住んでいて、平気だったんだ。ある意味すごいね」


 望は食べ終わった食器を流しに持っていき、洗って洗いかごに入れる。

 そしてマグカップにインスタントのコーヒーを入れてテーブルに戻った。


「いっそのこと……スサノヲ様にお願いして、いかずちを落としまくってもらうって、どう?」


「周りが停電して、大変なことになるわよ」


「そっか。残念」


「でも、そんな事言ってると、本当にスサノヲ様がいかずちを落としちゃいそうよ?」


「そういえば、あのなんだっけ? 鳥の像がお墓代わりだっていう都市伝説みたいなのがあったけど」


「あったわよ?」


 平然と直子は言う。


「あの下に地下室があってね、そこに入れてたわ。ほんと、何人分なのかしらね?」


「伝説のほうが、よかったね」


「でも、都市伝説というのも、バカにできないわよ? その伝説の裏に隠されている真実がとってもえげつないんだからね」


 直子は、じっと望の手元を見る。


「ブラックでいい?」


 こくんとうなずく直子に、望は席を立ち、直子愛用のマグカップにインスタントコーヒーを入れて、テーブルに置いた。

 そして、食器棚の中から、お菓子入れを取り出し、それもテーブルの上に置く。


「気が利くようになってきたわね」


「姉ちゃんに鍛えれた」


 返事がため息だった。


「まだ、第六のカケラが見つからないんだよね……」


「そう、言ってた」


 あれから、白杖を持っていた女性を一族が見張っている。

 時々、巫女の一族も確認してくれるが、それらしきモノは現れていない。


「もしかしたら、その女性から一族が離れたほうが、カケラがわかりやすいかもしれないね」


 望は首を傾げた。


「たぶん、というか、あの女性は間違いなく、第六のカケラと関わる。いや、すでに関わっている。だけど、私達が見張ってるでしょう?」


「うん」


「だから、第六は警戒して、姿を表すことができない」


「ということは、離れたら?」


「そう、間違いなく、接触する」


「あの時、姉ちゃんや父ちゃんたちが感じた何かの気配って、何だったと思う?」


「霧散した魂の気配ではなかったと、朋美は言った」


「うん」


「だから、あのトンボの青年ではない」


「うん」


「そうなると、その場にいた浮遊霊に紛れ込んだとは、考えられない?」


「え?」


「あと、考えたのは、第六のカケラって、あと何個あるんだっけ?」


「二個?」


「その一つを持った人が……いたとか?」


「母ちゃん……」


「それ、誰がわかると思う?」


「ツクヨミ様か、第六なら、姉ちゃんか……」


「だよね? でも、その朋美がわからなかったんだよ?」


「あ……」


 その時、望はあることを思い出した。


「母ちゃん、めっちゃ局所的な大雨をアマテラス様が降らせた時、あの地下室で、何かがずるって動いたんだよ」


「は?」


「だから、何かがずるって、動いたの」


「あんた、なんで今頃それを言うの! もう一度そのビデオをしっかりと見な!」


 コーヒーカップを持って、モニターの部屋に連れて行かれる。


「あのビデオ、出して!」


 母に命令され、仕方なく、その時の録画ファイルを出した。

 そして、壁一面のモニターにそれを表示させ、再生させる。


「どのあたり?」


「最後の方」


「でも、これはこのまま見るよ」


 そう言って、影武者の命を奪われていく様子を見る。

 そしてカメラが切り替わり、奥の部屋が写る。


「ここではまだ何もないんだよね?」


「うん」


 望はツクヨミの一族の血をひいているが、直子はツクヨミの一族ではない。巫女の一族でもない。

 関西にある神社の生まれで、大学で東京に出てきて、そこで脩平と意気投合したらしい。

 望自身、直子が何の能力を持っているのか、実は知らないのだった。


 直子がじっと目を凝らす。


 看護師が倒れている場面がずっと続く。

 そして、いきなりブツンと画面が切れ、黒くなる。


「ここからだわ」


 直子は更に黒くなった画面をじっと見る。

 望もじっと見るが、何も読み取れない。

 第六のカケラが見え、それが消えてからは朋美も読み取れていなかった。


 直子がリモコンで再生を一時停止する。


「いた」


「何が?」


 じっと見ている母の横顔と、モニターを交互に何度も見る。


「黒いもやもや」


「え?」


 ふぅ……と息を吐き、コーヒーを飲む。


「え? 母ちゃん? 黒いもやもやって、何?」

 

 画面は黒い。

 なのに、黒いもやもやが見えるという。

 望には想像できなかった。


「あの事故現場のビデオ出して」


 望は言われるまま、交通事故時の防犯ビデオの映像を出す。


「あ、音は消しておいて」


 消音し、望もビデオを見る。

 何度も何度も繰り返しみた映像だった。


 望が読み取った感情は、最初は驚き、不快、恐怖。

 次、逃げてから、ただ一人残っていた時は、恐怖と焦りだった。

 そして、車が突っ込んで停止。

 その時は、阿鼻叫喚という言葉しか出てこなかった。

 110番し始める人が出てからは、少しは冷静になっていく。

 そして、その青年が助かることを強く願う気持ち出てきていた。

 問題は、その後。

 救急車は白杖を持った女性を病院へ搬送する。

 朋美の姿が確認でき、すぐ後から晶子も来た。

 ややしてから脩平が走ってくる。

 ちらっと横を見ると、真剣な顔で、直子が画面を見ていた。


 なんだろう?

 この気配。


「あ~~~~~~~~」


 望が何かを感じた時、直子が反応した。


「あ~~~~~~~~~~~~~」


 声は出しているが、目はモニターを見たまま。

 それが、急にその気配が消えた。


「あ、御札」


「うん、消えたね」


 いつもの母だった。

 ゆっくりとコーヒーを飲んでいる。

 望も気持ちを落ち着かせるために、コーヒーを飲む。


「同じもの?」


 あのずるっとしたモノと同じとは思えなかった。


「本質的には、同じだね」


「え……」


 そういうと、直子は黙ってしまった。


「第六は関係ある?」


「第六かぁ……」


 直子は少し考えると、首を傾げる。


「朋美が一番反応していた動画って、ある?」


「キツネやイタチ?」


「そう。別にカケラが写っていてもいいんだけど」


 朋美が一番反応していた映像に何があるか……。

 すぐに思い出したのは、参拝でのいかずちだった。


「カケラでいうと、コレ」


「あ、音は消しておいて」


 映像だけ、流す。


「ものすごく清められてるわね……」


 確かに、そう思う。

 雨上がりといっても、普通の雨じゃない。

 かなり強めの清めの雨だった。


 大宮司が先頭で歩いている。

 後ろに見えるのは、影武者だ。


 ちらっと横を見ると、直子はじっと画面を見ていた。


 カメラが影武者をアップでとらえる。


 その瞬間、朋美が「いた~!」と叫んだのを思い出す。


「ふふん、なるほど」


 直子の反応は冷静だった。


「わかったわ。一緒ね」


「え?」


「だから、交通事故現場にいたのと、第六のカケラ、たぶん大きい方ね、それは同じ。あの地下にいたのも、大きい方」


「トンボの青年のカケラは?」


「あれは、ちょっと違うわね」


「同じ第六でしょ?」


「うん。でも、アレは……あのこは違うわね」


 第六のかけらを『あのこ』呼ばわりする母に、望はついていけていない。


「あんた達、言ってたじゃない。最後に残ったのは希望か、それとも、災の兆候なのか……でしょ?」


「そう」


「あのトンボの影武者に入っていたのは、希望というよりは、最後の良心って感じね」


「良心……?」


「そう。第六の本体?にはちょっと足りてないけど、それがしでかしたことの尻拭いというか、後片付けというか……。責任を持って後始末します……という感じ」


 望はなるほどと、うなずく。


「そっか。本来なら存在してはならないもの……。キツネは消えたし、イタチの魂も消えた」


「その血縁者も全員消えてるわよ」


「……それも、すごいね。で、生き残っていたのは、次男と、次女の魂が入ったその嫁……と、影武者達か」


「そう。キツネと言っても、早々に入れ替わっちゃってるしね」


「それ、その当時、気付いた人、いたの?」


「それなりにいたけど、その時代、そんな事言える人、いなかったわよ?」


「どこでわかったの?」


「顔の幅が違うじゃない。頬骨」


「整形かもしれないでしょ?」


「今の技術ならそういえるけど、あの頃じゃぁねぇ……」


 そう言って、直子は首を横に振る。


「それにね、結婚後、ノースリーブで腕を出してるのよ。まるまるとした二の腕をね?」


「母ちゃん、それ、女性に失礼だよ」


「アレを女性扱いしちゃダメ。それと、テニスウェア着てるときかな。あんなにぶっとくてしっかりとした足が、ヒールの似合う細いふくらはぎにどうやったらなるのよ」


「結婚して、環境が違いすぎて、痩せたって思わないの?」


 直子は残念な子を見る目で、望を見る。


「あの女が、そんな殊勝なわけないでしょ。自ら命を断つなぁんてことは絶対にしてないわ。滑って転んで頭の打ちどころが悪かった……だと私は思ってる」


 断言する直子に、望はそれ以上いうのを諦めた。


「まぁ、とにかく、骨格が違うのよ。膝の大きさが全然違う。きっと手相も違うわね。お手振り画像があれば、比較できるんじゃない?」


 望は、朋美と同じ言い方をしている母親を見て、親子だなぁ…と変なところで感心した。


「じゃあ、その第六のカケラの半分は……そんなに気にしなくてもいいってこと?」


「気にしないとだめね」


「え~?」


「恐らくだけど、残りを探すわよ?」


「で、合体しちゃうの?」


「そこがわからないのよね」


 腕組みをして考え込む。


「コレに対抗できるのは、第七の末姫様?」


「でしょうね」


 あっさりと言う直子に、望はモニターを見た。


 防犯カメラの映像はまだ続いていた。


「ん? 母ちゃん? なんか、黒いのが見えるんだけど?」


 直子はモニターを見た。


「木の中にいるわね……」


「鳥?」


「鳥……ね……」


 直子は脱力した。


「鳥の中に入ってたのね? 人ばっかり探してたら、見つからないはずよ!」


「うん」


「って、あんた、第六見えたのね?」


「よくわからないけど、黒いモヤみたいなのが見えた」


 直子は首を傾げ、ややしてから、じっと望を見る。

 そして、シークバーを少し戻した。


「これ、じっと見てくれる?」


 望はじっとモニターを見る。

 場面は、救急車が離れて行くところだった。

 まだ、黒いもやもやは見えない。

 しかし、青年の魂が霧散した後、第六のカケラの半分はここにいたはず。


「もういいわ」


「え?」


 直子は納得したように、頷いている。


「うん、う~ん。どうしようか。困ったな」


「え?」


 椅子の背もたれにもたれかかって、何故か天井を見上げている。

 こういうのって、確か、お手上げ状態?

 諦め寸前?


「そっか。やっぱり」


 そう言うと、直子は立ち上がり、望の頭を撫でる。


「今なら、新幹線での移動も大丈夫かしら? 今すぐ、神戸のお婆ちゃんのところに行ってきなさい。新幹線代とお土産代は出してあげるから。今すぐ準備!」


「え?」


「下着と2・3日分の服でいいわよ。あっちで自分で洗濯しなさいね。ちゃんと靴下も忘れないでね」


 慌てながらも、望は、自分の部屋に戻り、言われた通りの荷物をリュックに詰め、一瞬迷ってから部屋着とパジャマも入れる。

 そして、スマホと、イヤホンと、筆記用具とメモ帳の入ったファイルも入れる。ついでにタブレットも入れた。

 財布を確認し、がっくりと肩を落とす。


 上着を着て、帽子もかぶって、ダイニングに入ると、すでに現金が入った封筒が用意されていた。


「お土産は、あの『ごまたまご』がいいわ。いっぱい持っていってね。あ、できれば、お裾分けできるように12個入を10箱ぐらい買っていきなさいね」


 そう言うと、直子は車のキーを手にする。


「駅まで送っていくわ。いいわね? あ、ちゃんとお婆ちゃんには連絡しておくからね。自由席がなければ今回に限りグリーン席を許すわ」

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