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死ぬほど愛してる

作者: ちむどん

「死ぬほど愛してる」



八代  :やしろ。春から大学進学のため事故物件に引っ越してきた。

     動物とホラー映画が好き。


レイ  :八代が引っ越してきた物件にいた地縛霊。

     この世に未練があり成仏できずにいる。


女部下 :3セリフしかないのでレイと兼役。


_______________________________________________



八代:これで最後か、よいしょっと。

   ふー、やっと荷ほどき終わったぁ。

   ...これでもう、あの家に戻ることもない。

   天涯孤独かぁ、案外スッキリしたな。

   とりあえず記念に新居の写真でも撮るか。



   (数枚写真を撮る)



八代:どれどれ...ん?この写真、これ、なんか変なのが...

   人?だよな、どうみても...



レイ:...ァァ



八代:こえー...心理的瑕疵(かし)だとは思うけど心霊写真だよなこれ...

   トゥイッターにアップしたら軽くバズるんじゃないか?



レイ:...ァァ゛ァ゛



八代:?なんだ?変な音が



レイ:ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛



八代:ギィヤァァァァァァァ!!!お化けェェェェェェェェ!!!



レイ:エェェェェェェェェェ!?!お化けェェェェェェェェ!?!



八代:ぇぇぇぇ...はぁ?



レイ:どこ!!お化けどこですか!!怖いよぉぉぉぉぉぉ!!



八代:...



レイ:悪霊退散!!悪霊退散!!早くいなくなってくださーーー



八代:(被せて)お前だよ。



レイ:...はい?



八代:悪霊はお前だ。早くいなくなってください



レイ:あっ、悪霊じゃないですよ!ただの地縛霊です!!



八代:変わんねーだろどっちも。霊媒師って呼ぶのにいくらかかるんだろ。えーっと...



レイ:早まらないでください!!まだ助かります!!



八代:それ死にそうなやつを止めるセリフだから。

   死んだやつが言うセリフじゃねーから。



レイ:はっ!そうですね!でも除霊は勘弁してください!



八代:なんで?このままだとめちゃくちゃ困るんだけど。



レイ:除霊なんかされたら私が消えちゃうじゃないですか!!



八代:当たり前だろ、除霊ってそういう目的でやってるんだから。

   えーと一番まともそうな霊媒師...どれもうさんくさいな。



レイ:お願いします!なんでもしますから!!



八代:は?なんでも?



レイ:ええ!!何でもです!!



八代:なんでもって言ったな?



レイ:え、ええ...痛いのはちょっと



八代:ふーん、それなら...








八代:美味い!!



レイ:ホントですか?よかったぁ~



八代:すごいなお前、幽霊のくせに物さわれて飯まで作れんのかよ。



レイ:ええ!ポルターガイストってあるでしょう?

   


八代:ああ、あるな。誰もいないのに椅子とか動いたり皿が飛んだり...



レイ:あれ、大体地縛霊の癇癪かんしゃくですから。



八代:そうなの!?



レイ:わたしもイライラした時とか皿投げますもん。



八代:何やってんだお前!



レイ:きもちいいんですよね~あれ。ガシャーンって割れる音。



八代:気持ちはわからんでもないが俺の家では絶対やめてくれ...



レイ:善処します、あはは...



八代:そういえばお前、名前は?



レイ:あ~、そういうの覚えてないんですよね...

   死んだあとって生前の記憶があいまいになるみたいで。



八代:そうなの?死ぬ前何やってたかとかも覚えてないのか?



レイ:女優です。



八代:覚えてんじゃねえか!



レイ:とはいってもレストランでバイトしないと生きていけませんでしたけどね...



八代:ああ、どうりで美味いわけだ...

   よく見たら結構綺麗な顔してるもんな。



レイ:そうでしょうそうでしょう!えっへん!



八代:どっちの褒めに反応してんだ...

   レイ、でいいか?



レイ:え?



八代:名前だよ。これから一緒に暮らしていくんだし、呼び名がないと不便だろ。



レイ:レイ...わかりました!今日からよろしくお願いします!!えっと...



八代:俺は八代、家事全般よろしくな。



レイ:ええ!?ご飯だけじゃないんですか!?



八代:あははは



八代:(N)こうして、俺とレイの奇妙な二人暮らしは始まった。

   まさか引っ越してきていきなりこんなトラブルがあるとは思わなかったが...

   まぁ寂しくはなかった。楽しい生活を送ることができた。



八代:今の時期お花見シーズンだよなぁ。レイ、一緒に行かないか?

   ずっと家の中にいるのもきゅうくつだろう。



レイ:えっと、気持ちはありがたいのですが地縛霊なので外に出られなくて...



八代:地縛霊だと外に出られないのか?なんで?



レイ:地縛霊とは、亡くなった際にこの世に強い未練を残して死んだ人間がなるものなんです。

   ですので、基本的にその場所にとらわれて離れることができないんです。



八代:そうなのか...ちなみに、ここから離れたらどうなるんだ?



レイ:たぶん、わたしをこの世に維持する力がなくなって消えちゃうと思います。



八代:そうか、じゃあ一緒に見に行くわけにはいかないな...



レイ:はい...え?



八代:え?



レイ:八代さん、わたしにいなくなってほしいんじゃ...



八代:何言ってんだ、消えられちゃ困る!



レイ:八代さん...



八代:大事な家政婦だからな!



レイ:ズコーッ!そういう...



八代:まあ冗談はさておき、家にいながら楽しめるイベントはないかね。



レイ:いいんですよ、わたしなんかのためにそんな...



八代:寂しいだろ、ずっと一人でこんなところにいたらさ。



レイ:それは、そうですけど...



八代:よし!良いこと思いついた!





レイ:あ、あの、八代さん?これはいったい...



八代:なかなかいい出来だろ!折り紙と段ボールで作った桜だ!



レイ:八代さん...



八代:あとはレイの飯があればインドアお花見ができる!

   また美味いの頼むぜ?ちなみに卵焼きは甘い派だからな。



レイ:...はい!





八代:おぉー!俺の好きなものばっかりだ!


レイ:ふふ、おかわりもありますからねー。

   のどに詰まらせないように気をつけてくださいね?


八代:ああ!ありがとう!とりあえず、いただきます!



レイ:はい、いただきます。



八代:そういや、今年の夏はうちの近くで花火大会があるらしいな...

   どこらへんでやってるんだっけか?



レイ:あ、それでしたら...



  (花火の爆発音が響く)



八代:きれーだなぁ。



レイ:そうですねぇ。



八代:うちからでも見えるんだな、しかもこんなきれいに。



レイ:そうですねぇ。



八代:最悪手持ち花火で我慢してもらうとこだったが...レイ?



レイ:そうですねぇ。



八代:俺じゃなくて花火見ろよ。



レイ:...はっ!?ごごごごめんなさい!!



八代:なんだこいつ...

   ...そういえばさ、レイの未練って何なんだ?



レイ:未練...ですか?



八代:うん。地縛霊って、未練があるから死んだその地に魂が残るんだろ?

   なら、そんなに強い思いっていったい何だったのかなーって。



レイ:...



八代:あ、言いたくないならいいんだ。大丈夫。



レイ:いえ、言わせてください。

   私の未練は、恋人の自殺を止められなかったことです。

 


八代:恋人...



レイ:優しくて誠実で、誰よりも繊細な人でした。

   彼が亡くなる前日に、今までありがとう、と連絡があったんです。

   わたしは一晩中、必死になって彼を探し続けました。

   でも先に警察から連絡があって、彼のもとにたどり着いたときにはすでに...



八代:そうか...



レイ:結婚するつもりでした。もうすぐ、籍も入れようねって...

   わたしは、ショックで、後を追って...



八代:もういい!もう、いいよ...



レイ:...



八代:...俺も、死んだら地縛霊になるかもな。



レイ:え?なぜです?



八代:俺ずっとこの世に居場所がないって感じててさ。

   両親も出来の良い弟ばっか相手して、俺には無関心だった。

   でも未練ができたんだ、最近な。



レイ:え...あの、自意識過剰じゃなければ、それって...



八代:...



レイ:...



八代:あ、あのさレイ、俺...   



レイ:ご、ご飯にしましょっか!うん!そうしましょう!



八代:...そうだな。





レイ:おおお~!



八代:どうだ?今度は折り紙じゃなくて本物の葉だぞ!

   幹は段ボールだが...



レイ:きれいな紅葉ですね!...なんで前かがみなんです?



八代:子供にまじって半日もみじ拾いしてたからな。

   腰がだいぶ、いててて...



レイ:もう、八代さんまだ若いじゃないですか!

   マッサージしてあげますから、横になってください!



八代:すまんねぇ、ばあさんや...



レイ:いえいえ、いいんですよおじいさん。



八代:あ~そのへん気持ちいい...



レイ:もっと強いほうがいいですか?



八代:うん、あ~そこそこ、あぁ~



レイ:ふふ、ほんとにおじいさんみたいですね。



八代:...なんかさ、俺たちって



レイ:ふん!ふん!



八代:...(ボソっと)新婚、みたいだよな。



レイ:ふん!...え?何か言いました?



八代:な、なんでもねーよ!!



レイ:?そうですか...





八代:あ、母さん?うん、元気だよ。まぁ、一人じゃないからな。

   え?いや、同棲っつーか、まぁそんな感じ。

   は!?ばっ、彼女じゃねーよ!!友達っつーか人間じゃねぇっつーかその...



レイ:同棲?



八代:どわぁっ!!近...あー!とにかく心配いらねぇから!じゃ!



レイ:ねぇねぇ八代さん、何の話です?



八代:レイには関係ないから!あっちいってて!



レイ:?わかりました...



八代:ったく...





八代:メリークリスマース!



レイ:わーい!



八代:さすがにクリスマスともなると豪華だな。



レイ:今日は腕によりをかけて作りましたからね!たくさん召し上がってください!



八代:どれも美味そうで何から食べるか迷うな...



レイ:でしたらこれはいかがです?はい、あーん!



八代:は!?



レイ:?どうしました、八代さん?



八代:あ、いや、あ、あーん...



レイ:ふふ、おいしいですか?



八代:うん...



レイ:よかったぁ!作った甲斐がありましたよ!



八代:あ、そういえば。



レイ:?



八代:ほい、クリスマスプレゼント。



レイ:え?わぁ...!



八代:ペンダント。安物で悪いけどな。



レイ:ありがとうございます!着けてみていいですか?



八代:あぁ、俺も見てみたいし。



レイ:どうですか?



八代:よく似合ってるよ、きれいだ。



レイ:ふふふ、ありがとうございます!



八代:おう。



レイ:そうだ、名前書かなきゃ!



八代:なんだ、そんな習慣があるのか?



レイ:はい!大事なものはなくさないように名前を書いてるんです!



八代:...そうか



レイ:...これでよし、と!

   ふふふ、一生大事にしますね!



八代:もう死んでるだろ。



レイ:そうでした!あはは!



八代:ぷっ、ははは...



八代:(N)俺は気が付けばたまらなくレイに惹かれていた。

      よく笑うところ、かわいい笑顔、料理が上手いところ、

      そして、飯を食う俺を眺めているときの様子...

      本当に好きだった。でも俺とレイは生者と死者。

      文字通り一生相容(あいい)れない関係だ。

      どうやってこの気持ちを伝えようか、どうすれば一緒になれるのか。

      最近はずっとそんなことばかり考えていた。

      ...そうだ、俺も死者になればいいんだ。





八代:...うん、一応育ててくれた恩はあるわけだし。

   別に変な意味じゃないから、今までありがとうって、そんだけ。

   うん、さよなら。



レイ:...八代さん?どうかしたんですか?



八代:ああ、いや、なんでもない。なんでもないよ。



レイ:...?



レイ:(N)思えば、八代さんの様子がおかしくなったのは二人で花火大会を見たあたりからだった。

   急に部屋のものがなくなっていたり、しょっちゅう電話をかけていたり、

   まるで、八代さんがいなくなってしまうようなそんな気がした。

   ...この後起こった出来事を止められたのは、予感があったからかもしれない。



   (歩道橋の上に立つ八代、下には電車が走っている。)



八代:思えばこの先やりたいこともないし、こうなる運命だったのかもな。

   中途半端な大学出てそんなに高くない給料もらって死ぬまでこき使われて、何の意味があんだ。

   そうなるくらいなら...



   (猛スピードで走り抜ける電車。突風が八代の頬を殴る)



八代:...はは、死ぬのってこんなに怖えんだな。

   でもレイはもっと怖かったはずだ。もっとつらかったはずだ。

   こんなことぐらい、なんともねぇ...!!






レイ:だめぇぇ―――――っ!!!



八代:ぐわっ!?いってぇ...

   レイ!?お前、外に出たら消滅するんじゃ...



レイ:ダメです、自殺なんて、残された人は、みんな、不幸になる!!



八代:レイ...



レイ:私みたいにならないで!!

   あなたには、強く生きて、ほしい...



八代:レイ!!体が!!



レイ:ありがとう、八代さん...

   これで、未練はありません...



八代:レイ!!レイ!!!

   消えち、まった...



八代:これは、俺があげた、ペンダント...



   (拾い上げて、裏を見る)




















   (  「好きです」  と書かれている)



八代:はっ...好きですって、あいつ、名前書くんじゃねえのかよ...

   はは、うっ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...


_______________________________________________



部下:八代課長、その...



八代:なんだ?



部下:わ、私と、結婚を前提に!



八代:わりい、気持ちはありがたいが無理だ。すまんな。



部下:ど、どうしてですか!?私、ずっと課長のこと








八代:...死ぬほど好きなやつがいるんでな。



「死ぬほど愛してる」終

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