後悔
仕事終わりの帰り道。
家の窓から漏れる光と街灯に照らされた夜道を早歩きで帰る。
君が待っていてくれる家へ。
玄関につくとドアについた曇りガラスから暖かな光が漏れている。
ドアを開け「ただいま」と言いながら扉を閉めカギを占める。
振り返ると、「おかえりなさい」と言いながらリビングから玄関まで来て出迎えてくれる。
そして君を抱きしめる。
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いつも家に帰ると玄関まで迎えに来てくれる君。
まるで「おかえりなさい」と言ってくれるように少し低い声で鳴きながら私の足に擦り寄ってきてくれる。
「かりんちゃんただいま」
そう言う私の足をくぐりながら、右に左に忙しなく頭を擦り付けている愛猫を存分に撫る。
満足するとすっとリビングの方へ足を進める猫。
私もその後に続く。
リビングに入るとソファーに座りながらテレビを見ている祖母がいる。
「おばあちゃんただいま」
そう私が言うと祖母が
「おかえりなさい」
と返してくれる。
それが私の小学校のときから変わらない帰宅ルーティンだ。
いつか終わりが来てしまう。
分かってはいても、それはまだ先の未来の話だとそう願っていた。
だが終わりはいつでも突然やってくる。
忘れもしない二月二日の猫の日。
今日は実家に帰る予定だ。
昨日祖母から電話があった。
「最近かりんちゃんの体調が良くないみたいなのよ。あんまりご飯食べてくれなくて。お前ちょっと帰ってきて病院に連れて行ってくれない?」と祖母が電話口で申し訳なさそうに言う。
明日は日曜日、次の日には仕事がある。
しかし、実家は同じ県内で、電車で2時間ほどかかるが日帰りで行ける距離だ。
どうせなんの予定もなくダラダラ過ごす予定だったし、かりんのためであれば平日であっても駆けつける。
なんなら今から行ってしまおうか。
そう思い、スマホで時間を確認すると22:40と表示されていた。
今から帰ると日を跨いでしまう。
「明日の朝帰るから、病院の準備だけしておいてね。」
私は明日朝一番で行くことにした。
「悪いけどよろしくね。お休みなさい」
と要件だけ言うと祖母はすぐに電話を切った。
明日七時には家を出ないとな。
そんなことを考えながら、私は早めに眠りについた。