第9話 ステータスカード
「それでは、カケル殿。申し訳ないが、俺は今回の依頼報告に行かなければならない。先にミラと二人でカードの手続きに行ってくれ。」
「分かりました!カケルさんは私に任せてください!!」
ここまで色々なトラブル(?)があったけれど、何とか無事に冒険者ギルドに辿り着くことができた。
ラックも報告があるとかで、別室に姿を消してしまったが、これでようやく、ステータスカードが手に入る……
というより、早く終わらせてご飯を食べに行きたい……
お腹が空きすぎて、僕は完全に落ち着きを失っていた。
「あ、そうだ……カケルさん……」
「は、はい……?」
「ビ、ビクッ……カケルさん、大丈夫ですか……?」
「えっ?……」
「顔色が真っ青ですよ!!」
どうやら、空腹のあまり顔色に出ていたようだ……。
前世でもそうだったが、僕はお腹が空くと体調面や機嫌が悪くなる癖がある。
それに、非常に燃費も悪いので、自分でも面倒だと思う。
しかし、ここまで気を使ってくれたミラやラックには、できるだけこの醜態を見せたくない。
だから、ここは我慢して平常心を保つことにした。
「す、すみません……大丈夫です。それで、どうしましたか?」
「あ……カードを作る前に、これを渡しておきたくて……」
「???……これは?」
ミラは小さな袋を僕に手渡した。
中には宝石のようなものが十数個入っている。
「これは、魔核と言います。」
「魔核?」
「はい。魔核はモンスターが倒されて消滅すると現れる結晶石で、いわゆる心臓のようなものです。」
「結晶石……心臓……」
「これを回収してギルドに提出すると、換金ができたり、討伐の証明にもなります。忘れると大変なことになりますので、カケルさんも十分注意してくださいね。」
どうやら、僕が倒した魔物の結晶石を拾っておいてくれたようだ。もしかしたら、僕が拾い忘れたと勘違いして代わりに回収してくれたのだろうか……優しい子だなと感心してしまう。
「分かりました。ありがとうございます。でも、本当に良かったのですか? 確かに倒したのは僕だけれど、護衛のお仕事をしていたミラさんが持っていた方が……」
「い、いえ……これは、討伐したカケルさんのものです! それに……私は……ただガタガタ震えていただけなので……」
ミラはその記憶を思い出したのか、顔色が真っ青になり、足元まで震えが走った。
「わ、分かりました。ありがたくいただきますので、その時の事は忘れましょう。」
「は、はい……そうですね……では、気を取り直して……カードを発行しに行きましょう!!」
彼女はすぐに気を取り直し、意志を固め直す。
そして、僕とミラは受付カウンターへと向かうと、そこには書類整理をしているツインテールの女の子がいた。
「カリーナさーん!!」
「あれ?ミラさん?おかえりなさい。」
「ただいま戻りました。」
「お疲れ様です。お仕事の進捗はいかがでしたか?」
「実は、大変な目に遭ったんです。」
「えっ?」
ミラは今回の魔物の襲撃を詳細に説明し始めた。そして、数分後。
「B級モンスター……まさかこんな町の近くまで来ているとは……」
「やっぱり、異常事態でしょうか?」
「そうですね……普段は静かな森に、ランク以上のモンスターが出現するなんて。最近、C級クラスの魔物が強くなってきているとの報告も受けていますが、B級クラスが出現したのは初めての事案ですね。」
やはり、異常事態であることに異論はないようだ。
「……とはいえ、早急に対処できる事案でもないので、今後の傾向と対策はギルマスに判断してもらうしかありませんね。」
〈ギルマス?……ああ、ギルドマスターのことか。〉
きっと、このギルドを管理しているトップ……代表のことだろう。確かに、受付嬢だけでは判断しかねる事案だ。
「ところで……そちらの方は?」
「そうでした!実は、冒険者登録をお願いしたくて……ステータスカードを発行してもらえるでしょうか?」
「この子のカードを、ということですか?」
〈この子って……完全に子供扱いされているな……〉
「カケルさんは凄いですよ!! 先ほどお話したB級クラスを1人で倒したんです!!」
「えーーーッ!! そ、そうなんですか?」
さすがのカリーナもミラの言葉に半信半疑なようだ……正直無理もない話なのだ。こんな子供が討伐したなんて誰も信じられないと思うのが普通だ……
まぁ、信じる信じないは、とりあえず置いといて、ステータスカードだけでも早く作ってもらえないだろうか?
僕はカリーナに問いかけた……
「あの……もしかして僕だとカードを作るのは難しいのでしょうか?」
僕は、カウンターに近づきカリーナを直視した。
「ドキッ!! か、可愛い……」
「え?」
「い、いえ、失礼しました!! 私は、カリーナ・ウェインと申します。ご紹介が遅くなり申し訳ありません。」
「カケル・クルマダと言います。宜しくお願いいたします。」
「こちらこそ宜しくお願いいたします。それで、カードの発行ですが……
特に年齢制限も無いので大丈夫です。ただ、カケルさんのステータスをチェックさせてください。」
「ステータスのチェック?」
「はい、能力によって皆さん強さがバラバラなので、確認を取ってからランクを決めさせていただいております。ちなみに最低ランクは【Fランク】ですね。大体の初心者は、ここからスタートになります。」
「なるほど……なら僕もFランクからでしょうか?」
「そうとも限りません……才能や能力が優れていれば、飛び級も可能です。過去にいきなりBランクになった方もいらっしゃいますし……」
「へぇ〜B級に……すごい人もいるのですね……」
「ちなみに、Fランクからは……Eランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランク、そして最上位のSSランクへと上がっていきます。」
「え? Sランクもあるのですが?」
「はい。ただ……Sランク以上はほとんど存在しません……記録だと王宮の護衛騎士とか、この大陸で上位の冒険者で数名いるらしいのですが……私も会ったことがありません……このギルドでトップクラスなのはAランク冒険者の剣姫・セフィーロさんと言う方のみになります……後はBランク以下の冒険者になりますね……でも皆さんお強いので、心強いですよ!!」
〈剣姫……名前から察するに剣術の達人かな? しかも女性……〉
「すみません……話が脱線してしまいましたね……とりあえず、準備しますので、少しお待ち下さい。」
カリーナは、そう言って、奥の部屋にステータスを調べる道具を取りに行った……
「ランク……階級……」
この時、僕は少し知りたい情報があった……
「あの……ミラさん……」
「はい? なんですか? 」
「ミラさんのランクってどのくらいですか?」
僕のトレース機能は、名前・年齢・体力・種族・状態(生命反応) などは測定できるが、ギルドが決めたランクまでは、解析ができない……なので、ミラの現在のランクや立場も凄く気になる……
「私ですか? 私はCランクですよ♪」
「Cランク!! 凄いです!!」
「へへへ…結構頑張ったんですよ♪ でも……カケルさんの方がもっと凄いですよ。」
「い、いや、そんな事……」
「いいえ……本当に凄いですよ……」
「ミラさん……」
僕を見るミラは……なんか少し複雑な顔をしている……憂いしのか寂しのか……
そもそも、どうして出会って間のない僕をこんなに推してくれるのだろう?
モンスターから助けた恩? ただの好奇心? 正直よく分からない……なんかグルグル迷走しそうだ……そんな事を考えていたその時……
「よぉ、ミラージュちゃん♪」
馴れ馴れしく、ミラに近づいてくる男がいた。
「な、何ですか? インプさん」
「知り合いですか? ミラさん……」
「え、ええ………ここの常連冒険者ですが……あまりいい評判の聞かない方でして……」
ミラは耳元でボソボソと話をしてくれたが……どうやら評価は良くない奴みたいだ……ゴツい筋肉質に厳つい顔立ち……しかも酒臭い。まるで、世紀末に出てきそうな敵キャラのようだ……正直、関わりになりたくない……っと思っているのだが…
「今度は子守のお仕事でも始めたのか?」
向こうから、ちょっかいを出してきた……
「ミラージュちゃんよ。ここは、おままごとをする場所じゃないんだがな……」
〈なんだこの男……ミラさんに隨分失礼な態度を……〉
「貴方には関係ない話です。それに子守の仕事でもありません!!」
「なんだよ〜。連れないじゃないか? こんなガキ相手じゃなくて俺達と飲み直さないか?」
〈こんなシーン……アニメやマンガの世界だけかと思っていたけど……〉
意外と間近にあったなと、違った意味で感心してしまった……しかし……
「いい加減にしてください!!」
「おいおい、そんなにツンツンするなよ。」
ガシッ……
「痛っ……や、やめてください。」
インプの右腕が、嫌がるミラの手を掴み引っ張り出そうとしていた!!!
「い、いや………」
ミラは捕まれた腕を振り払おうとした……その瞬間……
ガシッ……
「あん? なんだよガキ……」
今度は、僕がインプの手首を掴みこう言った……
「失せろ……」
「な、何……?」
「ミラさんは僕の友人です……勝手な事をしないでください……」
「おいおい、お嬢ちゃん。ミラージュちゃんはこれから俺と遊ぶんだら、嬢ちゃんも早く帰ってママのオッパイでも飲んで寝てな。」
ブヂ………………
この時、僕の中の何でがキレた…………
「この…俗物が!!」
バギ!!
「グワーーーーーッ!」
この言葉と同時に僕が掴んだインプの腕が一瞬で砕ける音がした!!
「う、腕が!! こ、このガキーーッ!!!!」
腕の骨が折れて、ミラの腕から離れた瞬間、同時に僕に殴りつけようとインプの左腕が飛び込んできた!!
だが……
「潰れろ!! このガキがーーーー!!」
「遅い……しかもパワーがまるでない……」
パシッ…
「ゴワーーーーッ!! (グチャ)」
豪快なパンチに見えたが、軽く受け止めるほど弱々しい攻撃だった……
加えて、僕が掴んだ右腕を引き上げ、インプの体ごと壁に叩きつけた。
「これに懲りて、ミラさんには近づかないでもらえますか?」
「なんだと……この女……」
ドス!!
「ぐはっ!!」
インプも反撃を試みようとしたみたいだが……動きを封じ、同時に腹に蹴りを入れた……
「それと、僕は男だ……って……あれ?」
返事がない……どうやら、完全に気絶してしまったようだ……
まぁ……とりあえず、ミラにちょっかいを出した男は成敗できたが……問題は……この後だ……
静まり返るギルド内。そして……
「お、おい……あの巨体のインプを軽く投げ飛ばしたぞ……」
「なんだよ……あの子供……」
ドヨドヨ……ザワザワ……
沈黙したかと思えば、急に騒がしくなってきた……
「周りの視線が…空気が…お、重い……なんで……カードを作りに来ただけなのに……」
先ほどのひったくりといい……トラブルが止まず、もはや訳が分からい……果たして、ステータスカードは手に入るのか?……このまま無事に終わらせて欲しいと願うばかりだった……