表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

第7話 ギルドへGO!!

〈トリーシティ正門前にて……〉


「おや、レグザさん! お帰りなさい。」


「門番さん、お勤めご苦労さまです。何かお変わりはありましたか?」


「ええ、平和そのものですよ。」


レグザ氏と門番は以前からの知り合いのようだ。

彼らは先ほどのBランクモンスターの出現について話し始めたが、やはりこれには何か異常があるのだろう。


本来であればC級やD級のモンスターしか出現しないはずの領域に、B級クラスのモンスターが現れたのだから、問題にならないはずがない。


「ふふふふ……なでなで……」


トリーシティでもしばらくこの話題が続くのだろうと考えていた矢先、微妙な声が聞こえた。


「なでなでなでなで……」


「え、あの、ミラさん……」


「はい♪ なんでしょう?」


「い、いつまで……膝枕を……」


現在進行形で、僕は彼女の膝の上に頭を乗せている。

しかも、心地よい「なでなで付き」だ。


「あ、あの……僕は大丈夫なので……そろそろ……」


「いえいえ、まだまだですよ〜♪」


〈ひーっ……か、勘弁してください……〉


一体このスキンシップは何なんだろう?

初めは警戒していたはずなのに、まるでそんなことはなかったかのように打ち解けている。

僕の不甲斐ない姿を見せてしまったのも原因かもしれない。

いつの間にか、彼女にマウントを取られている状況が悔しい。


〈このままでは不味い!!〉


どうしたら……よし、こうなったら……逆にこの状況を利用して……


「あの……」


「はい? なんですか〜?」


「も、もう許して……ミラお姉ちゃん……」


上目遣いで彼女を見上げるその仕草に、あざとさを感じつつも、両手で口元を押さえ、さらに泣きそうな顔を演出する。

この技こそ、秘技【ぶりっ子アタック】だ!!


「フフフ…これなら流石に離れてくれるはず!」


しかし、運命は思わぬ方向へ転がる……


「………………………………………………」


「あ、あれ?ミラさん?」


〈ズッキューン!!〉


「二人とも、そろそろ降りる準備をしておいて……」


ラックが手続きを完了し、僕たちを呼び寄せたその瞬間だった!


「ぶはーーーーーーっ!!(ミラ)」


「うぎゃーーーーーっ!!(カケル)」


「うおっ!ミ、ミラが大量の鼻血を!!」


一瞬、ミラの周りが時間停止したのかと思うほど脳内が真っ白になり、次の瞬間、ミラは私の可愛い仕草にメロメロになってしまった。

結果は……思考が追いつかず、オーバーヒート!つまり、受け止めきれずに大量の鼻血を噴出するという悲劇が訪れたのだ…


そして……10分後…………


仁王立ちするラックの前で、正座をさせられているミラと僕がいた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


「うわぁぁ……すごく怒ってる……」


さっきの僕の「負の波動」が、ラックから漏れ出しているのが明らかだ。間違いなく怒っている証拠だ……


「お前たち……いい加減にしてくれ……特にミラ!!!」


「ビクッ!! は、はい……」


「お前は調子に乗り過ぎだ!交流を深めるのは良いが、限度を考えろ!やり過ぎはお前の欠点だぞ!!」


「ひっく……ご、ごめんなさい……」


ミラは、もはや半泣きを超えて完全に泣き顔だ。

初めて遭遇した魔物の攻撃時よりも泣きの表情だ。

そんな姿を見て、なんだか少し可愛いなと思ってしまったが…


「カケル殿もカケル殿だ……あまりミラをいじめないでくれ!!」


「で、でも、ああ言わないと離れてくれないんじゃないかと思って……」


「ギロッ!!」


「……ごめんなさい。もうしません……」


完全にヘビに睨まれたカエルのように、謝る以外の選択肢はなかった。


ラックが怒ると本当に怖いということを痛感した僕は、その教訓を胸に刻んだ……今後は十分に注意しようと、そう…心から思ったのだった。


「まぁまぁ、ラック殿……とりあえず無事に到着できたのですから……その辺で……」


レグザ氏も気の毒に思ったのだろう、間に入って仲裁してくれた。

彼の優しい声に、少しだけ冷静さを取り戻したラックは、心なしかほっとした様子だった。

その後、馬車を降りて、依頼は無事に完了したと報告が行われ、報酬の話に進むこととなった。


「それでは、ここまでの護衛、心から感謝いたします。報酬はギルドでお受け取りください。」


「今後もご依頼があれば、いつでも声をかけてください。皆もお疲れ!!」


「おおーーーーー!」


歓喜の声が周囲を包み込む。

ラックとレグザは力強く握手を交わし、その様子を見ていたメンバーたちも喜びを分かち合った。

笑顔が広がり、彼らの努力が報われたように感じられる。


「それと、カケル殿ですが……今回は途中からの依頼ということで、ギルドではなく、私個人からの依頼としてお支払いさせていただきます。」


「本当に依頼料はいらないのに……」


「いえいえ!! そうはいきません。まぁ……ただ、本日中には間に合いませんので、明日以降でご用意い致します……ご足労になりますが、私の店舗に足をお運びください。」


レグザ氏は、親切にも僕に店舗までの地図を手渡してくれた。その後、挨拶を済ませたレグザ氏はその場を後にした。


「さて……これからどうしたものか……」


先ほども話した通り、ギルドに行くのが決定事項だ。しかし、そう決意を固めた瞬間、心の奥で小さな声と体が響いた。


〈ぐ〜〜〜っ……〉


「お、お腹すいた…………」


言葉にできなかったが、今、僕の胃は非常に切実に訴えていた。

異世界転生からここまでの間、まともな食事を口にしていなかったのだ。

喉を通っていたのはポーション(スポーツドリンク味)のものだけ。

確かに体力は回復したが、空になった胃のことを考えると、まるで虚無を感じてしまう。


「やはり……ご飯だよね……」


その結論に至るまでに、そう時間はかからなかった。

異世界での冒険には、食事が不可欠だ。

何より、空腹では思うように動けない。

心の底からそう感じた僕は、一念発起して言った。


「よし行こう!! 皆さんお世話になりました!! それでは僕はこれで………」


ガシッ!!


「……って、あれ?ラックさん?ミラさん?」


「カケルさん……どこに行かれるのですか?」


「そうだぞ、カケル殿……これからがメインなのだからな!!」


突然、目の前に広がったのは、意外な二人の姿。ラックとミラが左右から挟みこんで、僕の両腕をガッチリと掴んでいた。これは、自由を奪われているに等しい。まるで、工作員に取り押さえられた宇宙人のようだ。


「ちょ、ちょっと……何の冗談ですか!!」


あまりの出来事に、思わず声を大にしてしまった。

彼らの目に宿る期待の光を目の当たりにし、少しずつ恐れが芽生えてくる。もはや、何を言ってくるのか段々と予想ができてきた……


「何って……もちろんギルドに行くのですよ♪」


や、やはり……しかしコチラもご飯は食べたい!! とにかく訴えを主張しないと……


「いや、僕は、ご飯を……」


「まぁまぁ、そんなに手間は取らない!! 食事はその後で良いだろ?」


あっさり却下されてしまった……


「あ、あの……ちょっと……」


「それでは、ギルドへGOです!!」


「えーーーッ!!」


こうして僕は、半強制的にギルドに連れて行かれる事になったのである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ