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第5話 お勉強タイムにするのです!!

ついに、魔物との戦闘に遭遇してしまった僕。なんとか無事に討伐を完了したが、冒険者のラックとミラたちからの質問攻めには参った。最終的には、彼らが色々と察してくれた……

いや、規格外の戦闘能力には見て見ぬふりをしてくれたのだろう。魔法を無演唱むえんしょうで発動させたり、この世界には存在しないスーパーカブでジャックナイフ攻撃をしたりと……


知らなかったとはいえ、かなり派手にやらかしてしまった。


そのせいで、いつかボロが出るのではないかと不安になり、これ以上は語らないことにした。


そして今、商業を営んでいるレグザ氏の護衛として馬車に乗り込み、トリーシティに向かっている最中だ。


「ところで、カケルさんは、この大陸に来てどのくらいになるのですか?」


先ほどまで、オドオドしていたミラが唐突に質問してきた。パーティーメンバーと話をしていく内に警戒心を解いてくれたのだろうか? それなら嬉しい限りだ……が……


「えっ、と……まだ数日ですね…」


もちろん、これは嘘だ。数時間前に異世界から転生したなんて言えるわけがなく、ここは生前読んでいたライトノベルの知識を頼るしかなかった……。


「そうなんですね……なら、ここら辺の国のこともあまり詳しくないのでは?」


「そうですね……確かにこの国については、あまり詳しくはないです。まあ、これから旅をしながら学んでいこうかなと思っていますが…」


よし!! 上手く誤魔化した。しかし、ミラがニヤニヤしながら、ある提案を出してきた。


「フフフ!! ならば、私がここら辺の国……いえ、大陸をレクチャーしようではありませんか!!」


「はい?」


「トリーシティまでもうすぐですが、魔物の気配もありません。ならば、この時間を使って、大陸のお勉強タイムにするのです!!」


「なるほどな……この大陸に来て日が浅いカケル殿には必要かもしれないな…」


確かに、僕はこの大陸、いや、この世界のことには限りなく無知だ。都市名や村の名前くらいしか地図でしか知らず、産業や政治経済、物流や宗教的なシステムを今のうちに学んでおくのは必須かもしれない。


「そうですね。それなら、ぜひともお願いします。ミラ先生!!」


「そ、そんな!! ミラ先生なんて……大げさですよ!!」


先生と呼ばれたことが嬉しかったのか、彼女の顔は真っ赤になり、モジモジしていたが……やがて、ノリノリで説明を始めた。



「それでは、まず【ユーノリス大陸】についてお話ししましょう。」


**ユーノリス大陸**。


2000年以上にわたって人類が繁栄を築いてきた大大陸ですが、500年前に勃発した「五国大戦」と呼ばれる戦争…惨劇がありました。この戦争では多くの命が失われた他、作物不足や風土病による苦しみにさいなまれ、大陸全土が壊滅の危機に瀕しました。


しかし、その暗雲を打破するかのように、突如として現れた勇者たちとその眷属たちが大陸を巡り、和平条約を結ぶことに成功したのです。彼らは疫病対策を施し、作物の不作にも立ち向かい、絶滅の危機を回避しました。


後に、各国の王たちがその勇者パーティーの一員となったと言われています。つまり、現在の国王たちは、あの勇者たちの子孫にあたるのです。彼らが国を治めるようになってから、各国はそれぞれ独自の文化を築き始めました。


「これが、新生ユーノリス大陸の誕生の物語です。」


「なるほど……散らばった勇者たちが各国で手腕を振るったのですね……」



「そのとおりです!!、では、次は……勇者達が治めた五つの国の説明をお話ししていきましょう。まずは……」


■ 魔法大国 ハーミットレイン


魔法の技術が集大成されたこの国は、ユーノリス大陸の一角を占めています。

5つの国の中でも特に魔法に特化しこの都市は、常に新しい魔法の研究が行われています。ここでは、魔法技術があらゆる面で応用され、人々の生活を豊かにしていますね。魔道具の店が立ち並び、学生や研究者たちが日々新たな発見を求めて頑張っている姿が私は大好きです。ちなみに、私はここの魔法学園の出身でもあります。

ここの王様は、かつて勇者パーティーの1人【魔道士ブルー・ハート】様の子孫、【国王ビース・ハート】様になります。



■ 亜人国 グランドクロス


元々は、奴隷で生計を立てていた国ですが、勇者パーティーだった【獣人族グロス】様が奴隷制度を廃止し、奴隷だった獣人やエルフ・亜人・ドラゴニュートなど……人間種以外の者が住みやすい国になりました。しかし、ここ数年……奴隷制度は廃止なのに、裏では奴隷売買を行っている輩…つまりブローカーもいるみたいです。他国にも流通しているとの噂も……現国王【獣人クラッカー】様が治安政策を頑張っているみたいですが……なかなか難しいようですね……




■ 武力国家 アサルトリア


魔法や高度な産業技術が存在しない代わりに、卓越した戦闘技術に特化した国家、それがアサルトリアです。かつては特に目立たない小国に過ぎませんでしたが、勇者パーティーの一員である【武道家バルバトス】様の功績により、その戦闘技術が広まり、いつの間にか“武力国家”として知られるようになリました。今では、最強の脳筋……ではなく、戦闘民族として名を馳せています。特に、【バルバトス格闘術】は国民に愛され、広く普及しているようです。現在、この国を治めているのは、【武王ジェドリック】様です。



■ 魔道技術国 アールモーター


アールモーターは、魔道具や最先端技術を日々開発し続ける国です。元々はドワーフたちの国で、簡単な武器や防具しか作れない状態でしたが、【発明家ソン・エンジー】様が技術を提供し、彼らの可能性を広げました。その後、魔法大国ハーミットレインとも技術協力を行い、様々な魔道具が誕生することとなります。魔法使いでなくても魔法を発動できる技術は、生活魔道具から戦闘用魔道具まで、多岐にわたっていいます。現国王の【ラン・エンジー】様も自身で革新的な道具の発明や開発に取り組んでいると言われています。ちなみに……ラックさんと私の装備もアールモーター製です!!



■ 王都ジャイロス


この国は、かつて「五国大戦」で、最も多くの被害を被った国として知られています。しかし、今の王都ジャイロスは、かつての惨劇の傷跡を克服し、新たな希望の象徴へと生まれ変わりました。


その立役者は、かの名高い【勇者セレナ】様です。彼女は天啓スキルを駆使し、荒廃した都市を再生し、政治と経済の立て直しに尽力しました。落ち込んだ国民の心をひとつにし、貧困層の支援から、戦争で親を失った子供たちへの慈悲深い手を差し伸べるなど、至る所で彼女の尽力が実を結びました。


セレナ様のその姿は多くの人々に希望を与え、やがて彼女は「聖女」として語り継がれる存在となったのです。王都に名を馳せるまでに、彼女が注いだ努力は計り知れず、今やジャイロスは五大国の中でも群を抜いた経済大国として君臨しています。人々の生活は豊かさを増し、かつての悲劇は希望に変わったのです。


現代のこの地を治めているのは、聡明で慈愛に満ちた【女王セシリー】様。彼女の指導のもと、王都ジャイロスは安定した繁栄を享受しています。私たちが今立ち尽くしているこの場所も、かつての傷を思い起こさせることなく、未来へと希望を繋ぐ領地なのです。


「以上が、ユーノリスと五国の誕生秘話になります。続いては……」


「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……」


「あれ?カケルさん……?」


「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……」


「あ、あの……なんかゴゴゴって……怖い波動が……」


「……るせん……」


「えっ?」


「許せん!! 奴隷売買だと!! ふざけてるのか!!」


「ひっ!! カケルさん……」


「エルフや獣人はライトノベルでは必須キャラで希少なんだぞ!! それを奴隷として売買するなんて!!」


「はわわ……カケルさんがキレてます……(でもライトノベルって何?)」


そう…ミラの言う通り、言葉遣いが変わるくらい完全にブチギレモードである。前世でも奴隷の歴史はあったけど、現在進行系で存在しているは、許し難い!!


「く、駆逐してやる……」


「カケルさん、お、落ち着いてください……」


「落ち着いていられますか!! 駆逐してミンチにしてやる……」


「ひーっ……」


ミラは腰が抜けて床にへばってしまった……しかし……


「カケル殿、落ち着け。その件については、もしかしたら……君が心配するほどでは無いかもしれないぞ……」


「それは、どういう意味ですか?」


見兼ねたラックが、カケルを宥めるために横から口を出してきた。


「実はな……最近ブローカーが摘発されたんだ。」


「え?、摘発!? いつですか?」


「つい最近だな……なんでも、奴隷売買を斡旋しているリクルーターが捕まってな…そこからの情報で、組織が一斉摘発されたとか……ギルドの掲示板に出てたから確かな情報だな。」


「そ、そうか…それなら良かった……」


「ほ、本当に良かったです〜」


「ミラさん!! ごめんなさい……つい我を忘れてしまって……」


カケルの激情にミラも半泣き状態だったが、そこはちゃんと謝罪した……とは言え、おそらく……摘発されたのは氷山の一角に過ぎないだろう……そう考えると完全には安堵もできない……今後の国の動きに期待したいところだ……その時である!!


「ピロロ〜ン♪」


「なっ何んだ?!」


頭の中でメロディーが流れた!!それと同時にステータスのパネルも浮かび上がってきた。


ステータスが更新しました。


カケル・クルマダ(14)


職業: パラディン Lv.2


生命力: 300


魔法力: 220


攻撃力: 140


防御力: 125


機動力: 100


■属性: 火・水・風・土・光


■攻撃系魔法:


ファイヤーランス(火)


ウォーターショット(水)


ウインドブーム(風)


ガードウォール(土)


スパイラルボルト(光)



■回復系魔法:


ハイヒール(完全回復)


クリアポイズン(毒消し)


ラテラル(麻痺除去)


■スキル:


トレース(読み込み)Lv.1


マップ(地図)Lv.1


フィールド(結界)


ゲート


身体強化 Lv.1


視力強化 Lv.1


聴力強化 Lv.1



■EXスキル:フルドライバー


■称号:女神の祝福・神々の加護


■アイテムガレージ:


短剣・ナイフ・バスターソード・アックス・レイピア・ポーション×7・賢者のローブ・布・タオル


■所持金:


金100枚・銀300枚・銅500枚



「おおお!! ついにレベルアップだ!! でも、なんで急に? そうか!! ユーノリス大陸のレクチャーを受けたからだ……それに、先ほどの戦闘で得た経験値も影響してるんだ!! でも、フルドライバーは未だレベルアップせず……残念だ……」


ミラの講義中で申し訳ない気持ちを抱きつつも、レベルアップの結果を確認することはどうしても外せなかった。特に、視力強化はレーサーにとって命とも言える重要なスキルだ。ワクワクしながら、パネルにタッチした。


---


■ 視力強化(Lv.1)

・100メートル圏内のズームが可能

・1メートル圏内で無機質の透視が可能(生物・有機物の透視は不可)


---


「なるほど……とりあえず、試してみよう……」


スキル「視力強化」を発動させ、馬車の外を見渡してみた。


「お!お!お!これは凄い!! あんなに遠くにいる小鳥やリスがハッキリ見える!!」


視力強化の効果は想像以上だった。100メートル離れた場所でもクリアに見えるのは、思わず顔がほころぶほどだった。


「これは、使える!! 戦闘時の視野が広がれば、対応力も格段に向上する。」


期待に胸を膨らませながら、スキルの有効性を確認し続けていたその時、


「……ケルさん……」


「あと、1メートル圏内の透視を試すだけだけど……」


「カケルさん!!」


「え?あ、はい?」


ミラがカケルの気を引こうと声をかけてきた。彼は外の風景に見とれて、彼女の注意を引いていなかった。


「なんで、外を見てるんですか?ちゃんと話を聞いてください!!」


「ご、ごめんなさい……ちょっと馬車に酔ってしまったみたいで……外の空気を吸おうかと……」


「え?大丈夫ですか?少し横になった方がいいんじゃ……?」


「大丈夫……そこまで酷くはないので……」


カケルはそう言いながら、ミラの方に振り返った。その瞬間、彼の視界が変わった。


挿絵(By みてみん)


「え?……」


「???……カケルさん?」


「ブーーーーー!!」


「キャーーーー!!」


「ど、どうした!! ミラ!!」


ミラの悲鳴が響き、ラックが驚いた様子で何が起きたのか尋ねてきた。


「カケルさんが……すごい大量の鼻血を……」


「お、おい、カケル殿……大丈夫か?」


「〈あわわわ……なんで……なんで……下着姿に……〉」


振り向いた瞬間、ミラがまさかのランジェリー姿で目の前にいたことに驚き、急激な血圧の上昇で鼻血が溢れ出てしまったのだ。

正直訳が分からない状態なのだが……後からその正体に気付いた……視力強化の影響で、無機質の透視をしていた事に……


「だ、大丈夫です……頭に血が登ってテンションが上がりすぎた影響かも……」


「確かに、奴隷とかでも興奮していたからな…」


「本当に大丈夫ですか? 少し休んだ方が……」


「本当に大丈夫なので……あ、あれ? な、なんかクラクラする?」


ドサッ……


「カ、カケルさん!!」


どうしたのだろうか? 頭がぐるぐる回転しているような……そして、段々と周りの声が薄れてゆくような……そして、体も上手く動かせない状態になす術も無かった……

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