第40話 魔導具試験場【アーティクスフィールド】
コツ、コツ、コツ――
足音だけがやけに響く。
「……あの」
「な〜に? カケルちゃん」
「一体、どこへ行くんですか?」
振り返りもせず、ミュー先輩は楽しそうに答える。
「もうすぐだから。大丈夫、大丈夫♪」
――大丈夫じゃない気がする。
魔道具工房は、どう見ても小さな店だ。 それなのに、十分以上も歩かされる長い廊下。
(……おかしくないか? 空間、絶対おかしいよね?)
そんな疑問が確信に変わった頃。
「はい、到着」
ギギギ……と重たい音を立て、巨大な扉が開かれる。
「……え」
思わず、声が漏れた。
そこに広がっていたのは――
真っ白な、空間だった。
広さは……少なく見積もっても、サッカーグラウンド二つ分。
「ようこそ。私専用の魔導試験場――《アーティクスフィールド》へ」
「……魔導試験場?」
「うん。疑似空間だよ」
さらっと言うけど、全然さらっと流せない。
「ミ、ミュー先輩……これ……」
「先輩が作った特殊魔導具ですね」
ミラージュが胸を張る。
「特殊魔導具?」
「魔力供給動力炉――《マテリアルドライブ》」
……もう名前からしてヤバそうだ。
「マテリアルドライブ……?」
正直……どういう原理でこんな空間ができているか……とても興味がある。
「説明より、体験した方が早いね」
ミュー先輩はそう言って、僕を見る。
「カケルちゃん。剣とブーツ、装備してみて」
「は、はい!」
言われるがまま、バーストソードとブーストブーツを装着するが……この空間の構造を知りたいのになぜ魔導具を?
……と、言いつつも新装備を使うワクワク感がたまらない。
(……初めてだ。自前以外の異世界装備……)
期待と不安が半々。
「じゃあ、赤い魔核をセットして……」
カチッ。
「炎をイメージしてみて」
「えっと……炎……」
――しかし。
シーン……
何も起こらない。
「……あれ?発動しない……」
「……あー」
ミュー先輩が、納得したように頷いた。
「それ、正常反応だよ」
「正常!?」
「正常?欠陥品じゃないですか!!」
ミラージュが即ツッコミ。
「違う違う。この剣はね――魔力を持たない人のための武器なの」
「……え?」
「この大陸の人間は、約三割は魔力を持たない」
その言葉に、息をのむ。
「私もその一人……」
ミュー先輩は、僕から剣を取り上げ、軽く構える。
次の瞬間――
ボワァァァ!!
炎の柱が噴き上がった。
「うわっ!!」
「剣の動力炉が、“魔核以外の魔力を検知すると止まる”設計なの」
「じゃあ……僕が使えなかったのは……」
「カケルちゃんには魔力が、あるってことだね……」
――なるほど。
つまり……僕の魔力が邪魔をして発動できなかった……っと言うことか……
でも……それだと 僕はこの剣を使えないことになる……
「今度は魔核を外すして……」
ミュー先輩はそう言って、剣を差し出した。
「今度こそ、炎をイメージして」
「ちょっと待ってください……」
「ん?何?」
「この話の流れだと、僕はこの剣を使えないことにになりませんか?」
「そ、そうですよ!!ミュー先輩!!これじゃ、カケルさんのモニターが……」
「大丈夫。多分」
(多分!?)
「今度は、魔核を外したスペースを……」
ガチャ……カチッ……
「はい、カケルちゃん」
今度は、魔核を外した剣を僕に渡した。
でも……これだと最初の状態に戻るだけでは?
「まぁ、とりあえず試してみて。」
覚悟を決め、僕は剣を握る。
う〜ん――炎。
次の瞬間。
ゴオオオオッ!!
剣身が真紅に染まり、
先ほどとは比べものにならない炎が噴き上がった。
「きゃあっ!!」
「うわっ!?」
圧倒的な熱量。
視界が揺らぐ。
「……嘘でしょ」
尻もちをついたミュー先輩が、呆然と呟く。
これは……もはや剣じゃない……その炎、全部が凶器そのものだ……
「このチカラ……僕の?」
「そう。カケルちゃん自身の魔力」
――【ファイヤーランス】なんて比じゃない。
(……すごい)
怖い。
でも、それ以上に。
(楽しい……)
この異世界は――
僕の想像を、軽々と超えてくる。
胸の奥が、熱く高鳴った。




