表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/39

第30話 新たなる冒険者たち

「パ、パーティーを組むって……カケルさん……?」


僕は、真正面からミラージュを見つめて言い放った。


――そう、彼女を仲間に誘ったのだ。


それは、冒険者セナが果たせなかった願い。

彼女の心の傷……パニック障害を癒すための、たった一つの方法。

それが、“共に冒険する”ということだ!!


セナの手紙には、その未来を信じられるほどの――凄みがあった。

だから、僕は決めた。

セナの想いに、賭けてみようと。


……まぁ……正直に言えば、他に方法なんて思いつかない。

そう、今の僕にできる唯一の賭けだった。


だった……のだが………


「カケルさん……そのお誘いは嬉しいのですが……」


「カケル殿、それは……無理だ。」


「え? なんで!? もしかして……信用、ないとか……?」


僕は思わず身を乗り出した。

ミラージュは困ったように微笑み、ラックがため息をつく。


「実はな、パーティーを正式に組むのには条件があるんだ……」


「条件……?」


ラックの説明によると――


パーティーをギルドに登録するには、五人以上のメンバーが必要で、

そのうちAランクとBランクの冒険者を最低一人ずつ含まなければならない。


「しかも……カケル殿、まだギルド登録すらできていないしな……。」


「うっ……!そ、そんなルールが……」


確かに……初めて会った時も……ラックは冒険者を集めて護衛していた。

ミラージュとラックしかいない……ソロに近い冒険者はパーティーを作れないのだ。


まさかの大誤算だった。

せっかく格好よく誘ったのに……これじゃ、ただの勘違い男じゃないか!

顔から火が出そうだ……穴があったら入りたい……。


だが――そんな僕の落ち込みを吹き飛ばすように……


「カケルさん……」


ミラージュが、ぎゅっと拳を握りしめて言った。


「私……一緒に冒険してみたいです!!」


「え……?」


思考が一瞬止まった。

まさか……今、彼女から誘われた!?


「確かに、パーティー登録は無理かもしれません。けど……!」


「ミラさん……それって……」


「で、でも、勘違いしないでくださいねっ!!」


「へ?」


「私は、あの“魔物瞬殺”の能力を見込んだだけです!!

……それに、パーティーを作るって案も悪くないと思います。

仲間は――追々、集めましょう!」


顔を真っ赤にして早口でまくし立てるミラージュ。

最後の方はもう涙目で……

……って、これ、ツンデレじゃないか!?


「は、ははは……ミラージュさん……」


そんな彼女の姿に、僕は――思わず笑ってしまった。

そして……


「分かりました。僕を……あなたの仲間にしてください!」


僕は右手を差し出した。


「カケルさん!! はいっ、喜んで!! よろしくお願いします!!」


パシッ!


ミラージュの小さな手が、僕の手をしっかり握り返す。

それは、まるでスポ根漫画の名シーンみたいに眩しかった。


……が、そこに水を差す男が一人。


「だが、カケル殿。悪いが一つだけ言わせてくれ。」


「え、なんですか……?」


「まずは――冒険者登録を済ませてくれないか?」


「……あっ!!」


そうだ、インプ騒動のせいで、登録が途中で止まってたんだった……!


「ま、まぁ、詳しいことは明日ギルドで確認すればいいですよね!」


「だな。とりあえず今日は――腹が減った。」


「そうですね……さすがに、お腹が――」


その瞬間。


バターーーン!!!


「キャーーーッ!! カケルさん!!」


ぐ~~~~……


……あ、やばい……完全に忘れてた。

そう……転生してから何も食べてなかった。


その夜……

静かな宿に、僕の腹の虫の鳴き声が響き渡るのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ