第18話 アンの思い……
「おはよう、セナ先生!!」
「おはようございます。ミック君。」
「お早いですね、セナ先生。」
「メイドのユーリさん、お仕事お疲れ様です。」
セフィーちゃんのスキル騒動から一夜明け……皆さんのセナさんに対する認識が大きく変わっていました。
「やっぱり……セフィーちゃんのあれが原因よね……えーっと……ソニ……なんだっけ?」
「ソニックスライドです、ミラージュお嬢様。」
「そう!!それ!!」
あの後……セフィーちゃんの技を見て、他の子供達も興味を示し、我も我もとスキルの確認を申し出てきたのです。
「確かに皆さんスキルの確認には来ましたね……」
その確認も子供達に限らず……メイド達や屋敷に所属している兵士達にも噂が広まり……今では屋敷全体が冒険者セナで持ちきりになっていました。
しかも……
「みんな……いつの間にか【先生】って言ってるし……」
「まぁ……実際、確認した後にレクチャーしてくれますから……あながち、間違いでは、ありませんね。」
アンは、冷静に分析しながら説明をしていましたが……
「それに……私も、剣術のスキルを教えていただいたので……ただ……他のメイド達からも人気があるのは如何なものかと……(イライラ)」
「へぇ?」
「い、いえ!!なんでもありません!!」
アンが冷静に、けれど少し頬を膨らませながら言いいました。
そんな、アンを見ていると……
「アンも大分変わったわね……なんか楽しそう……」
「そ、そんな事は……でも……セナさんは、周りを楽しくさせる素質……いえ……優しくしてくれる方なのかなって……」
(カーーーーッ)
アンは、赤い顔が更に真っ赤になっていくのが分かりました。この時のアンは……彼の事が好きなんだなって確信しました……そんな彼女に私は……
「ねぇ……アン……セナさんに告白してみたら?」
「!!!!!!」
私は、そんなアンに思いを告げるように提案してみました。
「な、な、な、何を言っているのですか!!お嬢様!!」
流石のアンも、動揺しまくりでした……
「アン……あなたは、私が生まれてから ずっと面倒をみてくれたでしょ?私にとってアンは姉のような……存在だから……アンには幸せになって、欲しいの……」
今までの私なら絶対に言わない恥ずかしいセリフ……でも…つい……口に出してしまいました。やはり、セナさんの影響なのでしょうか……そんなセリフを聞いたアンも……自分の口を両手で押さえて……
「お嬢様……私の事を……そのように思って頂いているなんて……うっ、うっ……」
感動のあまり……溢れんばかりの涙を出して喜んでくれました。
ですが……
「お嬢様……ありがとうございます……確かに私は、セナさんの事が……す、好きです……でも今は言えません。」
「えっ!?な、何で!!」
素直になったアンですが……予想外の返答に聞き返してしまいました!!
「セナさんは……今は、お嬢様方を狙う野盗から守らなければなりません。」
〈た、確かに……〉
最近、楽しい日々が続いていて、忘れかけていましたが……私は……リニア家は狙われていた事を思い出しました。
「お嬢様のお気持ちは大変嬉しいのですが……今はこの事件を解決しないと……」
「そう……だったわね……ごめんなさい……」
〈ギュ!!〉
「えっ?」
「いいえ、でも、もし野盗の件が解決したら、その時は……」
アンは……素直にそう言って、私を抱きしめてくれました。
「アン……うん…頑張ってね……」
私も、アンを応援しました……でも……
〈なんだろ……また……何か……モヤモヤする……〉
嬉しい気持ちとは裏腹に……以前にも感じたモヤモヤ感……胸の中でとても不可解な違和感が拭えなかったのです……しかし……この気持ちが後に後悔と絶望の始まりになるとは……この時の私は……まだ知る由もありませんでした。