第17話 爆誕!!スーパー剣士 セフィーちゃん!!
夕食を終えた後の、ほんのひとときの休憩時間――。
食堂の隅、私ミラージュは……何故か……ぽかんとした顔をしていました。
「……なんで、こうなってるのかしら……?」
なでなでなでなでなでなで……
私の頭を必要以上になでる大きな手。
まるで子猫と遊ぶような、その手の主は――この館に最近雇われた、とある冒険者……
そう……冒険者セナさん……
「ミラージュお嬢様、ほんと頑張りましたね……」
「そ、そう……ですか? えっと……ありがとう……ございます?」
お礼を言ったものの……なでられてる意味がわからない。けれど……なんとなく、ちょっとだけ、くすぐったくて意気込みがいい……それでいて……凄く恥ずかしい……
プシューーーッ……
〈はーーっ……顔が爆発するよーーー〉
――だが、どうしてこんな状況になったのか?
それは――昼下がりの、あの“出来事”から始まるのでした。
私達は、いつも通りセナさんは魔法で子供達と一緒に遊んでいました……
すると一人の女の子が……
「マホウ……教えて……」
「え?……ま、魔法ですか……?」
その中に、ひときわ小さな5歳の女の子……名はセフィーちゃん。青い髪に白いワンピースが似合う可愛い女の子です。
そして、彼女の大きな瞳は、不安と期待にあふれていました。
そんな、セフィーちゃんがセナさんの水魔法・火魔法を見て魔法を使いたくなったのでしょうか?
セナさんに言い寄ってきました。しかし……セナさんは……
「う〜ん……どうでしょうか……」
「ダメなの?……」
「えっと……ダメと言うか……」
「ヒッ……ヒック……」
セフィーちゃんは、セナさんの曖昧な態度に、段々泣きそうになってきました……
「あーッ!!お兄ちゃん、セフィーちゃん泣かせたー!!」
「ご、誤解です!!泣かせてませんよ!!あ、あ…わ…分かりました。少し調べてみるくらいなら…」
セナさんが泣かしたと子供達からイジられ……そして……
〈調べる?〉
「あの、セナさん……魔法が使えると何か、良くない事でもあるのですか?」
私は、躊躇する彼が不思議でつい質問をしてしまいました……
「えっと……魔法を使うのは問題ないのですが……」
「ですが?」
「調べる方に問題があって……」
彼は苦い顔をしながら渋々説明してくれました……
「魔法のスキルを確認するのに……【トレース】と呼ばれる私の能力を使うのですが……これは、魔法の適性だけを調べるのではなく、過去のログや個人情報も開示してしまうのです……」
「ログ?……個人情報?…」
「つ…つまり……その人の生まれた時から今までの歴史・身体・能力・ステータスをオープンに……丸裸にしてしまうというか……」
「ま、丸裸!!」
流石に丸裸を言われると、内心ドキドキに……そして……
「なるほど……」
シャキーーン
「ヒッ………ア、アン!!」
突然 アンが包丁片手にセナさんの首元に付け……驚いたセナさんは一歩後ずさりました。
「あの〜……アンさん……その包丁は……?」
セナさんは、恐る恐る尋ねました……
「この間、セナさんに教えて頂きました、短剣での護身術を試してみようかと……」
「そ、それを何故僕に……?」
「いえ、何か……如何わしい波動を感じまして……つい……」
「はわわ……アン、ストップ!!ストップ!!」
〈多分その……如何わしい波動は……恐らく私かも……〉
そう思いながら、私はアンに先ほどまでの経緯を説明しました……
「なるほど……事情は理解いたしました……」
「はい……なので、セフィーちゃんに確認を取りたくて……」
「つまり、ロリコンさんっと言うことですね……」
「違うから!!」
流石のセナさんもここは全力で否定……それから、セフィーちゃんに許可を取ることに……
「では、セフィーちゃん……ステータスを確認していいですか?」
すると……セフィーちゃん……
「い、痛くしないでね……」
「「言い方!!」」(セナ・ミラージュ・アン)
この時の三人は始めて意見がシンクロした瞬間でした……
しかし……彼女に自覚はないのですが……このセリフは反則です。
「で、では…ご本人から許可も出た(?)ので…………」
セナさんは、彼女のほっぺに手を当てました。すると……
「あ…あん……」
「そう言う反応もやめて……」
触られた瞬間……少し驚いたのか、それとも擽ったいからか……変な声が出てました……でもセナさんは、気を取り直して再び彼の両手に集中!!
「ステータス……」
しばらく、セナさんとセフィーちゃんは動かず、その数分後……
「そうか……そうだったのか……」
〈???……どうしたんだろ?〉
何か……読み取ったのか、その顔つきは嬉しいような……淋しいような複雑な顔をしていました……
「セナさん……?」
「す、すみません……セフィーちゃんのステータスが分かりました。ですが……」
「え?」
「残念ですが……彼女には魔法スキルはありません……だけど……」
「そ、そんな……」
そんなセナさんと、私のやり取りを聞いていた、セフィーちゃんが……
「うわーーん!!」
急に泣き出してしまいました……
「セフィーちゃん落ち着いて……確かに魔法スキルはありませんでしたが、魔法以上の凄い能力があるのですよ!!」
「ヒック……の、のうりょく?」
「はい!!なので、試しに使ってみませんか?」
そう言って、セフィーちゃんをなだめました……
「グズン……うん……」
それから1時間後……
「ヤーーーッ!」
スパーーーン!!ゴトッ!!
「やったーーっ!!」
驚くべき光景でした……
それは……セナさんが用意した全長2メートルもある大岩が……真っ二つに……しかも切れた断面が綺麗に切れているではありませんか!!
これを見た子供達やメイド達は言葉を失いました。当然、私も、この状況は驚くばかりです……
「どう?どう?上手くできた?」
「バッチリです!!よく頑張りました!!」
なでなで……
「でへへ……」
セフィーちゃんは頭を撫でてもらい……先ほどまで泣いていたのが嘘のように笑顔で喜んでいました……
「セナさん。一体これは……」
「小さい女の子が……大人よりも大きい岩を両断するなんて……一体どんなトリックが……」
「セナさん……セフィーちゃんに何を教えたのですか?」
私もアンも……そう質問をすると……セナさんはある武器を見せてくれました。
「セフィーちゃん、貸してもらえますか?」
「はーい!どうぞ!!」
「これは……木刀……?」
「はい。この木刀は、警備兵が練習用に使っているのを借りてきました……セフィーちゃん もう一度お願いできますか?」
「はーい♪」
「よし! 新たな岩を召喚!!」
ギュイーーン
今度は、更に大きい岩が魔法陣から出現しました。それと同時にセフィーちゃんの表情と構えに変化が……
「スーーーッ」(呼吸)
シャキーン!!スパーーーン!!
ズドーーン……
「ポカーン……」
「やったよ!!お兄ちゃん!!」
「凄いです!!セフィーちゃん!!」
なでなで…………
「エッヘン!!」
セフィーちゃんは太陽のような笑顔をセナさんに向けられていました……しかし……それより……
「なんですか!! 木刀で岩を切るなんて……」
アンは……驚愕していました……が……
「ソニックスライド……」
「はい?」
「あの子が出した技です。この子のスキルは……剣に特化したものでした……」
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■ ソニックスライド (レベル1)
ソニックスライドは、真空の刃を発生させる技。この技を使うことで、物理的な武器を持たなくとも、目に見えない攻撃を繰り出す。
剣士〈レベル1〉の初級スキルとして習得可能。木刀やこん棒・実剣などの道具を用いることで出力アップし、加えて即座に発動が可能。
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セナさんは、1時間ほど…セフィーちゃんの特技をレクチャーして使いやすくしたそうです……
「す、凄い……」
こんな短時間で、普通の女の子をここまで強くできるなんて……そんな事を思っていると……セフィーちゃんはセナさんに近づき……
「ありがとう……チュウ……」
「えーーー!セフィーちゃん何をしてるのですか!?」
それを見た私は……動揺しながら質問してしまいました……
「お礼のチュ……」
「お、お礼のチュ?」
「パパとママが、ありがとうする時にチュウするの……だから……」
〈セフィーちゃんのご両親……大胆ね……〉
などと関心してしまいましたが……セナさんにキ、キスは……私でも真似できない……何か……負けた気がしました……
一方……セナさんは……
「ポーーーーッ」
〈セナさんが……ポーッとしてる!!〉
シャキーン
「やはり、ロリコンさんでしたか……」
「アンさん……ち、違いますよ!!少し昔の事を思い出しただけです……だから、包丁はやめて!!」
「昔の事?」
「はい、僕より年上のお姉さんが……よくキスしてきて……でも、僕が子供の頃の話ですよ!!」
セナさんの子供の頃……ちょっと興味もあるかも……昔のセナさんはどんな子供だったのだろう……過去を知らない彼の歴史は……想像しながら楽しんでいる私がいました……